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第四十八章:残されたもの

紫の上が息を引き取った日、京の空はどこまでも晴れ渡っていた。


まるで何事もなかったかのように、風は優しく庭の草木を揺らしていた。


それが、かえって俺の心を締めつける。


◇◆◇


「光の君……」


葬儀の準備を進める女房たちは、俺に声をかけることすらためらっていた。


俺はただ、紫の上の亡骸のそばに座り続けていた。


「……紫の上、お前は、本当にいなくなったのか」


問いかけても、返事はない。


◇◆◇


彼女の寝所には、今も彼女の気配が残っていた。


香の匂い、整えられた衣……そのすべてが、まるで紫の上がまだここにいるような錯覚を生み出す。


けれど、布団の中には、もう彼女の温もりはない。


俺は手を伸ばし、そっと衣を握りしめた。


「……なあ、紫の上……」


言葉を続けることができない。


◇◆◇


紫の上がいない世界は、こんなにも静かだったのか。


俺は、ただ虚空を見つめるしかなかった。

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