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あずきとおはぎと月の女王  作者: 皇 瑠奈
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第13話 あずきはレベルアップした♪

【登場人物】

野咲(のざき)あずき……12歳。小学6年生。日本と英国のハーフ。

おはぎ……黒猫。あずきの飼い猫。

リーロイ……ブラウニーの男の子。ルーミィの兄。

ルーミィ……ブラウニーの女の子。リーロイの妹。 

ミーア……リーロイ、ルーミィの母。ブラウニーの隠れ里の魔法教師。

 あずきは、湖を背に、桟橋に立った。

 岸から10メートルは離れている。

 いざとなれば、湖に飛び込めばいい。


 すぐ横に、エプロンを付けたブラウニーが立っている。

 リーロイとルーミィの母にして、ここ、ヴェルビアの森の魔法教師、ミーアだ。


「あの子は遊んでいるだけ。今までもこういうことはあったわ。だから延焼とかの

 心配はしなくていい。それよりも、魔法のコントロールに専念するのよ」

 

 あずきはミーアの声にうなずく。

 大きな魔法を行使するときは、体の中の魔力だけでは賄いきれない。

 沼地での戦闘で息切れしたのは、まさにこれだ。

 人一人の魔法量など、たかが知れているのだ。


 体の中の魔力は起爆剤とコントロール用として使うだけで、魔法そのものは、

 自然界に溢れる魔素(マナ)を使用する。


「さ、集中して。知覚を拡散させて」


 ミーアの声を聞きながら、あずきは目を閉じた。

 体という境界線を薄めて、そこから知覚を伸ばしていく。

 自分と世界を一体化させる。

 あずきは、光も音も消えた世界で、全ての感覚が希薄になり、広がっていく

 のを感じた。


「そう、それでいい。次に精霊の気配を探って。今、力を借りたい精霊は?」


 あずきは考える。

 今必要なのは、水の精霊の力だ。

 ちょうどそこに湖がある。


 不意にあずきは、体内の魔法核(コア)が開くのを感じた。

 次の瞬間、自分が様々な精霊に囲まれていることに気付く。

 木にも、岩にも、湖にも、そこかしこに様々な精霊がいる。


「無事繋がったみたいね。その感覚、忘れちゃダメよ。一度繋がったから、

 次からは楽に繋がるはず。さ、精霊と対話するのよ」


 あずきは暗闇の中で水の精霊を見つけた。

 そちらに向かって手を伸ばす。

 力を貸してくれる?

 精霊がうなずく。


「イグナイテッド(着火)!!」


 あずきは魔法核(コア)を起動した。

 直結した水の精霊の力が一斉に流れ込んでくるのを感じる。

 溺れる!!

 ミーアがあずきの手を強く握った。


「落ち着いて。弁を作って出力をコントロールするの。だんだん自分の許容量が

 分かってくるわ。慌てなくていい」


 あずきはゆっくり出力を絞った。

 よし、このくらいなら、何とか扱える。

 目を開ける。


 あずきの知覚が、森の奥で飛んでいる小火竜ベビーファイアドレイクを感知する。

 殺してはいけない。

 ブラウニーの工房の大切な火種だ。

 気絶に留めなくては。


「アクア サジータ デュエット(水の矢連弾)!!」 


 湖から水の矢が10本ほど飛び出した。

 遠隔操作だ。


 狙い通り、小火竜に向かって水の矢が飛んでいく。

 

「ポップ(弾けろ)!!」


 あずきの放った水の矢は、火竜の手前で弾けた。

 通常は貫く攻撃だが、火竜に当たる直前、つぶてに変わった。 

 とはいえ、相当な速度が付いた散弾なので、かなり痛いはずだ。


 案の定、こちらの存在に気付き、怒りの咆哮をあげる。

 ベビーとはいえ、なかなかの咆哮だ。

 怒り狂った火竜が急接近するのを感じる。

 

 目視で確認出来る距離まで来て、火竜が空中で停止する。

 その場で羽を羽ばたかせてホバリングしているのが見える。

 口を開け、大きく息を吸い込む。

 ブレスが来る!! 

 

 ドン!!


 巨大な火球が飛んでくる。

 森の中で食らったブレスより大きい。

 見る間に火球が接近する。


「アクアデウス マヌス(水神の手)」


 あずきの呪文に応じ、湖から手が1本、ぬっと生えた。

 水で出来た右手。

 ただしその大きさたるや、指の1本1本が2メートルを超えるレベルだ。


 迫りくるブレスに対し、あずきは無造作に右手を振った。

 あずきの動きに合わせるように、湖から生えた巨大な水の手がブレスを

 叩き落とした。


 火球が湖に落ち、大爆発する。

 10メートルを超える水柱が上がり、辺りに水しぶきを撒き散らす。

 幸いにも岸から離れているので、被害は無い。


 続けて2発目、3発目が来るが、水の手で全て叩き落とした。

 

 火竜のオーラの色が変わっている。

 あずきは注意深く火竜を観察した。

 息切れしている?

 ならば。

 

 あずきは右手を火竜に向かって伸ばした。

 湖から生えていた水の手が、あずきの腕の動きに合わせ、火竜に向かって

 伸びていく。

 水の手はそのまま火竜の横を通り抜け、後ろを回り込んだ。

 次の瞬間、あずきは右手を思いっきり振った。

 

 バッチーーン!!

 

 水の手による平手打ちだ。

 火竜は凄いスピードで、湖に叩き落された。

 火竜はやがて湖面に浮き上がってきたが、ピクリとも動かなかった。

 気を失っているらしい。


「いっけない、やりすぎたかも」

「拾ってあげましょう」


 あずきとミーアは、停めてあったボートに乗り、小火竜ベビーファイアドレイク

 回収に向かった。




 その晩、あずきはミーア宅の食事に呼ばれた。

 とにかく人数が多かった。


 食事会は最初から最後まで騒々しく、その迫力に圧倒された。

 そこであずきは、一際大きいブラウニーを紹介された。

 それが一家の大黒柱、工房の職人にしてミーアの亭主、エメロンだった。

 

 父のエメロン、母のミーア、プラス10人程の子どもたち。

 程、というのは、子どもたちが誰一人じっとしていなかった為、把握が

 出来なかったからだ。


 特に、猫が珍しかったらしく、おはぎは滞在中、家の中をずっと追いかけ

 回されていた。

 

 結局あずきには、実際に何人居たのか、最後まで分からなかった。

 分かったのは、あずきが東京タウンで保護したリーロイとルーミィが

 兄妹としては真ん中くらいだったということくらいだ。


 まぁ、これだけ居たら、一人や二人居なくなっても、あんまり気にしない

 んだろうな、などと、あずきはちょっと失礼なことを考えたりもした。


 食後、あずきはエメロンの案内で工房に行った。

 エメロンだけでなく、ミーア、リーロイ、ルーミィも付いて来た。


 工房は洞窟の中にあった。

 体育館くらいの広さの場所に、いくつも窯が置かれ、その全てに

 火が入っている。

 夜だというのに、それぞれの窯の前で、火除けの分厚いエプロンを付けた

 ブラウニーが幾人も仕事をしている。


 工房の中ほどに柵があり、その横を通り過ぎる。

 柵の中では小火竜ベビーファイアドレイクが何匹か寝ていた。

 近寄って見てみたが、逃げ出した火竜がどれだかあずきには分からなかった。

 

「どれ、杖を見せてごらんなせぇ」


 奥の方にあった窯の前で、火除けエプロンを付けたエメロンに促され、あずきは

 杖を差し出した。

 これがエメロン担当の窯なのだろう。 

 あずきには窯の良し悪しは分からないが、その窯が、相当に年期が入っている

 ことは分かった。

 

 あずきは改めて杖を見た。

 先端がバキバキに弾け飛んで、見るからに痛々しそうだ。


「おばあちゃんに貰った大切な杖なんです。直りますか?」


 エメロンは様々な角度から杖を眺めていたが、やがてため息を付いた。


「全長50センチの杖で先端10センチも無くなってやがる。こりゃ復活は

 無理だな」

「そうですか……」


 さすがにショックだった。 


「ねぇあなた。欠損部分の修復は出来なくても、何か別のもので補うことは

 出来ないかしら」

「それなら出来ないことは無いが、さて、何で補うかだな」


 エメロンとミーアが考え込む。


「ねね、あずき、あれ、どうした?」

「あれ?」

「ほら、警察署で見せてくれたろ?何かの爪だか牙だか。あれ出しなよ」

「あぁ、あれ?あんなの役に立つの?」

「触媒ってやつ。きっと使えるよ」


 リーロイに言われ、あずきはゴソゴソ、ポケットを探った。

 

 地の気。森の案内人、リリィの飼っていたラクのツノ。

 水の気。水蛇ストーシーの牙の欠片。

 風の気。飛竜ワイバーンの爪。

 火の気。湖で見つけた、小火竜ベビーファイアドレイクの牙の欠片。

 そして最後に、青い宝石、ゴーレムの(コア)

 あずきはそれらを、窯の脇に設置されていたテーブルに置いた。


「これは……エレメント4元素が全て揃ってやがる。おまけにブースターまで」


 エメロンが絶句する。


「いけそう?」


 ミーアが心配そうにエメロンを見る。


「お前の助けがあればな。だが、この子に扱えるかな」

「大丈夫よ。この子なら使いこなせるわ。わたしの魔法が必要なんでしょ?

 手伝うから、お願い」


 エメロンは一つうなずき、リーロイを見た。


「リーロィ、あずきさんをパパとママの寝室に案内してやってくれ。今夜は

 そこで寝てもらおう。ちょいと大仕事になるから、パパとママは今夜は

 帰れないからな。くれぐれも頼んだぞ」

「え?え?そんな!!いいです、いいです。そんなにしてもらうなんて

 申し訳ないです」

「リーロイとルーミィの恩人だ。それくらいさせて貰ってもよかろうよ。

 明朝には渡せるから、家でゆっくり寝ててくだせぇ」


 エメロンとミーアが揃ってうなずく。


「行こう、あずき。パパとママの邪魔しちゃいけない。ここからは職人の

 真剣勝負が始まるんだから」


 あずきはリーロイとルーミィに手を引かれ、工房を出た。

 

 あずきは改めて隠れ里を見渡した。

 暗い夜の世界を照らす、森のあちこちに生えた淡く光るキノコ。

 上空、木々の間から見える星の瞬き。

 そして家々の明かり。

 夢の中の世界みたい……。


 幻想的な風景に思わずため息が出た。

 こんな風景、学校の友達は見たことないんだろうな。


 数日前まで自分が属していた世界とは、まるで違う世界に自分は居る。

 カメラ、持ってくれば良かったな。

 そんなことを思いながら、あずきはリーロイとルーミィの家に向かった。


あずきが精霊との対話を果たし、より大きな魔法を使えるようになりました。

魔法の幅が広がります。

そして、杖は無事直るのでしょうか。

次回も、乞うご期待♪

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