第四十三章:紫の上の病
紫の上の「都を離れる」という言葉は、俺の心をかき乱した。
だが、それ以上に俺を不安にさせたのは、彼女の顔色だった。
◇◆◇
「紫の上……お前、少し痩せたのではないか?」
そう問いかけると、紫の上はかすかに微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」
彼女はそう言うが、その手は驚くほど冷たかった。
◇◆◇
医師に診せるべきか——そう考えた矢先、侍女が不安げな表情で近づいてきた。
「紫の上様は、最近お食事もあまり召し上がらず、夜も眠れていないご様子です……」
「……なぜ、もっと早く知らせなかった?」
「紫の上様が、『大げさにしないで』とおっしゃるので……」
俺は紫の上を見つめた。
「お前、本当に大丈夫なのか?」
紫の上は少し目を伏せた。
「少し疲れているだけです……きっと、心が乱れていたから……」
◇◆◇
だが、それから数日後——
紫の上は高熱を出し、床に伏せってしまった。
俺は急いで医師を呼び、看病にあたったが、彼女の病状は思った以上に深刻だった。
「光の君……」
弱々しく俺を見上げる紫の上の瞳には、不安と諦めが入り混じっていた。
「私は……長くはないかもしれませんね……」
「そんなことを言うな!」
俺は思わず彼女の手を握った。
◇◆◇
俺は紫の上を失いたくない。
だが、彼女の病は、俺の願いとは関係なく、ゆっくりと進んでいるようだった——。




