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第四十六章:儚き灯火
紫の上の病状は、もはや回復の兆しを見せることなく、日ごとに衰えていった。
医師も、もはや打つ手がないと首を振るばかり。
「光の君……」
彼女の声はか細く、今にも消え入りそうだった。
◇◆◇
俺は紫の上の手を握り、必死に温もりを確かめようとした。
「お前を置いていく気はない。俺がそばにいる」
紫の上はわずかに微笑んだ。
「……ありがとう、光の君。でも、きっと……私は長くはないでしょう」
「そんなことを言うな!」
俺の声は震えていた。
◇◆◇
紫の上は、静かに天井を見つめる。
「光の君と過ごした日々は……本当に幸せでした」
俺は何も言えなかった。
「だから、光の君……私がいなくなったあとも……どうか、悲しまないでください」
「……無理だ」
「……ふふっ、そうですね。でも、約束してください」
◇◆◇
紫の上の手の力が、徐々に弱くなっていくのを感じた。
俺はただ、その手を握りしめたまま、祈ることしかできなかった。
夜は静かに更けていく。
俺の愛した人の命が、今まさに、指の隙間から零れ落ちようとしていた——。




