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メモリアランド  作者: ひみこ
12/28

第12話 休憩

○登場人物

・主人公グループ

後藤 奏太

長谷川 杏奈

佐久間 陸✗

佐藤 芽依✗


・陽キャグループ

柿本 湊斗

本郷 彩

村上 順平✗

岡本 めぐみ

吉田 涼

中村 弘明



 ゴーカート



 次のアトラクションはゴーカートらしい。

 ゴーカートってなんだ? 俺は一度もやったことがない。

 カートなんてマ○オカートしか知らないけど。


「なあ、少し疲れたし休憩しないか」

 柿本くんが提案した。

 さっき命がけでメリーゴーラウンドを制した男が言うのだから反論するやつなんて誰もいなかった。

 それに多分みんな限界が近かったと思う。

 俺たちは円形劇場の観客席に座ってそれぞれ休んだ。


「杏奈、大丈夫か?」

「先輩、うん。ありがと。わたしは大丈夫。先輩は?」

 大丈夫そうには見えなかった。見るからにやつれ、消耗していた。

「俺は大丈夫。怪我もたいしたことないよ」

 腕には絆創膏を4枚ほど貼っていた。ちょっと思いっきり噛みすぎたようだ。実は腫れてきている。

「そっか。よかった」

 それっきり杏奈は下を向いてしまった。

 たぶん、さっき信二が言ったことを考えているんじゃないかと思う。

 次のアトラクションに挑むのはこれまでアトラクションに挑んでいないやつ。

 すなわち、杏奈、彩、吉田、中村の誰かとなる。

 一番手必死の法則はさっき柿本くんが打ち砕いてくれたが、次もうまくいくとは限らない。

 一番手が最も危険なのは何も変わらない。


「大丈夫。杏奈には危険な目に合わせないよ」

 俺は決めていた。

 もし杏奈が一番手になるようなことがあれば代わりに俺が行くと。

 そこまで杏奈のことが好きなのか? と言われると正直に言えばNOだった。

 だってそうだろ。初彼女で初デート。まだ手も繋いでいないんだ。

 だけど俺にもプライドがある。

 彼女が大切かどうかじゃない。彼女を守れるかどうか、が俺にとってはもっとも重要だ。

 高校生男子なんだからそんなものに命がかけられてしまう。

 素晴らしいことだろ?


「後藤くん。さっきは助かったよ。ありがとう。本当は君にしっかりとお礼が言いたくて休憩することにしたんだ」

 柿本くんが爽やかに言ってきた。

「なあ柿本くん」

「信二でいいよタメなんだし」

「じゃあ信二」

「なんだい奏太」

「俺のことはくん付で呼んでほしいな」

「それで、命の恩人の奏太は俺がどうして君の言う事を信じられたのかが聞きたいのかな?」

 正直キモい。なんでコイツ俺の考えていることがわかったんだ。

 もうこいつが犯人なんじゃないか。この事件の。

 そう考えればこの妙な自信も、一番手で生き残った理由も、俺の言うことを信じたことも全部辻褄が合う。

「本郷さんとは幼なじみなんだってね」

「彩から聞いたのか?」

「そうだよ。実は俺は本郷さんのことが好きでね。告白したんだよ。振られたけどね」

「……へぇ。そうなんだ」

 なんだろう。極限状態に置かれてハイにでもなっているんだろうか。

 なぜ俺に今そんな話をする。

「その時にね他に好きな人がいるって聞いて」

 それが俺って言うわけか。

「まあ、君かどうかはわからないんだけど」

 違うんかい!

「君たちを見ててわかったよ。君は」


 杏奈には聞こえないように、信二が顔を異常に近づけて言った「本郷さんのことが好きだろう?」と。

「だからね、似た者同士の君の言う事なら信じてもいいと思っていたんだ」

「そんな理由で信じたのかよ。お前もしかしてバカなのか」

「でも逆の立場でも君は俺の言うことを信じたと思うけどな」

 俺は黙った。

 たぶん信じたと思う。

 でもそれは似た者同士とかそういうのではなく、信二がもつカリスマ性のようなものに惹かれてだと思うけど。

「とにかくお礼が言いたかった。なんとかゲームをクリアしてここを抜け出そう。これ以上の犠牲者を出すことなくね」

「できるのかそんなことが」

「おいおい、君がそんな事を言うなんて。俺は何を信じれば良いんだよ」

「知るか」

「君がそうだったように俺も最後まで諦めないよ」

 そう言って信二は立ち上がった。

「待てよ」俺はとっさに呼び止めた。

「何かな?」

「お前さ、メリーゴーラウンドに行く前に俺に言ったよな。なんで俺にあんなこと言ったんだよ」


「ああ、あれかあ……。あれはね、奏太が約束を破るようなやつじゃないって思ったからだよ」

「は? なんでそんな事――」

「ああ、それともう一つ」

 また顔を近づけてくる。近い、キモい。

「中村くんもね本郷さんに告白したらしいよ」

 そう言って信二は仲間一人ひとりに声をかけに言った。超人か。

 なんで俺にそんなことを言うんだよ。


 俺は中村と彩の様子をうかがってしまう。

 中村は彩の隣に座っている。妙に距離も近い。

「先輩? どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」

 俺の彼女は杏奈だ。今更彩が誰と付き合おうと関係ないはずだ。


 休憩中、黒いきぐるみは何もしてこなかった。

 集まってくることもなく、こちらを監視するでもなく、ただ一般の客のように歩いている。

 腕がズキンと傷んだ。自分で噛みついた腕の傷の痛み。

 俺は追い詰められるとあんなふうになるのか。


 自分でも意外だった。

 あんな大声を出したのは初めてだったし、自分の腕に噛みついたのなんて自分でも驚いた。今でも信じられないくらいだ。

 だけど、余裕をなくすと思考が乱れるというのも思い知った。

 だったら今のうちになるべく次に自分が取る行動について、よく考えておく必要がある。



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