第五章:狙われた貴公子!? 宮廷スキャンダルに巻き込まれた件
──俺の人生は、スキャンダルまみれだ。
冷泉帝の誕生によって、俺の心の中には言葉にできない複雑な感情が渦巻いていた。だが、それを表に出すことはできない。俺はただ「兄」として、慎ましく彼を見守るだけだった。
しかし、そんな俺に新たなトラブルが襲いかかる。
「光る君、最近妙な噂が広まっているようです」
そう言ってきたのは、俺の腹心である**左馬頭**だった。
「噂?」
「ええ……あなたが、六条御息所様を冷たくあしらった、という話です」
(……また俺かよ)
◇◆◇
六条御息所──彼女は高貴な生まれの才女であり、俺と親しい間柄だった。
美しく、教養もあり、品格もある。宮廷の誰もが羨む女性だったが……唯一の問題は、嫉妬深すぎることだった。
「俺は冷たくなんてしてないぞ?」
「ですが、彼女の心中はそうではなかったようで……。特に、あなたが夕顔の元に通っていたことを知り、心を痛めていたと」
(え、ちょっと待て。それってもしかして……)
「まさか……夕顔の死に、六条御息所が関わっているってことか?」
「その可能性は否定できません」
(うわぁ……やっちまったかもしれない)
確かに、六条御息所は俺に特別な感情を抱いていた。けれど、俺は彼女に対してそこまで深く踏み込む気はなかったんだ……。
だが、彼女にとってそれは許せなかったのかもしれない。
◇◆◇
数日後、さらなる事件が起きた。
「光る君、大変です! 葵の上様が……」
俺の正妻である葵の上が、突然原因不明の体調不良に陥ったのだ。
「まさか、六条御息所が……?」
そう思った瞬間、背筋に冷たいものが走る。
まさか、また……。夕顔のときと同じことが起きるのか?
◇◆◇
「……光る君、どうかお気をつけください」
左馬頭の忠告が、やけに重く響いた。
俺はただの貴公子ではなく、宮廷の権力争いに巻き込まれた一人の男なのだ。
そして、俺の一挙手一投足が、誰かの愛憎を生み、運命を狂わせる。
(……どうすればいいんだ?)
答えの見えない闇の中、俺はそっと息を吐いた。