第十二章:動き出す陰謀!? 若紫をめぐる宮中の思惑 「光る君、これは……まずいかもしれません」
左馬頭が険しい表情で報告にやってきた。
「……何がだ?」
「右大臣家だけではありません。他の貴族たちも、若紫様に興味を持ち始めています」
「……は?」
俺は思わず眉をひそめた。
(いやいや、ちょっと待て。若紫はまだ子どもだぞ? 何でそんなに注目される?)
「彼女の素性が明らかになり、『光源氏が秘蔵している美少女がいる』という話が広まったようです」
「……誰だよ、そんなこと言いふらしたのは!」
噂が広まるのが早すぎる。
(くそっ、確かに若紫は美しい。育てば宮中のどの女性にも負けない気品を持つだろう。……だが、今はまだ早い!)
俺は彼女を守ると決めたのだ。
(こうなったら、徹底的に手を打つしかない)
◇◆◇
翌日、俺は宮中の有力者たちと会話を交わしながら、慎重に情報を集めた。
「光る君、最近ますますお美しい姫君と親しくされているとか?」
「……まあ、可愛い子ですよ」
「ふむ……一体、どのようなお方なのか……」
(くそっ、完全に探りを入れられている)
これ以上、彼女を目立たせるわけにはいかない。
◇◆◇
「若紫、これからはしばらく静かに過ごそうか」
「え? どうして?」
「……ちょっと、面倒なことが増えそうだからな」
彼女はまだ何も知らずに、俺の袖を掴む。
「でも、光の君が一緒なら大丈夫だよね?」
(……っ!)
何も疑わず、まっすぐに俺を信じてくれる若紫。
(……そうだ。俺が守るしかない)
俺はそっと彼女の頭を撫でた。
(どんな陰謀があろうと、絶対に手を離さない)
──だが、この決意がさらなる波乱を呼ぶことになるとは、この時の俺はまだ知らなかった。