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あずきとおはぎと月の女王  作者: 皇 瑠奈
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第14話 隠れ里を抜けて

【登場人物】

野咲(のざき)あずき……12歳。小学6年生。日本と英国のハーフ。

おはぎ……黒猫。あずきの飼い猫。

リーロイ……ブラウニーの男の子。ルーミィの兄。

ルーミィ……ブラウニーの女の子。リーロイの妹。 

ミーア……リーロイ、ルーミィの母。ブラウニーの隠れ里の魔法教師。

エメロン……リーロイ、ルーミィの父。工房の職人。

 翌朝。


 あずきがリーロイに起こされてリビングに行くと、既にそこには、

 一家が揃っていた。


 子どもたちは食事をしており、ミーアが甲斐甲斐しく食事の用意をしている。

 エメロンはといえば、部屋の片隅に置いてあるロッキングチェアに座って、

 コーヒーか何かを飲んでいる。

 二人共、いつの間に戻ったんだろう。


「おはよう、あずきさん。とりあえずそこに座ってくれる?

 今、朝御飯の用意をするから」


 勧められた椅子に座ると、お皿を2つ持ったリーロイがあずきの右隣に座った。

 皿を一枚、あずきの前に置く。

 続いて、お皿を持ってきたルーミィが、あずきの左隣に座る。


 リーロイ、ルーミィの兄妹たちは、それぞれに食事を終え、

 どんどん外に出ていく。


「ママのパンケーキ、上手いんだぜ?俺も半年ぶりに食うけどさ」

「今朝はわたしも手伝ったの。食べて。冷めないうちに、ね」


 兄妹に勧められて、目の前のパンケーキを見る。


 分厚い。

 パンケーキは三段重ねで、それぞれが4センチもあろうかという分厚いもので、

 丁寧にホイップされたふわふわの生クリームがたっぷり乗っており、その上から

 メープルシロップがふんだんに掛かっている。


「いただきま~~す!!」


 あずきはフォークで、ひと欠片取って口に入れた。


「美味しい!!」


 甘くて、ふわっふわで、フォークが止まらなかった。


「だろ?ママのパンケーキは絶品なんだから」

「なんでお兄ちゃんがイバってるのよ。ねね、ホイップクリームはわたしが

 担当したのよ。どう?」

「むがむがむが」


 ミーアママがフライパンを持ってやってくる。


「おかわり、あるわよ?食べる?」

「ん!!」


 三人揃って口の周りを真っ白に染めながら、競うように皿を突き出した。


「はいはい」


 ミーアママの苦笑を尻目に、三人はおかわりを食べた。




「さて、これがお嬢ちゃんの新しい杖だ」


 食事を終え、お腹いっぱいのあずきの前に、エメロンが杖を置いた。 

 あずきはテーブルの上の杖をそっと持ち上げた。

 上から、下から、横から、様々な角度から杖を見る。 

 

 長さは折れる前と、ほぼ同じだ。

 パっと見、先端部分にそれほど変わった様子は見られない。

 どうやって欠けた分の長さを補ったのか、見た目ではさっぱり分からない。 


 ただ一点、柄の部分に宝石がハマっていた。

 吸い込まれそうな(アオ)だ。

 これがゴーレムの(コア)だったのは間違いないだろう。


 試しに持ってみる。

 軽い。

 宝石が入った分、重くなると想定していたのだが、かえって軽くなっている。

 なんで??


「今まで、その杖は、誰でも使えるよくある『短杖(ウォンド)』だったが、

 調律してお嬢ちゃん専用にした。だから今その杖は、お嬢ちゃんにしか

 魔法の発動が出来ないようになっている。体の延長になってるから、

 重さも感じないはずだ」


 あずきの疑問を察したように、エメロンが解説してくれた。

 なるほど。

 

「杖に色々仕掛けを施したから、今までより魔法の発動までの時間も

 早くなっているし、引き出せる力も段違いに大きくなっているわ。

 慣れるまでが大変かもしれないけど、慣れると色々楽になるはずよ」


 コーヒーカップを持ったミーアが合流し、解説してくれる。


「ありがとうございます。何から何まで。わたし、なんてお礼を言ったら

 いいか……」


 エメロンとミーアが目を交わす。


「あずきさん、あなたはわたしの可愛い子どもたちを連れ戻してくれたわ。

 それだけで母親としては、十分、お礼をするに足りるの。ありがとう」


 ミーアが深々と頭を下げる。


「そんな。頭を上げてください」

「それと」


 ミーアがあずきの目を見る。


「これは魔法教師としてのカンなんだけど、あなたからとても強い運命力を

 感じるわ。普通、初心者魔法使いがこのタイミングでここまで強力な杖を

 得ることはまず無いんだけど、多分、あなた自身の運命力が、この先の危険を

 察知し、強力な杖を求めたんでしょう。


 月の女王は、それぞれのレベルに合った試練を課すわ。

 だからあなたを待ち受ける最終関門は、相当強力なものになるはず。

 最後まで油断せずに進みなさい」

「は、はい」

 

 あずきは杖を握った。

 強い力が流れ込んでくる気がする。

 前の杖は、持ってるだけ感が強かったが、今度の杖は、言われた通り、

 手の延長のような感覚がある。

 とてもよく馴染む。


 キライリ渓谷は、東京タウンとルナリアタウンのほぼ中央に位置している。

 であるならば、ルナリアタウンはもう、目と鼻の先だ。 

 ゴールは近い。 


 月宮殿地下のダンジョンという最後の試練が待っているとしても、

 旅の終わりが間近に迫っていることは間違いない。

 気を抜かず、最後まで完走しよう。

 あずきは決意を新たにした。


 キライリ渓谷前駅まで見送りに来てくれたリーロイとルーミィと別れてから、

 あずきはあえて、鉄道に乗らない選択をした。


 距離を考えれば、箒で移動しても、明日には目的のルナリアタウンに

 着けるだろう。

 この日までに着かないと失格、なんて話はされなかったので、ここからは

 慌てずに行こうと思ったのだ。

 

 東京タウンからキライリ渓谷まで駅は幾つもあった。

 駅毎にそれなりの大きさの街が併設されていたので、この先も同じように

 街があるに違いない。

 線路に沿って飛べば迷うこともないだろうし、面白そうな街があったら

 寄ってくのもありかもしれないし。




 箒が軽い。

 あずきは高度を取って飛んだ。

 眼下には、山と山の隙間を縫うように、線路と道路が走っている。 

 

 風の精霊が力を貸してくれるお陰か、ぶっ続けで飛んでても、

 思ったほど疲れを感じない。

 ただ、疲れは感じないが、同じ姿勢を維持してたからだろう、体は凝った。

 そろそろ休憩取りたいな。


 そんな時だ。

 不意に甘い香りがした。

 おはぎも気付いたらしく、ビクっと体を震わす。

 風を纏って飛んでいるはずなのに、匂いに気づくなんて……。


「あずきちゃん!!あれ見て、あれ!!」


 箒の先端に乗ったおはぎに促され、10時方向の山を見る。

 そこに瑠璃色の絨毯があった。


「何あれ……」

「お花畑だね。匂いの元はあれっぽいね」

 

 山を切り拓いて作ったのか、300メートル四方程の、一面の花畑があった。

 ため息が出るくらい見事に、瑠璃色が咲き誇っている。

 これだけの花が咲いていれば、そりゃ匂いもするか。

 あずきは進路をそちらに向け、高度を徐々に落としていく。


「ラベンダー畑かな」


 あずきもこれでも女の子だけあって、一面のお花畑を目にし、

 気分が高揚してくる。

 

 あずきは駐車場に降りた。

 駐車スペースが結構埋まっている。

 観光名所となっているようで、思った以上に人がいるようだ。

 よく見ると、花畑の中に遊歩道が整備されているようで、

 皆そこでしきりに写真を撮っている。


「アイスクリーム屋があるよ。ボク食べたいなぁ」

「おはぎ~~。……ナイスアイデア!!」


 あずきはアイスを注文しようと、屋台に近寄った。

 屋台の看板に『レモラソフト 200ルーン』と書かれている。


「レモラ?ラベンダーじゃないの?」

「ん?あんた、地球の人かい?」


 屋台のお兄さんの問いにあずきが頷く。


「レモラってのは、月特産の花でね。まぁでも、見かけも匂いもラベンダーに

 似てるといえば似てるかな。匂い、いいだろ?安眠グッズの材料になったり、

 これで染め織物を作ったりもするんだよ。アイス、食べるかい?」

「一つ下さい」

「一つね。お嬢ちゃん可愛いから、一つ100ルーンでいいよ」

「やった♪」


「美味しい!!」


 あずきはおはぎと遊歩道のベンチに座り、分け合ってアイスを食べた。

 レモラソフトは、青みがかったソフトクリームだった。

 微かにレモラの要素が入った感じはするが、味はごくごく普通だ。

 でも、観光地で食べる高揚感からか、美味しさが倍増している気がする。


「スマホ、持って来られれば良かったのにね」


 周りの観光客を見ながら、おはぎが言う。


「パジャマのまま来ちゃったもんね。でも、撮ったら撮ったで、

 見せること出来ないってのもあるし」

「お友達に行き先答えるわけにもいかないか」


 ちょっとだけため息。


 山間を流れる爽やかな風が、あずきの髪を揺らす。

 レモラの花も微かに揺れている。

 日が照っているせいもあって、ポカポカと暖かく、心地よい微風が頬を撫でる。

 いい気持ち……。


「ボク、眠くなってきちゃった」


 おはぎがベンチの上で一つ伸びをすると、丸くなった。

「ふわぁ……」


 あずきも連日の疲れのせいか、眠くなってきた。


「30分だけね」


 あずきはベンチに座ったまま、目を閉じた。



お花畑は、わたしが行ったことのある幾つかの場所をミックスした感じです。

あぁいうところのソフトクリームは、なんであんなに美味しいんでしょうね。

さて、次回は、あずきたちがお昼寝から起きた後のお話です。

乞うご期待♪

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