第二章:初恋の罠!禁断の恋に落ちてしまった件
──気づけば、俺は大人になっていた。
いや、大人というより「青年」といったほうが正しいかもしれない。あの異世界転生直後の混乱も、気づけば遠い過去のようだ。
あれから十数年が経ち、俺は「光源氏」として宮廷でそれなりの地位を築いていた。いや、むしろ築かされていた、と言うべきか。
──この顔、この才能、この血筋。
全てが俺を「理想の貴公子」に仕立て上げていった。周囲の女たちはみな俺を見つめ、貴族たちは俺に期待を寄せる。
(いや、そんな完璧超人みたいな生き方、俺にできるわけないんだけど……)
けれど、期待されるままに振る舞っていたら、なんだかんだでそれっぽくなってしまった。貴族としての立ち振る舞いも板についてきたし、和歌もそこそこ詠めるようになった。
──そんなある日、俺は「禁断の恋」に足を踏み入れることになる。
◇◆◇
「帝の后……藤壺様がいらっしゃいました」
そう告げられた瞬間、俺の心臓は跳ね上がった。
藤壺。俺の父である帝の妻。そして──
(母上にそっくりな女性……)
初めて見たとき、俺は驚いた。藤壺は、亡き母・桐壺更衣と瓜二つだったのだ。
もちろん、血のつながりはない。でも、その優雅な仕草や穏やかな声まで、まるで母が生き返ったかのように思えるほどだった。
(いや、ダメだろこれ……)
自分でもわかってる。父親の妻に惹かれるなんて、完全にアウトだ。
けれど、理性とは裏腹に、心はどんどん彼女に惹かれていった。俺が目を合わせるたび、藤壺も微笑んでくれる。その微笑みが、胸を締めつけるほどに美しい。
◇◆◇
そして、運命の夜が訪れた。
──静まり返る宮中。
俺は、藤壺の元へと足を踏み入れてしまった。
(何をしてるんだ、俺は……)
わかっている。これは絶対に許されないことだと。でも、どうしようもなかった。理性よりも、本能が先に動いていた。
「光る君……」
彼女が俺の名を呼ぶ。小さな声だった。でも、それだけで全てが決まった気がした。
──この恋は、もう止められない。
そして俺は、取り返しのつかない一歩を踏み出した。