第13話 王都脱出
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冒険者ギルドを逃げるように出たボナは、そのまま、孤児院に向かった。
(院長は何か知っているに違いない)
孤児院が見えるところまで来た所、孤児院の入り口に1人の赤毛の老女が立っているのを発見した。
(院長)
ボナが駆けよっていくと、
『気が付いたようですね』
赤毛の老女はそう言うとボナを孤児院の中に招き入れた。
・・・
(こんな部屋があったのか?)
院長の部屋の奥にあった本棚をずらすと、地下に続く階段が現れたのである。院長はその階段を指し示しながら
『ボナ。ここから直ぐに出かけなさい』
ボナが来ることを予知していたような院長の様子に理解が追い付いていかないボナ。
『あの・・・ここは?』
ボナの口からはやっと出た言葉であった。
『ここは、“うてつそ”の入り口です。さあ、早く行きなさい』
院長は、少し寂しそうに言った。
ボナは、異次元ポケットから角ウサギ5匹分の肉を出すと、そのまま院長の部屋に置き、
『お世話になりました!』
と叫んで階段を駆け下りていった。その姿を院長は黙って見届けたのち、本棚をもとに戻す。
『タミアよ。私の役目が終わったわ・・・』
院長が呟いた。
・・・
階段を降りていった先は少し広くなっていた。そして、2mくらいの崖になっている。
(こんなものが王都の地下にあったのか・・・)
そして、崖を飛び降りたところで、長い洞窟が続いていることに気が付いた。まっすぐ続いている洞窟は、まるで土の中をくりぬいたように天井が丸くなっており、床には等間隔に石が置かれ、何に使うのかわからないが、2本の平行に置かれた鉄の棒が洞窟の方向続いていた。
(なんだこりゃ?・・・確か、この地下遺跡はマトヤの街まで繋がっているとか言っていたな・・・)
冒険者ギルドでグリーナが言っていた言葉を思い出したボナであった。
・・・
洞窟は、一定間隔に置かれた石、2本の平行に置かれた長い棒、そして、所々ある30㎝くらいの長さの白く光る板がずっと続いていた。
(一体どこまで続いているんだ・・・)
ボナは洞窟を歩き出した。1kmほどあること、前方が少し開けてきた、2mほどの崖があり、少し広い空間がある。ボナは、崖の上によじ登った。
広くなっている空間には、沢山の光る石が埋め込まれており、明るくなっていた。ボナがよく見ると、洞窟の壁に何か文字が書かれているのを発見した
“シカワイ”
本と同じ言葉で書かれた文字でそう書いてあった。
そして、その右隣には
シカワイ
↓
ミホシカワカ
↓
シタニニ
↓
ルガミネツ
↓
タマタフ
↓
ボウキ
↓
ツキョウミ
↓
ヤセ
↓
マトヤ(13km)
と白い石板に、本と同じ言葉で書かれた緑の文字が掛かれていたのである。
(マトヤの街まで13km続く洞窟なのかな?)
ボナは白い石板を見ながら思い、荷物からパンと水を取り出した。
(よくわからないが、今のうちに腹を膨らましておこう)
ボナは、周囲を警戒しながら、パンを食べ、水を飲んだ。
・・・
その後、再び洞窟を歩き始めたボナであったが、途中、広くなっている部分を見つけ、先ほどと同様に崖を登ると、“ミホシカワカ”と壁に掛かれているのを発見した。
(間違いない。先ほどの石板は、マトヤまでにあるこの空間の名前だ)
ひたすら洞窟を進み、“シタニニ”、“ルガミネツ” 、“タマタフ”、“ボウキ”、“ツキョウミ”、“ヤセ”と壁に書かれた空間を通過した結果、“マトヤ”と書かれた空間にたどり着いた。
崖を登った所にある空間の壁にある“マトヤ”と書かれた文字の脇に上に登っていく階段をボナは発見した。洞窟は更に先に続いていたが、
(おそらく、ここがマトヤの街のはずだ)
ボナは階段を登っていった。
・・・
(ここは何処だ)
階段の終わりには、水が流れている地下があった。強烈な匂いがボナを襲う。どうやら、下水道らしかった。
地下通路が下水の脇に設けられていたので、そこを歩き始めてふと振り向くと、先ほど登って来た階段が見えなくなっていた。慌てて戻ってみると、どういう訳か階段に戻ることが出来ないことに気が付いた。
下水道から階段を降りることは出来ないようになっているらしい
(よくわからないが、先に進もう)
ボナは下水道から脱出すべく、出口を探し始めた。
・・・
地上に出る階段を見つけ、登っていくと、どうやら、マトヤの街の中にある路地に出た。
振り向くと
“地下入り口”
と書いてある。特に鍵は掛かっていないらしい。簡単な扉があるだけだった。
(いつの間にか街に入ってしまったな・・・)
王都の門も出ず、マトヤの街に入る手続きをせずに街中にいることに気が付いたボナであったが、王都の門も冒険者証を見せるだけであったことを思い出し、
(大丈夫だろう・・・多分)
通りに出たボナは、冒険者ギルドを探すのだった。
・・・
(ここだな)
冒険者ギルドは直ぐに見つかった。なんと、通りに出たところから、王都の冒険者ギルドそっくりな建物が目に入ったのである。
ボナが扉を引くと、
“チャリーン”
と金属音が鳴った。
(王都と同じだな)
中はまぎれもなく、冒険者ギルドであった。王都の冒険者ギルドよりも小さいものの、受付カウンターが数か所と、その奥には酒場というべき、飲食店がある。既に、陽が沈みかけていた時間であったことから、受付カウンターには、列が出来、酒場には、酒を飲んで騒いでいる冒険者と思われる者たちがいた。ボナは、受付カウンターの列に並ぶと、角ウサギの角と魔石が入った袋を取り出した。その様子に回りの冒険者が怪訝な顔をしてボナを睨んでいる
(あれ・・・何かヤバかったか?)
ボナは周囲の視線に気が付かないふりをしていた。
ついに都落ち・・・。
やっと旅が始まります。