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ペリドットの寺  作者: 寄付
月の桃
17/17

月の桃 5/



「どうやって出ましょうか?」

「考えてなかったのかよ…」

「ええ」


「『出して』と頼めば出してくれると思うんですけどねぇ」

「ちゃんと考えろ」

「叫んでみる?」

「おい…」

「良いですね」


「すると、どこに向かって叫ぶのがいいでしょうか」

「華寿海、今神様の気配どこにある?」

「…月」

「大きいですね。でもまあ、適当でいいでしょう」

「そうだね」

「……」



「絵都君良いですか?」

「うん、せーの、」




「「出してくださーーい!!!」」







反響もせず、声が吸い込まれていく。




「華寿海。…神様、どう?」


「…落ちる」

「え?」


その時、


確実だった床が抜けて、


夜空、かと思ったら


僕たちは青い空に落ちて、


息が吸えなくなって、


強い風が身体を叩いて、


痛くて、


目を開けていられないのに、


目から涙が出て、



気付いたら華寿海に抱えられていた。

突然身体が浮いて呼吸が楽になり、落下速度が緩くなる。



「っ、華寿海」

「ああ」

「ありがとう」

「…いや、どうにか風を除けているがこれが限界だ。このままだったら地面に落ちて死ぬ」


「僕のこと、落としていいよ」

華寿海は自力で飛ぶことが出来る。邪魔なのは僕だ。


「……ふざけんな」



そのまま、僕たちはゆっくりと落ちていった。

空には雲ひとつなくて、下には暗い海が広がっていて。

目がおかしくなりそうだった。

僕たちは、海に落ちていくのだろう。





「あなた達、何してるの?」


「え、誰?」

「飛ぶならちゃんと飛びなさい。それだと危ないわ」

人間の形をしたものが、目の前に現れた。


「助けて」

「え?」

「僕は、飛べないから」

「あら、あなた人間?」

「そう。お願い、早く」

「それはごめんなさい、これを付けて」


そういって、薄くきらめく布が首に掛けられた。

その途端、僕は本当に空に浮くことが出来た。


「うわ、これ、浮いてるの?」

「ああ」

肯定しながら、華寿海は僕のことを降ろそうとしない。

「降ろしても大丈夫だよ?」

「いや、このままで良い」


「ああ、良かった」

僕に布をくれた子が、安堵した表情を見せる。


「ありがとう。本当に助かったよ」

「いいえ、それよりあなた本当に人間なの?」

「うん、そうだけど…」

「それはツイてるわ!」


「私は天女よ」

「天女?」


「良かったらあなた、私の所に来ない?」

天女は、そう言うと僕の頬に口付けをした。




終わり(続く)




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