ダンジョンの名前はオバケヤシキ。デートのお誘いだと気づいてくれない騎士にアプローチしてます
まだ付き合っていない2人の冒険者のお話です。
軽ーいお話です。
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「いい?このダンジョンを攻略するのは大変よ?」
とカメイラが言った。
「なぜ大変なんだ?」
とキースが聞く。
カメイラは、ちょっと不安そうな顔をしながら
「ここはね、オバケヤシキってダンジョンよ。はじめて聞くダンジョンでしょ?ここはね、現れたモンスターを倒してはダメなの。
殺人になってしまうから。
その時点で攻略失敗。
最後まで辿り着けずに入り口に戻るの。
入り口に戻ってしまうと、二度とこのダンジョンには入れないわ。」
「モンスターを倒したらなぜ殺人になるんだ?」
とキースは聞く。
「それはモンスターじゃないからよ」
「…意味がわからない。」
「それからねやっちゃいけない事があるの。、泣いたり叫んだり、パーティのメンバーにチョッカイかけたらりしたらダメ。
モンスターの思うツボよ。
常に平常心…。
なんせこのダンジョンのモンスターは襲っては来ないの。
目の前に来て驚かすだけ。
それで満足して帰っていくの」
「そのモンスターは何がしたいんだ?」
「…さあ?よくわからないわ。目の前にすらこないモンスターも多いのよ。
ただ自分に注目してほしいだけみたい。」
「…パーティーを組まなくても、本当に俺たち2人で大丈夫なのか?」
「ええ!大丈夫よ!行きましょう」
2人はダンジョンの前に来た。
ダンジョンの前には、何故かカップルの冒険者が多い。
入り口には、そんな冒険者達に話しかけている女性がいた。ギルドの受付嬢のようだ。
「順番に並んでくださーい。割り込みはいけませんよ?」
と言いながら、冒険者をさばいていく。
「パーティーを組んで来ている冒険者がいないなぁ。男女2人で入ると攻略しやすいのか?」
「そうみたいね」
とカメイラ。
「次の方〜」
とカメイラとキースが呼ばれた。
「お二人様ですね?銀貨2枚になります」
カメイラが支払いをする。キースはダンジョンに入るのにお金を取られる事にびっくりしていた。
「注意は読まれましたか?出てくるモンスターに触れたり、殺したり、武器をむけては絶対にいけませんよ?あと、前を歩く冒険者に近づき過ぎてもいけません。」
と受付嬢に注意を受けて中にはいる。
中は薄暗くてあまりよく見えない。
松明は禁止と言われたため、暗がりを探るように歩く。
迷子にならないようにキースはカメイラの手を掴んだ。
ゆっくり歩いていくとテンションの高いゾンビが突進してきたが、眼の前で威嚇してきたあとは普通にすれ違った。
よく見ると、井戸がある。
建物の中なのに…。
井戸に近づくと、ミイラ化した貴族のお嬢様が這い出そうとしたまま息絶えたような跡だった。
あまり近づきすぎてはいけないようで、侵入禁止の札が貼られていた。
カメイラは恐ろしくなったのかキースの手を強く掴んできた。
「なんだここは!何故ダンジョンにミイラ化した遺体が…。」
「わからないわ。でも、ちょっと不気味…」
口元を押さえて悲しそうな顔をしているカメイラが暗がりの中でぼやけて見えた。
先を進むと、森の木で首吊りをした王族のミイラや、
玉座に座ったままミイラになった王族の横を通り過ぎた。
「ここは昔、王宮だったのか?それにしては玉座が突然出てきたけど…。」
不思議そうにしているキース。
そうしているうちにアンデッドが出てきた。
剣に手をかけるキース。
「ダメよキース!剣を抜いたらこのダンジョンは攻略できない」
アンデッドは、冷たい氷のような息を吐き、私達の周りをぐるぐる回った。
襲われたらひとたまりもない。
キースは抱きとめてアンデッドから守ってくれた。
アンデッドはキースと目を合わせ、しばらく睨み合いをした後、大きく口を開け、襲う…かと思いきや去っていった。
その後は、何体かのアンデッドとすれ違ったが、皆すれ違いざまで威嚇してくるだけだ。
アンデッドが出てくるゾーンには、昔襲われたであろう人の服が転がっていた。
今流行りの洋服のような鎧ではなく、昔の甲冑や、服や靴。それらが、落ちていた。
更に進んでいくと、真っ暗闇になり、暗闇の中で、後方が少し明るくなった。
振り返ると、沢山のゾンビが出てきた!
どこからともなく、
「走れ!捕まったら負けだ!」
と聞こえた!
まだ新米冒険者のカメイラは足が遅い。
キースはカメイラを抱えて全力で走った。
すると、一瞬閃光が光り、更に走ると出口になった。
出口にはギルドの受付嬢が立っていた。
「ありがとうございました!こちらは攻略の記念品です」
とハート型のクッキーが二枚入った袋を渡された。
出口横には、何故か、ゾンビに追いかけられて走る冒険者達の写真が貼られていた。
写真は、どれも冒険者2人がたくさんのゾンビに追いかけられている写真だった。
やはりどの冒険者もカップルで、何組かは手を繋いで走っている。
端っこには、キースとカメイラの写真もあった。
キースがカメイラを抱きかかえてゾンビに追いかけられて走っている写真だ。
「先ほどの事なのになぜ写真が…しかもなぜ、ハートの紙でデコレートされ『本日のベストショット!』と書かれているんだ?」
とキース
カメイラは、受付嬢を呼び止め、
「この写真買います!」
と言って、お金を払っていた。
「ステキな写真ですね」
と受付嬢。
ゾンビに追いかけられている写真が何故ステキなんだ?
疑問は尽きない。
「キースと攻略できて楽しかったわ!初めて手を繋いでもらえたし。それに初めて抱きしめられたの」
と赤くなりながら話すカメイラ。
そのはにかむ姿は、可愛い女の子のものだった。
「…新人冒険者を守るのは先輩の役目だからな!」
そんなキースを上目遣いで見るカメイラ。
キースはカメイラの手をそっと握った。
「帰りになんか食べるか?少しお腹すいてないか?」
とキースが聞くと
嬉しそうな顔をするカメイラ
「ケーキが食べたいわ!」
2人は街に向けて歩き出した。
「キースって好きな人いないの?」
「バカ何聞くんだよ!」
「だってモテるでしょ?」
「モテないよ! 」
「えーでも…じゃあ彼女はいるの?」
「いないよ。生まれてこの方、彼女はできた事がない。」
「なら23年彼女なしかぁ。」
「そうだよ。わるいか?
そもそもだな、彼女がいたら人前で手なんかつなげるか!」
「…そうなの?キース学生の時からモテたのに気づかなかったのかぁ」
「そんなわけ!皆俺に近づきたがらなかったぞ!」
「皆、お互いにけん制してたのよ」
「それに俺…昔から…その…気になる人がいたから…」
「そうなの?」
「そうだよ。まだ告白できないけどな…」
「そうなんだ…私この前、武器屋の店員のオルに告白されたのよ…お断りしたんだけど」
「…あいつタダではすまさん!」
「キースどうしたの?」
「なんでもないよ…そうか、そうなのか…カメイラは人気があるからな。そんなことより、昨日、いきなり冒険者になりたいって言って俺の所に来たけど、これから冒険者を続けるのか?」
「今日で辞めるわ」
「…最近、冒険者になって数日で辞めていく女子が多いって、ギルドマスターが嘆いていたぞ」
「…それってあのオバケヤシキのダンジョンのせいじゃない?…本当にギルドに登録するバカな女の子もいるのね…冒険者の服装だけでオバケヤシキに入れるのに…」
「なんか言ったか?」
「なんでもない」
そして2人はカフェに入っていった。




