第24話 観覧車
ゲームクリアおめでとうございます
中央の半円形広場の電光掲示板の表示にはそう表示されていた。
俺たち四人はいったん胸をなでおろす。
これでこの狂ったゲームが終わったんだ。
だけど、おかしい。
最初に与えられたミッションは「全てのアトラクションのクリア」だったはずだ。
しょぼい遊園地のお陰でアトラクションの数が少なくて助かった。
でも、アトラクションはあと一つ残っているはずだった。
この小さな遊園地で一番でかいが、照明がついていなかったせいで全く目立つことのなかった、最後のアトラクション。
観覧車。
ここに来てすぐに真っ暗になったし、もしかすれば観覧車があることなんて気づかなかったかもしれない。
だけど俺は思い出した。
前にここに来たこと。
そしてその時最後に乗ったアトラクションが観覧車だったはずだ。
半円形劇場から外に出ると、あたりが真っ暗になっている。いやもともと真っ暗なんだけど、アトラクションの照明が消えていたせいで、ほとんどよく見えなくなってしまっていた。
しかもさっきまで大量にいたはずの黒いきぐるみが一体も見当たらない。
そして観覧車だけが照明がついていた。止まっていたはずだけど動いている。
その時、電光掲示板のの表示が変わった。
残り2:58
ゲームクリアの表示が消え、3分のカウントダウンが始まった。
くそ、終わりじゃねえのかよ。
「出口は観覧車だ! 皆走れ!」
俺は迷いなく言った。
とっさに杏奈の手を握りって俺は走った。
彩もめぐみもしっかり付いてきている。
園内は狭いし、走ればすぐに観覧車に到達できる。
1分もあれば着く。
すぐに俺たちは観覧車の入り口まで駆け上がった。
おそらくまだ1分もかかっていないはずだ。
きぐるみがいた。メモガーだったかなんだかのモモンガのきぐるみ。どうみてもリスかネズミにしかみえないけど。
それはこれまでの黒いきるぐみじゃなかった。
茶色がベースの「色」がついいていた。
入り口でみたときと同じ色だ。
多分これが本当の配色なんだろう。
きぐるみは降りてくる観覧車のゴンドラのドアを開ける作業を繰り返し行っている。
先の方では別のきぐるみがゴンドラのドアを締める作業をしている。
まるで本物の、普通の観覧車のスタッフみたいに仕事をしている。
「次の方、どうぞー」
ときぐるみが喋った。
機械音とかでない、人間の女性の声だった。聞いたことがある声だったけど、それよりも驚きと焦りの方が大きくて考えを巡らす余裕がない。
色の戻ったきぐるみ。
人間の声。
明らかにこの世界が変化し始めている。
これは現実が近づいているということなのだろうか。
そのきぐるみを剥ぎ取って中に人が入っているか確認してみたい気持ちもあったが、制限時間が気になる。
それにいま余計なことをしてなにもかも台無しにしてしまうわけにはいかない。
「よし、乗ろう!」
反対するものはいなかった。
全員がこの変化に何かを感じていた。たぶん前向きな。
俺たちは全員でゴンドラに乗り込んだ。
中はすこし鉄臭かったしやっぱりボロかったが普通のゴンドラだ。
ゆっくりと横に進んだ後
「それではいってらしゃーい」
と、きぐるみが丁寧にドアを締め、鍵をかけ、さらに開かないかチェックまでした。
本当にただの遊園地に来たときのようだった。
ゴンドラはゆっくりと登っていった。
俺たちは暫くの間言葉を発する余裕もなく、ただ息を整えていた。
外の景色は暗いままで、照明は観覧車しか付いていないので殆ど見えない。
なんとなく光の反射でジェットコースターがあった場所はわかる。
あそこにまだ陸と佐藤の体を置いたままだ。
絶対にあのままにはしない。必ず戻ってくるから待っててくれ。
観覧車はどんどんと高度を上げていく。
外が見えないから怖さはないが、下を通るゴンドラの光ですでにかなりの高さであることはわかる。
俺はあまり高いところは得意ではないので一旦イスに腰を下ろした。
これからどうなるのか。
下に降りたら全てが元通り、なんてことになってればいいのだけど。
「これもてっきり何かのアトラクションかと思ったぜ。観覧車なら失敗すれば転落死ってところか?」
ようやく少し落ち着いためぐみが縁起でもない事を言う。
アトラクションであれば下に電光掲示板があるはずだろうし。絶対とはいえないが。
「そんなわけないだろ。これで終わりだと思うぞ。たぶんこれは最後くらいアトラクションを楽しんでほしいという配慮なのでは」
「正気か? 奏太。そんなこと性格がひん曲がったやつがすると思うか?」
めぐみが頭がおかしいやつを見る目で俺を見てきた。
俺も本気でそう思っているわけじゃない。ただ、少しだけ希望が見えて場を和ごまそうとしただけだ。
その時、ガチャリとかなり大きな金属音がした。
女子たちの短い悲鳴。やっぱりそんなに甘くはなかったか。
「何の音だ?」
「わかんないけど、なんかそこで音がしたよ」
めぐみが指差すのはゴンドラの入口の扉。
俺は立ち上がり、扉に手をかけた。
「待って、危ないよ奏太」
「大丈夫、気をつけるから」
中からは開けられないのか、取手はない。
押してダメだったから、軽く引いてみるとドアが開いてしまった。
「うおわ!」
俺はとっさに後ろに体をのけぞり、耐えきれず尻餅をつく。
外の冷たい風が吹き込み、女子三人が一斉に悲鳴を上げた。
慌てて扉を締める。
「観覧車の扉の鍵が外れてる!」
「嘘、まだゲームが続いてたの!?」
「なんだよ、終わったんじゃなかったのかよ! どこまで腐ってやがるんだ!」
「もういやあああああ!」
つかの間の安心が崩れ去り、全員の心には不安と恐怖が広がっていく。
全員がパニックに陥っていた。
俺も頭がどうにかなりそうなのを必死に堪えていた。
やっぱり、めぐみの言う通りこれもアトラクションだったのか?
だったら何をすれば良いんだ?
入り口には一応注意を払っていたが電飾版はなかった。いや、焦って見逃したのか!? いやそんなわけない。落ち着け俺。
最後はゲームクリアの条件すら教えないつもりかよ。
どこまでクソゲーなんだよこの脱出ゲームは!




