第二十一章:都落ち
「光の君……これはあまりにも不敬でございます!」
翌日、宮中は騒然としていた。
帝の寵姫となるはずの朧月夜に手を出したのだから当然だ。
(……完全に詰んだな)
右大臣は激怒し、帝の耳にもすぐに話が入った。
「光源氏、お前の振る舞いはもはや許しがたい」
帝の声には怒りが滲んでいた。
「そなたは、臣下としての分をわきまえぬばかりか、我が后となるべき者に手を出した。もはや、この宮中に留めておくことはできぬ」
「……陛下」
「源氏の名を捨て、都を去るがよい」
◇◆◇
(都を……去れ、だと?)
この俺が、宮中を追われる……?
そんなこと、考えたこともなかった。
「それが、陛下のご決断なのですね」
俺は低く呟いた。
「そうだ。そなたの振る舞いを見逃せば、宮中の秩序が乱れる。これは、やむを得ぬ処置だ」
(……これが、俺の運命か)
俺はゆっくりと頭を下げた。
「……御意」
◇◆◇
それから数日後、俺は正式に都を追われることになった。
行き先は、須磨──
宮中の華やかさとはかけ離れた、静かな海辺の地だった。
「光の君……本当に行ってしまわれるのですか?」
紫の上が悲しそうに俺を見つめる。
「仕方のないことだ。俺が蒔いた種だからな」
「……きっと、お戻りになれますよね?」
「もちろんだ。俺は必ず帰ってくる」
俺は紫の上の手をそっと握った。
「しばらくの間、宮中を頼む」
「……はい」
◇◆◇
こうして、俺は都を離れた。
宮中を追われた俺の人生は、これから大きく変わる。
だが、これが終わりではない。
(俺は必ず、都に戻る)
そう誓いながら、俺は須磨へと旅立った。




