忘れ物ジャンクション
先生用のトイレから顔を出す。
誰もいない。
割れた窓ガラスから風が流れ込んでくる。
足元の破片は見当たらない。
片付けられたみたいだ。きっとバーコードだな。
どうしたものか。選択肢は少ない。
1、正美の家探し
前に下校時にみかけて少し追いかけたことがあったが、すぐに見失ったから、家の方向くらいしかわからない。
これは絶対にやる。
つまりはちょっとくらい後回しでもいい。
2、屋上にいるらしい不良からゴツ男の情報を聞き出す
類は友を呼ぶ。正美を脅したゴツ男のことを知ってるかもしれない。
。。だけど、今の俺にコミュニケーションをとることは難しい。尻文字はどうか?一考の余地しか無いな。
3、ケツ出し女にスマホを返す
スマホがないと困るはずだ。
。。その前に画像を消しておこう。うわっ、パスワードだ。4桁の数字。正美の誕生日でも入れてみるか。
0831と。
その時だった。
ロックは解除され、待ち受け画面が映し出されたのだ。
ケツ出し女も正美と同じ誕生日だったのか?
画面には、ウチの制服を着た女子が二人、デカすぎる目と白すぎる肌と細すぎるアゴをして笑っていた。
左側はケツ出し女だ。
こうして見ると可愛い。プリクラは凄いな。
顔の上に『にこいち!』と書いてある。
ひらがな4文字にビックリマーク。
アニメのタイトルだろう。
右側の女は、、、女は。。
正美!!!かわいい!プリクラもかわいい!
これは良いものを見た。
そうだ。自分のスマホでこの画面を撮ろう。
。。。あれ?
定位置の右足ポッケにスマホがない。
左足。胸ポケット。ブレザーの内ポケットにもない。
。。。落下防止スペースにも、トイレの中にもない。。
どこに行った。。いつ。。?
家を出るときはあったはずだ。
もしかしたらケツ出し女が?
考えたくないけど、さっきの不良が持っていった?
外にいた間に、誰か先生が入って持っていったのかもしれない。。
スマホがないのは困る。
とりあえずケツ出し女を探すか。
でもそうなると、屋上、なのかな。
不良からの連絡、初めてじゃなさそうだったから。
ケツ出し女もそこにいるかも。
腹は決まった。
屋上に行く手前の扉まで行ってみて、ケツ出し女に会えなければ落下防止スペースに戻って待とう。
スマホがないことに気づけば探しに戻ってくるはずだ。
意を決して、屋上へ向けて階段を上がる。
1階にある職員室横のトイレを出て2階。
3階。。誰もいないな。一応授業中だからな。
4階。さぁここから上に向かう階段の先、5階に相当する場所に屋上がある。
ケツ出し女にはまだ会えない。
一段ずつ慎重に上がって行く。
階段の折り返し。屋上への扉を見上げる。
と、2つの影。何か喋っている。
咄嗟に折り返しを少し戻って、手すりを握りながら顔をのぞかせ耳を傾ける。
「あのバーコードまじでダルいわ。
金なんて俺巻き上げてねぇよなぁ?」\ジャラジャラ/
不良ってなんで声がでかいんだ。
丸聞こえだ。
もう1人の声量は普通だ。
なんて言ってるのか分からない。
「じゃあ俺帰るわ。また明日な」\ジャラジャラ/
や、やばい。不良が出てくる。
階段を降りなきゃ。
焦って階段を降りようとした時、シューズの裏がキュッと音を立てて転げ落ちた。
ウォシュレットで濡れてたんだ。
くそっ。二度と肛門は洗い流さんっ。
「誰かいんのかごらぁ!!」\ジャラァッ/
勢いよく扉が開いて誰かが覗き込んだ。
仰向けの俺はそのデカ過ぎる声に思わず顔を向けてしまった。。
「だれだぁ?おい、そこにいろよ」
悠然と階段を降りて、寝そべる俺の顔の横に仁王立ちの不良。だけど、近づくにつれて恐怖は静まった。
やっと会えたな。。。
ゴツ男。