第一章:異世界転生!光り輝く貴公子としてスタート
──目が覚めると、そこは異世界だった。
「……ん?」
ふかふかの布団に包まれて目を覚ますと、目に飛び込んできたのは見たこともない天井だった。木の梁がむき出しで、柱や襖には繊細な模様が描かれている。
(和風……いや、それにしても古すぎないか?)
戸惑いながら体を起こそうとすると、驚くほど自分の手が小さいことに気づく。
(……え、子ども? なんで?)
混乱する中、横で誰かが動く気配がした。振り向くと、そこには息をのむほど美しい女性がいた。黒髪はまるで絹のように艶やかで、肌は透き通るように白い。繊細な顔立ちに、どこか儚げな雰囲気を漂わせている。
「光る君……」
優しく呼びかけられた瞬間、背筋にゾワッとした感覚が走った。
(光る君……? どこかで聞いたことがあるような……)
まだ寝ぼけた頭で考えていると、女性がそっと俺の手を握る。
「ご気分はいかがですか……?」
(なんだこの雰囲気……いや、そもそもこれは夢なのか? それともマジで異世界転生したのか?)
◇◆◇
それから数日、状況を把握するために情報収集を続けた結果、だんだんとこの世界のことがわかってきた。どうやら俺は、桐壺帝という皇帝の息子らしい。ただし、母親である桐壺更衣は身分が低いため、宮廷ではかなり立場が弱いらしい。
そして、俺はなぜかやたらと美しい顔立ちをしているらしく、周囲から「光る君」と呼ばれている。
(いや、光るってなんだよ……)
さらに、この宮廷では母親への風当たりが異様に強いこともわかってきた。他の后妃たちからは「身分も低いくせに帝に寵愛されすぎだ」と陰口を叩かれ、侍女たちもどこか腫れ物に触るような態度をとっている。
(なんだこのギスギスした世界……俺、めちゃくちゃ生きづらい環境にいるんじゃないか?)
そして、そんな状況を見ているうちに、ふと記憶の片隅にあった言葉を思い出した。
──源氏物語。
確か、日本の古典文学のひとつで、やたらと女の人と恋愛する貴族の話……だった気がする。でも、内容は詳しく知らない。
(まさかとは思うけど……ここ、源氏物語の世界じゃないよな?)
けれど、もしそうだとしたら、この先俺はどうなるんだ? そもそも、ここがどういう物語なのかすら知らない俺に、未来を変えることなんてできるのか?
不安と期待が入り混じる中、俺の異世界生活が幕を開ける──!