"引っ越し"
俺はその日の午後、滝に連絡をとっていた
顔を直接見るのはつらいので、モニターで話すことにした
「なあ、滝、身体はもう大丈夫なのか?」
『ああ、元気だよ』
まだ、部分的に包帯を巻かれていた
「ごめんな、あの時顔、見に行けなくて」
『司令官は司令官の仕事があるんだろ?中々大変だと思うけど、頑張って』
滝は笑顔だった
「それより、滝、相談があるんだけど」
『なんだ?浮かない顔してるな』
「滝…この街から離れる、という選択はないか?」
『…!!』
滝は一瞬驚いていた。滝の身体を心配して、俺は提案したんだが…
『それは俺も感じていた。いつ引っ越そうかなって』
思わぬ前向きな発言だった
「良かった!俺はてっきり、親父のいた場所から離れたくない!とか言うかなって…」
『ハハハ!! さすがに俺はもうこんなだし、引越しするよ、傷が治ったらな ここにいたら、本当に俺が死ぬ』
滝は昔、強い敵をいっぱい倒してきた
だから、恨まれたりして敵から襲われる
「滝…ほんとに、ごめん」
『ん?なんで謝るんだよ』
「いや、その…自分の力が無さすぎてつらいんだよ」
すると、寝室から声がした
「お前が謝る必要ないんじゃないか?」
現れたのは純さんだった
「純さん!!よく眠れましたか?」
「ああ、さすが前の司令官が使っていたベッドだ、高級だよ、って、あれ」
純さんはふと顔を上に見上げた
『よ、純!』
「あれ!滝!?」
「今滝と引越しするかどうか決めていたんだよ」
純さんは目を丸くする
「お前、正気か!?」
『ああ、引越しするよ、ここにいたら俺が死ぬ。長居は危険だ』
「そうか…そうだな、そのほうがいい」
「純さんはどうする?」
「俺か? うーん、病院もあるしな…」
純さんはまだ病院に務めている
「怪我が酷くなったら、考えるかもな」
「そう… 」
『じゃあ、陽仁、俺情報支部に行く、智嬉のことも気がかりだし!じゃあな!』
そう言って通信は切れた
「あいつ… よく賛成したな」
「あれだけ痛い目に逢えば、考えるでしょう 純さん、空いている個室使ってください、そこは自由に使っていいですから」
純さんの傷は、まだまだ治っていなかった
「ああ、サンキュー!」
滝は変わろうとしている
そして、俺もまた
「しぐれ、翔…どこに行ったんだよ…」
未だに不在である
あの時、かまいたちにやられてからずっとあっていないのだ
「陽仁ーーー!!」
下の玄関から声がした
「な、なんだ!!」
声の主を見に行くと、滝だった
「大変だ!!しぐれと翔は攫われたんだ!!アジトに!!」
「ええ!? 」
その時、ちょうどインターホンが鳴った
「失礼するよ」
ガチャ
「圭介!!」
「お前…確か」
滝は後ろを振り向く
「三倉…大悟、です」
低い声で、そう言った




