30話 報告……
「ふあぁ…… 」
「随分眠そうね、どうしたの? 」
一時間目の授業が終わった休憩時間、何気に話しかけてきたのは沙弥花だった。
「もしかして閉店までいたの? それは迷惑じゃない? 」
いきなり公開告白する方が迷惑なような気もするけど……
「ちゃんとご飯食べてからすぐ帰りましたよ。 沙弥花も勇気あるよね、あの場で告白なんて 」
「インパクトあるでしょ? 大事な人がいるなら尚更印象に残らないと。 新城さん何か言ってた? 」
ホントこの子は度胸がある。 本気で栞さんや佳さんと勝負するつもりなんだろうか。
「びっくりしてたよ? ちょっと困ってたし…… ねぇ、止めた方がいいんじゃない? 」
昨日佳さんのあの話を聞いてしまってから、そっとしておいてやりたいという気持ちが強い。
「あの美人お姉さんのこと? でも彼女じゃないんでしょ? 」
「そうだけど…… 」
「印象に残れればそれでいいのよ。 私は好きなんだもん、遠慮して後悔したくないし 」
ホント強い。 自分の気持ちに真っ直ぐになれるのは羨ましいな…… こういうところが沙弥花が人気があるんだろうなとしみじみ思う。 上級生からも告白されたことがあるらしいし。
「遥は後悔しない? いいなって思ってるんでしょ? 」
昨日佳さんと話をしてて、つい好きだと言ってしまったのを思い出した。 佳さんはそっかと笑ってくれたけど、内心はとても苦しいんじゃないだろうか…… 何も答えれない私に沙弥花はため息をついた。
「まぁいいけど。 それより自分の身の上はどうなの? 少しは改善した? 」
新城さんとの繋がりの話から始まって、私の大方の現状を知った沙弥花は私の心配もしてくれる。
「うん…… 今朝も少し荷物を取りに行ったけど、あまり変化はないみたい。 裁判所から警告を受けたからといって今更変わるような親とも思えないけど 」
「ホントそういうの私許せないんだよね。 かといって周りが騒ぐのは逆効果になるだろうけど…… 出来ることあったら何でもするからね、ちゃんと言ってよ? 」
「うん、ありがと沙弥花 」
思ってたよりアツい子なのかもしれない。 日向や香織以外に、身近にこんな親身になってくれる人もいたんだなと胸が熱くなる。
ー 二年三組 藤堂遥さん 至急事務室までお越しください -
休憩時間も残り5分をきったところで校内放送が私を呼ぶ。 事務室? 何だろうと考えながら私は速足で教室を後にした。
「お姉さんからお電話ですよ 」
お姉さん? 私にお姉さんなんていないけど…… 警戒しながら事務のおばさんから受話器を受け取り、保留解除のボタンを押す。
「はい、藤堂ですけど…… 」
- 沖野です。 お姉さんなんてちょっと無理あったかしら? もしかして逆に警戒させちゃった? -
いや、違和感はないけど……
「びっくりしましたけど全然アリですよ。 姿を見れば誰も疑わないと思います 」
- ありがと。 学校に連絡を入れるのに弁護士って言うのもちょっとと思ったから。 それで本題に入るわね -
電話中に予鈴が鳴ってしまったけど、沖野さんが手短に話してくれたおかげで授業にあまり遅れることなく教室に戻る事が出来た。 内容は裁判所に一度出向かなければならない日時が決まったという報告だった。 平日の午前中である為、何かしら理由を付けて学校を休んで欲しいと言う。 本人だけで休みを取るのが難しいなら、沖野さんを姉と偽って申請してもいいと笑いながら言っていた。
心配しなくても陳述だけだから緊張しないで
話の中に出てきた言葉を思い出す。 そうは言われても、裁判所と聞くだけでちょっと背筋が伸びてしまう。 出来るだけ平然を装ったつもりでいたけど、昼休みに入った途端に日向も香織も沙弥花まで飛んできてくれた。
「大丈夫、ちょっと手続きが必要だっていう連絡だった 」
「前に進んでるんだね、良かった…… 」
自分の事のように喜んでくれる日向が可愛い。
「でも日時が明後日なんて急な話よね 」
「年末っていうのもあるみたい。 でも早めに事が進んでるのは嬉しいな…… 沖野さんに感謝しなくちゃ 」
「そういえば遥、アンタの年末の予定聞いてなかったよね 」
香織が思い出したように聞いてくる。
「私はけ…… 丸ノ内さんの都合によるかな。 ほら私、居候の身だから 」
「行く所ないならウチ来る? 正月は父親の実家に帰るけど、実家旅館だし人気ないし部屋多分空いてるし 」
サラッと沙弥花がそんなことを言う。 目を輝かせたのは日向と香織だ。
「えー! 沙弥花ちゃんって若女将だったの!? いーなー 」
「…… 私はその旅館継がないし。 おじいちゃんの旅館だから大した旅館じゃないよ? 温泉はあるけどボロくさいし 」
へぇー…… 新城さんや佳さんに相談してみようかな。 普段迷惑ばかりかけてるから、年末年始くらいゆっくりして欲しい。
「沙弥花、ちょっと考えてもいい? 日頃の感謝を込めて、たっくんの厨房の皆も招待したいなぁって思ったんだけど…… いいかな? 」
沙弥花の目が光った! ような気がした……
「その手があった! 遥、何がなんでも新城さんを連れてくるのよ! 」
沙弥花に腰に手を当てて勢い良く指を指される。 ヤバ…… ゆっくりしてもらうどころか、逆に迷惑掛けちゃうかもしれない……




