表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あずきとおはぎと月の女王  作者: 皇 瑠奈
17/29

第16話 思いがけない再会

【登場人物】

野咲(のざき)あずき……12歳。小学6年生。日本の英国のハーフ。

おはぎ……黒猫。あずきの飼い猫。

西園寺響子(さいおんじきょうこ)……京都の呉服屋の主人。

 山をいくつか越えた辺りで、海が見えてきた。

 遥か前方に、港街が見える。

 結構大きそうだ。 

 

 1時間毎に休憩は取っていたが、そろそろ本格的に休憩を入れるか、

 と思ったところに出てきた街だ。 

 日の位置からすると、既にお昼を回っているはずだ。


 食人植物のところで思いがけず時間を取ってしまったから、暗くなる前に

 街が出てきてくれたのは、正直ありがたい。 

 宿泊も考えると、街の規模としては、ちょうどいい。

 あずきは街に向かってスピードを上げた。




 オレンジ色の屋根が沢山並んでいる。

 あずきは高度を落とした。

 港街だけあって、マリーナには船が沢山留まっている。

 ホテルらしき大きな建物も含め、全体的に白壁にオレンジ屋根を乗せた

 家が多い。

 教会や灯台、鐘楼といった高めの建物も、一揃いあるようだ。

 よく見ると、道もアスファルトだし、走っている車も最新の物ばかりだ。

 山を越えて、一気に文明圏に飛び込んだ気がした。


 あずきは、石畳が綺麗に敷かれた広場に降りた。

 その場で体を伸ばす。

 おはぎも箒から飛び降りて、体を伸ばす。


 「ねね、あれ!!あずきちゃん、あれあれ、見てみない?」


 おはぎがしっぽを振り振り、広場の隅に何台か停めてあるキッチンカーの

 方に向かう。


 「ちょっとおはぎ、迷子になっちゃうよ?勝手に行かないの、もぅ」 


 ため息を一つし、あずきも付いていく。

 

 でも正直、興味はあった。

 なにせ月のキッチンカーだ。

 どんなものを売ってるんだろう。


 どの店も盛況で、列が長く出来ていた。

 だが、内容はといえば、普通だった。

 いや、もちろん、車本体も、設置看板もおしゃれなのだが、売っているものは

 といえば、ハンバーガーやホットドッグ系の軽食肉料理や、ピザ、パスタ等の

 イタリアン、台湾屋台料理、エスニック料理、ドリンクやチュロス、クレープや

 アイス等のスィーツ専門店といった、日本でも見かけるものばかりであった。


「……ケバブ屋さん、あるね」

「たこ焼き屋さんもあったよ」

「……ここ、月だよね」


「観光地の屋台なんてどこだって同じよ。キライリ渓谷で見たでしょ?

 魚の塩焼き屋台」

「ひっ!!」


 不意に掛けられた後ろからの声に、あずきは反射的に飛び退った。

 見るとそこに、あずきと同じ制服を着た女の子が一人立っていた。

 涼しそうな目元。

 ストレートロングの黒髪。

 見るからにお嬢様然としていて、京人形のような美しさがある。

 

 あずきの目が校章に留まる。

 青だ。

 すると、魔法学校の生徒?

 

「驚かせてごめんなさい。わたしは西園寺祥子(さいおんじしょうこ)

 ルナリア魔法学校中等部の2年よ。祖母から連絡を受けて、ここなら

 会えると思って待ち構えていたのよ。読みが当たったわ」

「西園寺?って、まさか」

「えぇ、東京タウンで祖母を助けてくれたって聞いてるわよ。ありがとう」


 そうして見ると、西園寺婦人と雰囲気がとてもよく似通っている。

 夫人は、京都で呉服屋をやっていると言っていた。

 その孫たるこの人も、和服が似合いそうだ。

 

「祖母のお礼、というわけでもないけれど、せっかく観光地に来たんだから

 案内してあげる。クレープでも食べながら、ね」


 祥子がニッコリ笑った。




「ここはヴェンティーマ。ヨーロッパの港街に似てて、こちらでは結構有名な

 観光地なのよ」


 あずきと祥子は広場の中央に設置されている噴水の縁に腰を掛けて、

 クレープを食べた。


「後ろを見てご覧なさい。噴水の中央に彫刻があるでしょう?

 それは、月の女王ルーナリーアと賢者エディオンの像なのよ。

 賢者エディオンは知ってるわよね?」

「月と地球を繋ぐゲートを開いた魔法使いですよね」

「そう、そのゲートが繋がった月側の地がここ。ここで女王と賢者の初会合が

 開かれたの」


 噴水に目をやると、その中央に大理石で出来た二体の像が設置されていた。

 月兎族(げっとぞく)の若く美しい女性と、ローブを着て跪く老人だ。

 つまり、これが月の女王と賢者なわけだ。


 あずきは像に近寄った。

 賢者の顔を、まじまじと眺める。

 やがて、あずきは、ため息を一つついた。


「……そういうことか」

「え?なになに?どうしたの?あずきちゃん」


 足元でアイスを食べていたおはぎが、あずきを見上げる。


「ううん、何でもないよ」


 あずきがおはぎを見て微笑む。


 次にあずきは、月の女王の像に近寄った。

 こちらも、まじまじと眺める。

 女王は、足首まで隠れるロングドレスを着、その上に、長い毛皮のマントを

 羽織っている。

 背中まである長い髪。

 頭には、宝石がいくつもハマっている、精緻な意匠を施した王冠が乗っている。

 白一色の彫像ゆえ、実際の色がどんなだったかは想像するしかないが、

 とても素晴らしく、絵になるような会合だったのだろう。


 そして最後に。

 女王の胸が、ドレスを着てさえ分かるくらい、大きかった。

 あずきは苦笑いを浮かべた。


「後で、文句の一つも言ってやらなくっちゃね……」


 ボソっとつぶやく。


「時間はあるんでしょ?」

「え?」


 思わず物思いにふけっていたあずきは、祥子の問いかけに、ふと我に返った。


「この街にうちの別荘があるの。ちょうどいいから泊まっていくといいわ。

 おばあさまも来てて、あなたに会いたがっていたことだし。

 それに、制服もボロボロじゃない。ルナリア魔法学校は格式高いのよ?

 そんな汚れた格好のまま街をうろついていちゃダメ。

 明日は、いよいよルナリアタウンでしょ。

 その前に、うちで疲れを癒やしていきなさい」

「あ、あの、西園寺……先輩?」

「そうと決まったら、早速行きましょう。ついてらっしゃい」


 祥子が、いつの間にか出した箒に跨り、その場で上昇する。


「行くしかないよね」

「だね」


 あずきも箒にまたがり、空へと飛び上がった。




 西園寺家の別荘は、港街ヴェンティーマの山側に位置していた。

 周囲には別荘やホテルが立ち並び、夜ともなると、遠くの街の灯りが海にも

 写り、絶景を生み出している。


 こんな綺麗な夜景が見れて、しかもちょっとしたホテル並みの大きさの別荘だ。 

 案内された部屋も広く、部屋備え付けのお風呂も西欧風のバスタブで、

 とてもおしゃれだった。 

 

 観光地でこれだけの物件だ。

 日本でなら、ただ泊まるだけでも結構な金額が掛かるだろう。 

 あずきも、両親に連れられて、泊まりで旅行に行ったことがあるが、ここまで

 豪勢な部屋は、お目にかかったことがない。

 

 お風呂に入ってサッパリしたところで、晩ごはんを一緒にと、

 祥子が迎えに来た。

 夜6時だ。

 お腹もペコペコなわけだ。


 この別荘に来たときから、メイドさんやら執事さんやらの姿をちょくちょく

 見かけていた。

 この分なら、専属のシェフもいるはずだ。 

 これは期待出来そうだぞ。


 あずきは内心期待しながら祥子について食堂に行った。

 ところが、そこにいたのは……。


「あずきさん、よく来てくれたわね。どうぞ座ってちょうだい」

「おぉ、あずきちゃん、待っとったぞ!!」

「あらまぁ、あずきちゃん、ほんの数日で随分見違えちゃって」


 食堂で待っていたのは、あずきも見知った顔の三人の老人だった。

 東京タウンで会った西園寺婦人と、あと二人。

 それは、あずきの祖父『リチャード=バロウズ』と

 祖母『オリヴィア=バロウズ』だった。

 しかも、既にかなりお酒が入っているようで、三人ともかなりご機嫌だ。

 揃って顔を赤くしている。

 どれだけ飲んだのか。


「おじいちゃん!!おばあちゃん!!何でここにいるのよ!!」

「いや、なんでって、なぁ」

「ねぇ」


 顔を赤くした老人3人が仲良く笑っている。


 ウェイターが椅子を引いてくれ、あずきもテーブルに着く。

 祥子の隣だ。

 おはぎもあずきの足元でキョロキョロしている。


「ごめんなさいね、あずきさん、黙っていて。オリヴィアとリチャードは

 今日のお昼頃、こっちに着いたのよ。もう10年も会ってなかったから、

 嬉しくて、ついお昼っから乾杯しちゃってね。何杯飲んだかしら」


「いやいや、あずきちゃん、響子を責めてはいかんぞ。

 わしらも、あずきちゃんの様子を見にこっちに来たんじゃが、ふと響子の

 ことを思い出しての?

 ダメ元で訪ねてみたら居るんだもん。もう10年も会ってなかったから、

 嬉しくて、ついお昼っから乾杯しちゃってな。はて、何杯飲んだかの」


「あずきちゃん、二人を責めないでやって。

 響子のところには、居たら挨拶ぐらいしておこうかって程度の感じだった

 んだけどね?もう10年も会ってなかったから、嬉しくて、ついお昼っから

 乾杯しちゃって。えっと、何杯飲んだかしらね」


「旧交を温めている泥酔老人たちは放っておいていいわ。さ、食べましょ」

 祥子がバッサリ切って捨てた。


 


「で、なんでおじいちゃんたちがいるの?」


 お腹がいっぱいになって余裕が出来たあずきが問いかける。


「あずきちゃん、勘違いしているようだから教えてあげるが、別に見学が

 禁止されてるわけではないんじゃよ」

「へ?そうなの?」

「そうなのよ。介入は厳禁だけど、見学は構わないのよ」

「そうなんだ……。でも、どうやってここまで来たの?」

「どうやってって、わしら、個人用ゲートを開けるからのう」

「個人用ゲート?」

「これじゃよ」


 リチャードが懐からカードを出す。

 トランプ程度の大きさのカードで、表面は金地に六芒星が。

 裏面は何やら複雑な文字がたくさん書かれている。


「月の官庁発行のカードでの。こいつがあると、都市限定じゃが、ゲートを

 開くことが出来るんじゃ」


 あずきはパッとカードを引ったくり、まじまじと眺める。

 リチャードが慌てて奪い返した。


「ダメじゃよ、貴重なものなんじゃから。なかなか手に入らないんじゃよ?これ」

「おじいちゃん、持ってるじゃん」

「そりゃ、わし偉いもん。こう見えて、結構な実力者なのよ?わし」


 顔を酒で真っ赤にした酔っぱらい老人がエヘンと胸を張る。


「はいはい」


 あずきは祖父を軽くいなした。

 

 正直、その可能性も考えないでは無かった。

 というよりむしろ、その可能性を一番に考えていた。

 つまり、肉親の誰かが、密かにサポートしているのだと。

 けど、おじいちゃんたちがこちらに来たのは、今日の昼間だという。

 その発言を信じていいなら、だけど、この酔っぱらいっぷりを見る限り、

 嘘は無さそう。 

 

 なら、道中わたしを助けてくれたのは、別の誰かということになる。

 となると、やっぱり月の女王関係だよなぁ……。

 

 あずきは窓越しに、空に浮かぶ地球を見た。

 ちょうど、地球から空を見上げると月が見えるように、ここ月では地球が

 空に浮かんで見える。


 明日は、いよいよ、ルナリアタウンに到着だ。

 最終試練がどんなものか分からないけど、上手くすれば明日中には女王に

 会えるでしょ。

 焦らず行こう。


「わたし、先に部屋に戻るね。言ってももう遅いかもしれないけど、

 あんまり無茶飲みしないこと」

「は~い」


 泥酔老人たちが揃って声を挙げる。

 祥子が肩をすくめる。


 あずきは泥酔老人たちをそのままに、自室に戻った。

 


 

はい、次回いよいよ月宮殿のあるルナリアタウンへ・・・行けるかな?

乞うご期待♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ