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あずきとおはぎと月の女王  作者: 皇 瑠奈
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第12話 え?あれ?隠れ・・・里?

【登場人物】

野咲(のざき)あずき……12歳。小学6年生。日本と英国のハーフ。

おはぎ……黒猫。あずきの飼い猫。

リーロイ……ブラウニーの男の子。ルーミィの兄。

ルーミィ……ブラウニーの女の子。リーロイの妹。

 ブラウニーの隠れ里は、キライリ渓谷の深奥部を更に進んでいったところに

 あるという。

 結界に阻まれ、普通の人は近寄ることさえ出来ない。

 

 彼らブラウニー族は、普段、森の隠れ里に棲んでいるが、半年に一度だけ都会に

 交易に出てくる。


 彼らの持ってくるのは、木工細工や宝飾品だ。

 手先が器用な為か、その製品はとても見事な出来となっており、高値で売れる。

 そうやって彼らは、半年に一度、普段森で得られない都会産のものを入手して

 帰っていく。 

 少なくともあずきはそう聞いていた。


 だが、隠れ里への入り口となるキライリ渓谷駅で降りたあずきたちの眼前に

 広がる光景は、想像とまるで違っていた。


 まず、キライリ渓谷駅で降りる人が想像以上に多かった。

 駅を出ると、顔出し看板を店頭に置いた観光案内所があり、土産物屋や飲食店が

 これでもかと並んでいる。

 それを横目に見ながら、皆ぞろぞろと、渓谷に掛かった吊り橋を目指して歩いて

 いく。


 いわゆる映えスポットのようで、吊り橋の上では、観光客がしきりに写真を

 撮っている。

 吊り橋のたもとには川に降りる階段があり、そこを降りていくと川下り用の船が

 待機している。

 そこも順番待ちで、長蛇の列が出来ている。

 家族で来ている観光客など、パパを川下り船の列に並ばせ、

 ママと子どもたちは、近くに設置された屋台で魚の塩焼きを購入している。


 何に驚いたって、観光案内所で観光客相手に説明をしているのも、土産物屋の

 呼び込みをやっているのも、飲食店で働いているのも、川下りの船頭をやって

 いるのも、みんな身長1メートルにも満たない茶色い毛玉のかたまり。

 つまりブラウニーだったということだ。


「これ、ひょっとして観光部族ってやつかな」

「何それ」


 小声のあずきに、おはぎが呼応する。


「普段、文明的な生活をしてるんだけど、観光客が来たときだけ、それっぽく

 振る舞う人たちのこと」

「何の為にそんなことするのさ」

「そりゃ、先祖が残した観光資源を維持する為によ。生活掛かってるもん」

「世知辛い話だなぁ」


 おはぎがため息をつく。


「ダムダおじさん!!」


 突如、あずきの送ってきたブラウニー兄妹が走り出す。

 二人して、上半身が法被一枚、下半身は白のふんどしのぬいぐるみ、もとい、

 船頭に抱き付いた。


「うぉ?リーロイとルーミィでねぇが。お前らしばらく見てながったが、どこか

 行ってただか?」


 二人してわんわん泣きながら抱きついている。


「こら、二人とも落ぢ着けって。分がった、分がったから」

「あの、もしかして、この二人の親戚の方ですか?」


 あずきが近寄る。


「はぁ。んだすが、あんたは?」

「良かった。わたし、東京タウンで置いてけぼりになってた二人を送って来た

 んです」

「あんれまあ。そいづはどうも。甥と姪がすっかり世話になっぢまったようで」

「いえいえ。無事お届け出来て良かったです。ではわたしはこれで。リーロイ、

 ルーミィ、元気でね」


 あずきは兄妹に小さく手を振り、駅に向かって歩き出した。


「待った待った。恩人をこのまま帰すわけにもいがねぇ。せめてこいつらの家に

 寄ってってけろや」

「そうだよ、あずき。お父さんの技術、見てってよ」

「そうだよ、あずき。お母さんの料理、食べてってよ」


 あずきはリーロイとルーミィに強引に手を引っ張られ、船着場まで来た。

 あずきは、こういう強引なタイプに弱くもあるのだが、実は密かに、

 ブラウニーの生態にも興味があった。

 どんな家に住んでいるのか、どんな暮らしをしているのか、

 とても興味があった。


「あれ?こっちの船じゃないんですか?」


 あずきの乗せられたのは、川下り用の船体が長いタイプの木舟では無かった。

 木製ではあったが、もう少し小さな、4、5人乗りのモーターボートといった

 感じの船だった。


「あぁ、あれは観光客用だでな。ちょっと狭いかもしれんが、勘弁してけろ」


 ダムダが操縦席に着く。

 手慣れた様子でハンドルを動かし、船を走らせる。

 あずきは魔法の反応を感じた。 

 船尾にモーターが付いている様子は無いので、何らかの魔法で動かしている

 のだろう。


 あずきの乗った船は、川下り船と同じコースを辿った。

 川下り船は、ちゃんと竿を使って船を操っているようだ。

 船頭が茶色いぬいぐるみであることを除けば、観光地の川下り船と同じだ。


 ちょうど並走した川下り船の観光客が、あずきたちに向かって手を振る。

 あずきも何だかテンションが上がって、観光客に向かって手を振り返した。

 しばらく並走した後、本流を行く川下り船と別れ、ボートは支流に入った。


 船の幅は2メートル程度だ。

 川幅がどんどん狭くなる。

 両岸に茂る葦が壁を作り、視界をどんどん奪っていく。

 やがて葦は頭上まで覆い、完全にトンネルと化した。

 

 いい加減息苦しさを感じた頃、ふっと視界が開けた。

 そこは湖だった。

 湖の端にある船着き場で船を降りると、眼前には森が広がっていた。

 地上に、樹上にと、いくつも木製の小屋が建っており、それを沢山の吊り橋や

 ハシゴが繋いでいる。

 森の中なので全体的に暗いが、そこかしこに生えているキノコが淡く光を放ち、

 ある程度の明るさを確保している。

 幻想的な風景が広がっていた。

 

「ただいま!!」


 兄妹は、樹上にある小屋の一つの扉を勢いよく開けた。

 小屋の中に居たのは、10匹以上のぬいぐるみ、否、ブラウニーだった。


「リーロイ!!ルーミィ!!」


 一際大きく、白エプロンを付けたぬいぐるみが叫ぶ。


「リー兄ちゃん!!」

「リーロイ!!」

「ルー!!」

「ルー姉!!」

「ルーミィ!!」

「兄ちゃん!!」

「リー!!」

「姉ちゃん!!」


 ぬいぐるみが一斉に叫んで抱きつく。

 もみくちゃだ。

 ぬいぐるみがぐちゃぐちゃの山となって動いている。

 この中に入ったら、ふかふかのもふもふで、暖かいだろうか。 

 などとあずきが妄想した瞬間、外から大きな爆発音が聞こえた。

 

 あずきが慌てて小屋から出ると、他の小屋からも一斉にブラウニーが

 飛び出ていた。

 皆の視線が森の奥の集中している。

 あずきも目を凝らす。

 100メートルほど離れたそこには、洞窟があった。

 その入り口から、もうもうと煙が出ている。


「あそこは何です!?」

「あれは工房だわ。魔法の暴走かしら」


 次の瞬間、洞窟の入り口から火の玉が飛び出てくる。

 いや、違う。

 生き物だ。

 体長1メートル程しかないが、長い首、かぎ爪の付いた羽、火をまとった

 ドラゴンだ。

 

「工房の小火竜ベビーファイアドレイクだわ」

「火竜?」


 あずきは隣にいたブラウニーを見る。

 エプロンを付けたぬいぐるみがいる。 

 リーロイとルーミィの母親だ。


「工房の火起こしに飼っている火吹き竜で、成体になると、金属をも溶かす

 火の息(ブレス)を吐くの。直撃を受けたら火傷では済まないわ」


 あずきは上空に目を凝らした。

 火竜と目が合う。

 そりゃそうだ。

 ぬいぐるみだらけの森で、一人だけ異質な生き物がいるのだ。

 目につくに決まっている。


 あずきの遥か上空で、火竜が思いっきり息を吸い込んだ。

 一瞬で背筋が凍った。

 火の息(ブレス)が来る!!

 

「アクア パリエース!!(水の壁)」


 隣にいたブラウニー母と呪文がハモる。

 

 ドーーーーーォォォォォォン!!!!!!

 

 想像以上に激しい衝撃が来た。

 立って防御壁を張ったはずが、あまりの威力に片膝をつく。

 ブラウニー母とで二重に張った水の防御壁が一瞬で霧散した。


 パキーン。

 

 あずきが持ってた杖の先端が弾け飛んだ。

 起こった事象を理解出来ず、あずきはその場に棒立ちになった。


「逃げるわよ」


 ブラウニー母があずきを強引に引っ張り、その場を離脱した。

 



 雨が降っている。

 森があちこちで燃えているが、雨のおかげで、いずれは鎮火するだろう。

 火竜がブレスを吐くのをやめれば、だが。


 あずきは他の大勢のブラウニーと一緒に、湖のほとりに避難していた。


「大丈夫?お嬢さん」

「あ、はい。何とか……」


 ブラウニー母が、湖で濡らしてきたハンカチで、あずきの顔を拭いてくれた。

 ハンカチが黒く汚れる。

 ススが顔に付いていたのだろう。


 あずきは杖を見た。

 欠けたのは先端から10センチ程だ。

 思わずため息が出る。


「改めて、息子たちを連れ帰ってくれてありがとう、お嬢さん。わたしはミーア。

 あずきさん、でいいのよね?」

「はい。こちらも、助けて頂いてありがとうございます。ミーアさん」


 ミーアの周囲に子どもたちが集まる。

 皆、不安そうな顔をしている。


「魔術師たちが降らせた雨だ。これ以上の延焼はしないはずだよ」


 隣に来たリーロイが森の方を指差す。

 森の入口に、白のマントを来たブラウニーの集団がいる。

 彼らが雨を降らせているのだろう。

 だが、今なお、森のどこかに火竜がいて、ブレスを吐きまくっているのだ。

 何とかしなくては。


「あずきさん、あなたの魔法、さっき見たけど、体の中の魔力を使っていたわね」

「そう……ですけど。何か変でした?」

「変じゃないわよ。初心者特有のやり方だってだけ。でもそのやり方だと、

 いずれ息切れするわ。次のステップに進みましょう」

「ミーアさん、あなたは一体……」

「わたしね、ここ、ヴェルビアの森で魔法教師をやっているの」


 ミーアママがニッコリ微笑んだ。


ブラウニーは『イウォーク』とか『テッド』をイメージして書きました。

あんなぬいぐるみが森の中をワチャワチャしてたら楽しいかな~って。

皆さんも、そんな感じをイメージしていただけたら。


さて、今回、あずきの杖が折れてしまいました。

さぁ、どうなるのでしょうか。

乞うご期待♪

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