能力者の引き際
なんで…ウソ… 俺の割れるはずがないブレスレットが割れた…!!?
本当に限界なのか俺の能力は…!?
<挿絵>
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このブレスレットはただの飾りではない、俺の力を封じるためのものである
普段暴走しやすいので、この力をブレスレットに閉じ込めている
「もう、ダメなのか…俺は…」
俺の力は抜け、膝から床にへたりこんだ
その時、俺を見て陽仁は叫んだ
「滝さん!俺が絶対、探し出すから!!」
「陽仁…?」
「俺が必ず、智嬉さんの敵を…探し出す、だから、滝さんは休んでて!」
「陽仁…お前…」
陽仁は俺の手を握り、笑顔で答えた
「司令官、いいですよね?」
「…君がそういうのを待っていた もう、彼は本当に限界が来ていたのだよ」
すると俺の髪があっという間に短くなっていった
「陽仁、戦いは激しくなるだろう そうだ、これを持っていけ…俺の武器は形見だ」
俺の棍棒を差し出す
「滝さん… 」
「俺は、一般人でしかないんだ、俺はこれで失礼する」
その場から消えようとする俺を見て陽仁は慌てて叫ぶ
「滝さん!!」
「……」
「守るから、必ず、智嬉さん、司令官を!!」
「… ああ」
俺は陽仁を横目にサロン、能力者施設から今度こそ去った
ーー陽仁side
とっくに限界がきていたなんて、俺も分かってたさ
俺と話す時、滝さんはときよりぼーっとしていた
母親の話になるとさすがに目が開いていたけど
俺は滝さんにもらった棍棒を大事に扱い、司令官室へ保管した
「滝… 」
智嬉さんは窓をずっと眺めている
「智嬉さん、心配ですか?」
「まあな、あいつ何度か自殺未遂を起こしてるし今度は完全に能力をなくしたから心配で」
「……」
ガチャ
司令官が戻ってきた
「滝のやつ、帰ったか」
「司令官、お疲れ様です」
「 ふー、これでやっとひとつのことに集中ができる」
「司令官?」
司令官は腰を据えて
「…母親の件だ」
「司令官、奴は今一体どこにいるんですか」
「うむ、調べ…」
司令官がモニターをつけながら話をしようとすると、司令官は目を疑っていた
「こ、これは…」
「どうした?」
智嬉さんも司令官の傍に寄る
「純が狙われている!!」
「なに!?」
「どうして、純さんが」
「分からない、この場所なら近い、智嬉!ひとまず助けてやってくれ!!」
「分かった!」
智嬉さんはダッシュで純さんのもとへ走った
「司令官、俺も行かなきゃ!!」
「お前はここにいろ」
「なんで!!」
「施設を守るのも仕事だ」
滝さんが言っていた言葉だ
智嬉さんは純を見つけた
「純!! 大丈夫か!!」
純は地べたに座りこんでいる
「智嬉…なんで、お前が…」
「説明は後だ、なんで戦わないんだよ!!」
智嬉さんは純の肩を掴む
「狙われていたのを、分かっていたのか」
「純…?」
その場にもう1人、男が現れた
「どうした!!智嬉!!」
「えっ!?純が2人!!?」
その男は、純、そのものだった
同じ黒い特攻服に、群青色の髪、長いハチマキ
「くっ…ふふ、はははは」
「同じ顔で笑うな!!」
「貴様…誰だ!!」
その男はキッと笑い
「"シラー、 シラー・マイヤン" カルテー二一族最後の生き残りだ」
そいつは名乗ると 瞬時に消えていった
智嬉さんはぼそりと呟いた
「"シラー…マイヤン…"」