第14話 マトヤの冒険者ギルド
毎朝6時投稿予定です。
『はい次の方』
ボナの前にいた冒険者が討伐照明を提出して酒場に消えていったのを確認したしていたころで声が掛かった。ボナは、角ウサギの角と魔石が入った袋をカウンターに置く。
『確認させていただきます』
水色の髪をなびかせたカウンターの女性はそう言ってボナが置いた袋を開けた。
『これは・・・角ウサギの角と魔石ですね
角 :小銀貨1枚×5個
魔石:小銀貨1枚×5個
で買取できますが・・・どこで入手したのでしょうか?』
不思議そうにボナを見つめるカウンターの女性に
『以前、王都の東で狩った物だ』
とだけボナが言うと、カウンターの女性は、何故か納得したように水色の髪をなびかせ、
『なるほど・・・こちらの周辺では角ウサギが確認されていないので、ひょっとしたら思って・・・うふ』
そう言いながら、換金処理をする女性から
『ああ・・・角ウサギの煮込みが食べたいわ~』
と聞こえて来た呟きをボナは聞き流していた。
・・・
ボナは換金後、逃げるように冒険者ギルドを出た。何か狙われているような気がしたのである。
(宿の情報を聞いておけばよかった・・・)
結局、肝心な情報は何も聞けなかったボナは周辺を見渡すと、直ぐ目の前に宿があることを発見した。
宿の前までくると“冒険者の宿 マトヤ亭”と書かれた扉が目に入った。
(今日はここでいいか)
扉を開くと、目の前にカウンターがあり、おばさんが座っていた。
『1人なんですが・・・』
ボアが言いかけると
『1泊銀貨3枚だよ。夕食と朝食を付けると銀貨5枚だ』
(王都と同じだ・・・)
『夕食だけだと・・・』
『銀貨4枚だ』
ボアが最後まで言い終わらない内に回答があった。
まだ、パンはあったので、
『じゃあ、夕食のみ付けてください』
ボアはそう言いながら、銀貨4枚を出す。
おばさんは銀貨を回収すると、
『部屋は2階の一番奥だよ。食事の時は、この札を持ってきてね。今からでも食べられるよ』
部屋の鍵と思わる木の板とオレンジに色に塗られている夕食用札を差し出すと、にっこりとほほ笑んだ。
(王都の方がいいな・・・)
ボナは心の中で呟いた。
・・・
部屋の作りは、王都の宿と同じであった・・・いや、そっくりだと言った方がよい。全てがあまりにそっくりなのを見て
(もしかして、何か規格でもあるのかな?値段も作りも部屋のつくりや大きさも同じだよな・・・)
荷物を部屋に置こうとして
(異次元ポケットに入れればよいか・・・)
ボナは、荷物を異次元ポケットに収納して食堂に向かった。
・・・
厨房の入り口で、オレンジ色の札と交換で食事を受け取っていた。ボナも真似するようにオレンジ色の札を厨房の入り口で差し出すと、パンとスープの入った椀が乗ったトレーを渡された。
『空いている席で食べてくれ、食べ終わったらそこに返してくれ』
トレーを渡した中年男の指さした先には、
“返却口”
と書かれた窓口があり、どうやらそこにトレーを置くことになっているらしい。ボナは小さく頷くと、窓際に空いている席を見つけ、座ってから食べ始めた。
(そっくりだな)
食堂の作りも、出てきたものも、そっくりである。パンをスープに付けてスープをパンに吸わせてから口に入れる。味付けもそっくりであった。
・・・
翌朝、部屋で荷物に入れていたパンを取り出して食べたのち、宿を出て冒険者ギルドに向かう。早朝の依頼受付が終わっていたのか、カウンターに冒険者の姿はない。よく見ると、昨日買取してもらった水色の髪の女性が今日もいた。
『あの・・ちょっといいですか』
ボナはカウンターに近づき、水色の髪の女性に声を掛けた。
『あら、昨日角ウサギの角と魔石を換金された方ですね』
何故か、女性はボナのことを覚えていた。
『街の西にある遺跡について教えてほしいのですが・・・』
ボナが言葉を発した途端、カウンターの女性を含む、全てのものから注目された。
(えっ・・・何で、目が怖い)
ボナが驚いていると
『あの遺跡は危険なのですよ。うっかり、あの巨大な石の上に乗ってしまうと、蒸発してしまうのです。なので、近づかないようにお話しているのですよ』
受付カウンターの女性が物凄い形相でボナを睨みつけながら言った。
『じょ・・蒸発?』
ボナは反射的に言い返していた。
『そうです。あの遺跡の東にある森には、オークが住んでいます。なので、このあたりでは、そのオークの常時討伐依頼があるのですが、たまに、オークが西の遺跡に逃げ出すことがあります。それを追いかけていった冒険者が、遺跡の石の上に乗った瞬間に、謎の光が発生したのです。そして、その光が消えたとき、冒険者は装備や荷物諸共完全に消えていました』
水色の髪を大きく揺らせ、必死に話を始めたカウンターの女性の姿にボナは驚きながら、
『消えた・・・のですか?』
『はい。消えたのです。そして、何故か、逃げていたオークは無事だったそうです』
恐らく、仲間の冒険者が見ていたのだろう、冒険者だけが消えるという現象に違和感を持ったボナであったが、
『おう・・・その姉ちゃんの説明で間違いないぜ。おれは、3回もそれで仲間を失っちまった』
酒場の方から、大剣を担いだ大男が近づいてきた。
『俺はエンターっていうもんだ。レベルCの冒険者だ』
『エンターさん』
カウンターの女性にが呟いた。
『3回共、同じように消えてしまったのですか?』
ボナはエンターの方を向いて言った。
『おう。光が石全体から立ち上がるように出てな。しばらくして光が消えると逃げていたオークだけになっていた。悪いことは言わねえ。あの遺跡に近づくな!』
エンターはそう言うと、酒場に戻っていった。
『遺跡の西側には、何か建物があるのですが、結界があるらしく、誰も入れないのです』
カウンターの女性は、補足するように呟いた。
『そちらは、近づいても蒸発しないのですか?』
ボナが思わず聞き返すと、
『ええ。大きな石を避けるように移動すれば行けるのですが、近づくことは出来ても誰も入ることが出来ないのです』
カウンターの女性の話では、大きな石を迂回して西側には、結界と思われるものが貼ってある場所があり、入れないところがあるらしい。その境界と思われるところの一部には、大きな門のような建物があって、そこが結界出入口だと睨んだ冒険者ギルドが、冒険者を派遣して調査しようとしたが、魔法でも剣でも攻撃できず、どうやっても入ることが出来なかったという。
マトヤの街・・・もうお分かりですよね。
この神様は、地形とあるものしかコピーしなかったのです。それも、何故か変な細工をして・・・。
なので、実際の街とは関係ありません。