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あずきとおはぎと月の女王  作者: 皇 瑠奈
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第20話 氷姫ヒルダと雪上訓練

【登場人物】

野咲(のざき)あずき……12歳。小学6年生。日本とイギリスのハーフ。

おはぎ……黒猫。あずきの飼い猫。

ヒルダ……氷の精霊。

「フランマ サジータ(炎の矢)」


 あずきは箒で飛びながら、ヒルダに向かって炎の矢を放った。

 ヒルダの額に当たる!!

 と思った瞬間、ヒルダがヒョイっと首を傾げた。

 矢はそのまま飛んで虚空に消えた。


「避けた~!!」

『そりゃ避けるよ。あ、言っとくけど、攻撃もするよ、こっちは。

 あんたはそれを避けながら的確な威力の一撃を放つ。

 ちなみにさっきの炎の矢だと、火傷するね。

 当たっても良かったけど、スプラッタは見たくないだろ?

 さ、今度はあたしの番だ』

 

 ヒルダが右手を指鉄砲(ゆびでっぽう)の形にする。


『バン!!』

 

 ヒルダの人差し指から、直径10センチ程の雪玉が飛び出した。

 あずきは箒に乗ったまま避けた。

 ところが。

 ヒルダの雪玉は、ホーミングしてあずきのお尻に当たった。


「痛っ!!」

『バン!!バン!!バン!!バン!!!!』

「痛い!!」


 避けても避けてもホーミングしてきて、ことごとく、あずきの尻に当たる。


『速さと硬さを子供の雪合戦レベルにしてある。痛いはずが無いよ。

 頑張って避けな』


 ヒルダの言う通り、痛くは無かった。

 ただ、乙女のお尻に雪玉を、しかも連続してぶつけるという無慈悲な攻撃に、 

 あずきの怒りは頂点に達した。


「フランマ サジータ デュエット(炎の矢連弾)」


 あずきの杖から炎の矢が連続で飛び出す。

 まるでガトリングガンだ。

 心なしか普段より威力が倍増している気がする。

 

 炎の矢がヒルダに当たってその上半身が吹っ飛んだ。


「ひぃぃぃぃ!!」


 あずきがキレているのを見て、おはぎがドン引きする。


『だからダメだって。それじゃ相手が死んじゃうよ?逆、逆。威力を殺すの』

「!?」


 声に振り返ると、ヒルダは真後ろにいた。

 慌てて、炎の矢が当たったはずのヒルダを見る。

 氷像だ。

 してやられた。


「アグニ ステラ(火の星)!!」


 振り向きざまに呪文を唱えたあずきの杖から、火炎弾が飛ぶ。

 ヒルダが鼻歌交じりに火炎弾を避ける。

 と、またあずきのお尻に雪玉が当たった。 


『冷静になりなさいって』

「うるさい、うるさ~い!!」


 あずきは火炎攻撃を行い続けたが、そのことごとくが、空振りし続けた。

 肩で息をし始めたあずきを見て、おはぎが助言する。


「一回落ち着こうよ、あずきちゃん。これじゃ相手の思うつぼだよ?」

「おはぎ!!お尻に雪玉をぶつけられ続けた乙女の屈辱が、あんたに分かる??」

「そりゃ分からないけど、根本的に構成を変えないと、いつまで経っても、

 からかわれ続けるよ?」

「じゃ、どうしろってのよ!!」

「罠を張ろう。向こうは一人だけど、こっちは二人だってこと、忘れないでよ?」


 あずきたちが作戦会議をしだしたのを見て、ヒルダは空中浮遊を止め、

 地上に降りた。

 ヒルダが(ふところ)から何かを出して、雪に撒いた。

 そして、何ごとかを呟きながら右手の人差指を雪面に向けると、ボコっと

 雪面が盛り上がった。

 まるで、雪の下で生まれた何かの植物が、雪を割って顔を出すかのようだ。

 

 モコモコモコモコ……。


 だがそれは、植物ではなく雪の塊で、見る見るうちに、雪だるまに変化した。

 つぶらなその目は、ペットボトルのフタだ。

 ヒルダは、ペットボトルのフタを撒いたのだ。 


 生まれた雪だるまは一体では無かった。

 身長50センチはあろうかという雪だるまが、十体もいる。


『そろそろ作戦会議は終わったかい?』


 ヒルダの声に振り返ったあずきとおはぎは雪だるまの大群を見て唖然(あぜん)とした。

 ヒルダのやることだ、単純に雪だるまを作ったとは思えない。

 絶対こいつら動く。


『じゃ、戦闘再開ね。雪だるまたち、行きな!!』


 ヒルダの命に従い、雪だるまが一斉に動き出した。

 滑るような移動で、真っ直ぐあずきの方に向かってくる。

 飛べはしないようだが、子供のかけっこ程度の移動速度はある。

 馬鹿に出来ない。


 ペットボトル製の、つぶらな瞳を持った雪だるまの群れがあずきに迫る。

 と、その口がガパっと開いた。

 

 プププププ!!!!


 十体の雪だるまの口から、マシンガンのように、雪玉が吐き出された。

 あずきは慌てて、箒を発進させた。

 スピードを上げて、雪だるまとの距離を取ろうとする。

 

 と、いきなり雪だるまのスピードが上がった。

 滑るどころか、滑空だ。

 

 滑空して、あずきを追いかける雪だるまの群れ。 

 しかもその全てが、口から高速で雪玉を吐き出している。

 シュールなことこの上ない。


「追いつかれるよ、あずきちゃん!!」

「分かってる!!」

 

 あずきは箒で飛びながら、目の端でヒルダを見た。

 ニヤニヤしている。

 絶対負けないんだから!!


「おはぎ、作戦、大丈夫ね?」

「ま~かせて!!」

 

 おはぎがぶつぶつ呟き出す。

 あずきも箒を自動飛行にし、短杖(ウォンド)の中に心を潜らせた。

 暗闇の中で光を放つ四種の精霊の内、あずきは火の精霊に手を伸ばした。

 否、伸ばそうとして、手を止めた。


 あんた……太った?

 火の精霊だけ、他の精霊と比べ、明らかに一回り大きい。


 形も変わっていた。

 今まで火の精霊は、赤い球にしか見えなかった。

 他の精霊も同じだ。

 あずきには、色の着いた玉にしか見えない。

 

 だが今、火の精霊はトカゲのような形に変わっている。

 トカゲ型になった火の精霊が、つぶらな瞳であずきを見る。


 そっか、イフリートの力が宿ったからか。

 助けてくれる?

 あずきは再び、火の精霊に向かって手を伸ばした。


 一瞬の対話を終え、意識が戻ったあずきは、短杖(ウォンド)で素早く魔法陣を描く。

 あずきは箒を急停止し、雪だるまの群れに向き直った。


「フランマ パリエース オーベックス(炎壁結界)!!」

 

 ゴォッ!!!!!!


 あずきの描いた魔法陣から出た大量の炎が、高さ5メートルを超える

 炎の壁となって左右に伸びていく。


 雪だるまの群れは炎の壁に突っ込み、そのまま溶けた。

 ヒュ~~♪

 ヒルダが思わず口笛を吹いた。


『やるねぇ。で、どうする?雪だるまは対象外だから強攻撃しても構わないが、

 目的はあたしの、おでこの紙風船を割ることだよ?忘れちゃいないかい?』

「忘れて……ない!!」


 いつの間にか、あずきの放った炎の壁が一周し、直径100メートルの

 円となっていた。

 ちょうど、ヒルダの作った直径200メートルの訓練用結界の内側に

 出来た形だ。

 氷姫だけあって炎が苦手なのか、ヒルダは浮遊し、上空に逃げようとした。

 

 その瞬間、雨が振ってきた。

 違う。

 水じゃない。火だ。

 火の雨が降っている。

 まるで、線香花火の最後のような、優しい火の雨。

 地面に着いた途端にジュっと消える。


 ヒルダは呆然と上を見た。

 頭上50メートルという不自然な高さに雲があり、そこから火の雨が

 降っているのだ。


『何だ、これ……』


 次の瞬間、ヒルダの横から飛んできた火弾が、

 ヒルダのおでこの紙風船を割った。


『主人の炎壁結界の一部を、使い魔の雲に転送し、火の雨を降らせたか。

 それに気を取られた(すき)を付いての優しい攻撃。合格だ。』


 その声を聞き、炎壁結界と雲が霧散する。

 ヒルダが右手をあずきに向けて、指鉄砲(ゆびでっぽう)のポーズをする。


『受け取りな。バン!!』

 

 指鉄砲から雪玉が発射される。

 あずきはそれに向かって短杖(ウォンド)を差し出した。

 雪玉が短杖に吸い込まれる。

 杖の柄の部分にハマった青い宝石、ゴーレムの(コア)が脈動した。


『あんたの水の精霊は、これでパワーアップした。あたしの水の試練は

 これで終了だ。次の試練が待ってる。また会おう』


 ヒルダが手を振る。

 あずきも手を振り返した。

 次の瞬間、あずきはまた転移した。

火に続いて、水もパワーアップしました。

次はアレがパワーアップします。

次回も乞うご期待♪

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