第十一章:政略結婚フラグ!? 若紫を奪わせるわけがない 「光る君、何やら不穏な噂が広まっております」
左馬頭が俺のもとへ駆け込んできた。
「またか……今度は何だ?」
「右大臣家が正式に若紫様を迎え入れる準備を進めているそうです」
「……っ!」
その言葉を聞いて、俺は思わず拳を握った。
(やはり……このままでは、若紫を奪われる)
彼女の家柄を考えれば、他の貴族が目をつけても不思議ではない。特に右大臣家にとっては、俺を牽制する手段にもなるはずだ。
(だが、若紫は俺が育てると決めたんだ。誰にも渡さない)
◇◆◇
「光の君?」
その夜、若紫が寝室からひょこっと顔を出した。
「どうした? 眠れないのか?」
「うん……なんだか、光の君が難しい顔してるから……」
(可愛すぎる)
俺は彼女の頭を優しく撫でながら、微笑んだ。
「心配するな。お前は俺のそばにいればいいんだ」
「うん……」
彼女は安心したように頷く。
(絶対に守るからな)
◇◆◇
翌日、俺は行動を起こすことにした。
「左馬頭、俺の意志は固い。若紫を正式に俺のものにする」
「……ついに決断されましたか」
「当然だ。俺が育てた娘を他人に渡すわけがない」
左馬頭は呆れたようにため息をついたが、俺の決意は揺るがない。
◇◆◇
とはいえ、正式に迎え入れるには時間がかかる。
(まずは、右大臣家に牽制をかけるのが先だな)
俺は藤壺の兄である中納言に接触し、さりげなく若紫の話を持ち出した。
「……なるほど、右大臣家が動いていると?」
「ええ。ですが、彼女はすでに私が責任をもって育てています。今さら他の家に移るのは難しいでしょう」
「確かに、今から養女にするとなると……」
中納言はしばらく考え込んだあと、微笑んだ。
「光る君、あなたは本気なのですね」
「……もちろんです」
「ならば、私からもそれとなく話をしておきましょう」
(よし、これで一旦は安心だな)
◇◆◇
「光の君、今日はお散歩しないの?」
若紫が俺の袖を引っ張ってくる。
「そうだな、たまには気分転換しようか」
俺は彼女の手を引き、庭を歩きながら、改めて誓った。
(お前は絶対に俺が守る。誰にも奪わせるものか)
彼女はまだ何も知らない。
けれど、俺の中ではすでに覚悟が決まっていた。