log in - 01:ひらかれるせかい!
新作です。
ノリで書いた。後悔はしていない。
感想が来ても、恐らく返せません。
生暖かく見守って下さる方々へ、この物語を捧ぐ。
では、プロローグ:全5話を投稿します。
「ふあぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~……」
私は、管理サブAI-No.77
このゲームのシステム諸々を管理する統合管理AIの補助を目的とする、77番目のAI……それは、私……。
と、言えば大層なものに聞こえるかもしれませんが、その実態はキャラクターメイキング進行のために統合管理AI……そのベースユニットデータを急遽簡易コピーした量産型AIの1つにすぎません。
はっきりと申しますと、ゲーム内のNPCの方が余程成熟しているAIだと言えるでしょう。
そんな私は、こうして天使の姿のアバターで転倒するべきプレイヤーの前へと姿を顕したわけなのですが……これは一体、どうしたことなのでしょうか? 困りましたね。
私を目にするなり、輝くような眼を大きく見開き喜色を浮かべた……その少女。
彼女は、私の姿を……そして、私の顕現と共に暗闇から神殿の礼拝堂へと様変わりした周囲を、はしゃぎながら見回しているのです。ええ、僅かも治まる気配が見受けられません。
本当に……どうしましょうか?
これを感情として表すのならば……困惑している、ということになるのでしょうか……?
「ふあぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~っ!? みえるっ!? みえるよぉぉぉぉぉううっ!! すごいっ! わたし、みえてるぅぅぅぅぅっ!!」
突如涙を溢れさせ、そう……魂の慟哭にも思える叫びを上げる少女に、私はどうしたらいいかも分からぬまま、気になった彼女のパーソナルデータを参照する。
そして……納得するのです。
とはいえ、です。私も役目を果たさなければなりません。
「こほんっ……そろそろ、よろしいでしょうか?」
「ふぇ? ……あっ!? ご、ごめんなさいぃいいいいいっ!! わたし、すごく、うれしくって……。もう、ずっと……みえなかった、から……」
そう、この少女……深海 奏は、3つの時に病の後遺症から目の光を失なってしまい……それから、10年。彼女はずっと白と黒の世界を生きてきたのです。
そして、それはこれからもずっと続く……はずでした。
そう、このゲームが世に生まれるまでは……。
世界初となる、フルダイブVRMMORPG。
『エブリデイライフ・オンライン』
当たり前のように繰り返される日々。
剣と魔法の世界を、ごくありふれた日常のように……を、コンセプトに創り上げられたこのゲームは……とにかく、リアルだ。
「おねえちゃんが、このげぇーむはすごくりあるだからって……。げんじつとそんしょくがないって……。そう、きいていたから……。げんじつじゃあみられないものが、ちゃんとみられているんだって……そう、おもったら、おさえられなかったの……」
「そうですか……」
なぜでしょう? 私の手は自然と少女の頭の上へと添えられ、優しく髪を撫で上げる。
「ですが、遜色がないとは言っても、やはり現実との違いはありますよ? 過去の小説などで問題として挙げられていた、あまりに現実と遜色がないと色々と勘違いを起す方が現れるのではないかという懸念は拭えなかったようですから。まあ、普通でしたらそこでグラフィックを現実よりも劣化させて……となるところなのですが、このゲームの開発者たちは、それならば現実よりも莉やるにしてやれ! とばかりに、違和感を覚えないレベルでより滑らかに、より美しくと妥協を一切することなく創り込んだわけですが……」
それはきっと、狂人の沙汰とも呼べる……地獄、であったに違いありません。
ええ、ボサボサの髪にこけた頬。虚ろな目の下には大きな隈。まるでゾンビのような開発者たちが、半開きの口から「怨怨怨怨怨怨ぉ……」と怨嗟の呻きを漏らしながらモニターへと向かっている様子が、見てきたことのように浮かびます。
……いえ、実際に浮かんでいますね。誰でしょうかね? こんな開発時の映像を、記憶領域に送り込んだのは……。
「ふあぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~……」
私の話を聞き、少女の瞳が再び“ラン、ラン”と輝く。その清らかさには、きっと映像の中の亡者達も綺麗に浄化されることでしょう。いっそ、この映像データも浄化されてはくれないでしょうか、ねぇ?
「それでいいの! それがいいの! みえるだけでわたし、しあわせだよぉぉぉぉぉううっ!!」
実際の問題として、少女には現実と比べる術はないのです。ここで映像として見たとしても、やはり肉眼とは違いますからね。
現実と遜色なく、それでいて違和感のないレベルでリアルより美しいというのですから、さもあらん。
……ですが、これは……何でしょう?
彼女の喜ぶ姿を見ていると、存在しないデータ領域の奥から何かが湧き上がってくるような……錯覚? が……。
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