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ソラにいるキミに……  作者: コーキ
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43話 風邪……

 翌日、俺は寒さと朝日の眩しさで目が覚めた。 ボックス席の椅子にもたれ掛かって、そのまま眠ってしまったらしい。 背中とお尻が痛い…… ベンチタイプの固めの椅子で寝るものじゃないな。


 朝7時か…… そろそろ店長が出勤してくるかもしれない。 俺は飲みかけのコーヒーを片付け、トイレ横の洗面台で顔を洗う。 


  へっくしっ!


 風邪ひいたかな…… 暖房が入っていたとはいえ、何も体に掛けずに寝るのはやはり寒かった。 1月中旬の札幌はマイナス10度近くになることもざらにあるのだから当然か。 窓から外を見ると、夜中から朝にかけて雪が少し積もったようだった。 熱いコーヒーを淹れて体を温め、目覚ましも兼ねて俺は店前の雪掻きに出た。


「おや、今日は随分と早いんだね。 うん? 」


 裏口の通路の雪掻きを終えたところで店長が出勤してきた。 いつもにこやかな店長が、俺の顔を覗き込んで少し怪訝な表情をする。


「おはようございます。 俺の顔に何かついてます? 」


「いや孝太君、風邪ひいた? 」


 突然なんだ? 俺自身は普段と変わらないつもりなんだが……


「え? まぁくしゃみは少し出ますけど…… なんでわかるんです? 」


「子供ができたら気付くようになるよ。 まさかインフルエンザじゃないよね? 」


 飲食店でのインフルエンザはちょっとヤバい。 今が流行時期といえばそうなのだが、多分寝風邪をひいただけだろうからとりあえず大丈夫と言っておく。


「気を付けてよ? 風邪引きのコックさんに働かせる訳にはいかないからね。 はい、スコップ貸して  」


 店長は俺からスノーラッセルを受け取ると、裏口の雪を押しながら店の表側に回っていった。 


 


 昼過ぎになって寒気がしてきた。 少し熱もあるような感じだが、店内は満席で店の外にも列ができ始めている。 司も瑠依ちゃんもフル稼働で頑張っているのに、俺だけリタイアは出来ない。 次々と入るオーダーを司と協力してこなし、客足が落ち着く頃にはもう2時を過ぎていた。


「お前、もしかして調子悪いのか? 」


 ちょっと頭がボーッとする。 いつも通りに動いてたつもりだったんだが、司の目は誤魔化せなかったみたいだ。


「だからあまり遅くなるなよって言ったじゃねぇか 」

  

「すまん、気が付いたらここで寝てた 」


 司は呆れた顔でため息をつく。


「瑠依、悪りぃけど孝太を送ってってやってくんねーか? 」


「え? 孝太さん具合悪いの? 」


 瑠依ちゃんは手早く食器を片付けてパタパタと走り寄ってきた。 


「いや大丈夫だよ。 さっき薬も飲んだし 」


「無理すんな。 お前明後日忙しいだろ? ピークも過ぎたんだから帰って休めよ 」


  カラン カラン


「いらっしゃ…… あー佳さん! 大変なんです! 」


 タイミングがいいのか悪いのか…… 店に顔を出した佳は瑠依ちゃんに飛びかかられてキョトンとしている。 


「聞いて下さい佳さん! 孝太さんったら倒れそうなのにまだ働く気でいるんですよ! 」


 おいおい、俺の具合が3倍くらい悪くなってるぞ…… 


「おー佳、ちょうどいいところに来た。 コイツ連れ帰ってくれ 」


「なに孝太、アンタ具合悪いの? 」


 佳は俺に近づいてきて、素早く首筋に手を当てる。 ひんやりした手が気持ちいい。


「ちょっと熱高いわね。 ほら、手首出して 」


 言われた通りに袖をまくり上げて佳の前に手首を出すと、佳は俺の手首に片手を添え、自分の腕時計を見ながら脈を測っていた。 こういう素振りを見ると、コイツも看護師なんだなと実感する。


「うん…… 呼吸苦しいでしょ。 司も瑠依ちゃんもああ言ってくれてるんだから、無理しないで休んだら? 」


 『おとなしく寝なさい』という佳の無言の圧力に、ささやかな抵抗も虚しく俺は自宅に強制送還されるのだった。




 家に戻る途中、俺は佳に付き添われて、自宅の近くの個人病院でインフルエンザの検査を受けた。 結果は陰性だったが、熱が出始めてから間もないので明日また検査に来るようおじいちゃん先生から言われてしまった。 帰ってきた俺は、とりあえずソファーに腰を下ろす。 体が熱い…… また少し熱が上がったんだろうか、足が地に付いてないような感覚だ。


「お昼まだ食べてないんでしょ? 何か食べれる? 」


 佳は俺の前に屈み込んで、再び首筋に手を添える。 処方された薬を飲むのに何か胃には入れなければならないが、正直食欲はない。


「心配しなくても大丈夫だよ、自分で出来るから。 お前に風邪移す方が心配だ 」


 多分コイツは明日まで俺に付き添うつもりだろう。 佳はあの時から、病気に関しては過剰と思うほど慎重になるようになった。


「それじゃ何か買ってくるから寝てなさい。 あ、余計なことはしようとしな…… 」


「わかったわかった! ちゃんと寝るから 」


 こういう時は逆らわない方が、後々愚痴を言われないで済む事を俺は経験済みだ。 ため息を残して出かける佳を見送りもせず、俺はスウェットに着替えてベッドに潜り込んだ。




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