第四十四章:祈りと焦燥
紫の上の病状は、日ごとに悪化していった。
食事もほとんど喉を通らず、彼女の身体は驚くほど細くなっていた。
俺は毎晩のように彼女の枕元に付き添った。
だが、何もできない自分に苛立ちを感じるばかりだった。
◇◆◇
「どうにかならないのか……」
医師を呼び、あらゆる薬を試したが、一向に回復の兆しは見えない。
「紫の上様のご病状は……心の悩みが影響しているかと」
医師は、申し訳なさそうにそう言った。
「心の悩み、だと?」
「ええ……紫の上様は、何か深く思い悩んでおられるご様子です」
◇◆◇
俺は、紫の上の手を握った。
「紫の上……俺にできることはないのか?」
彼女は弱々しく微笑んだ。
「光の君……そんなに悲しい顔をしないでください」
「悲しいに決まっているだろう……」
「……私が、光の君を苦しめてしまったのですね」
紫の上の瞳に、涙が滲んだ。
◇◆◇
俺は、彼女の涙を拭った。
「違う。お前がいなくなることを考えるのが、俺にとって一番の苦しみなんだ」
紫の上は少し目を伏せ、しばらく沈黙した。
「私は……光の君のおそばにいられて、幸せでした」
「だから、そんな遺言みたいなことを言うな!」
◇◆◇
紫の上は、そっと俺の手を握り返した。
「光の君……私がいなくなったあとも……どうか、強く生きてくださいね」
俺は何も言えなかった。
ただ、紫の上がこの世を去る未来を、想像することすらできなかった。




