2度目の人生終焉
くそっ、もう1度トライだ!
リトライという言葉を生み出し、存続させた先人の心意気は今俺の中にある。
正美ちゃん!正美!!どこなんだ!
・・・いた!
セミロングの毛先が吸い込まれるように、視聴覚室に消えた。
もうすぐ始業を告げるチャイムが鳴るのに。
日本伝統の足捌き、すり足。
誰にも気取られぬよう視聴覚室の戸の前に陣取った。
確かにここに正美ちゃんはいる。
でもすりガラス越しじゃ何もわからん。
耳の穴に壁がめり込むように耳を押し当てる。
『・・・ん〜もう。
授業サボって会うとかドキドキするから〜』
正美ちゃんの言ってた彼氏ってやつか?
俺の正美を呼び出すとはいい度胸だ。
思うや否や、体は目の前の戸に手をかけた。
新幹線が目の前を横切るように、視界は一変する。
「俺だっ!」
『きゃあああ!!』
突然驚かしてごめんよ正美。
君を助けに!
言葉が、途中まで浮かんでー
その先はない。
視界には、正美ちゃんがゴツい男に抱きついてて・・・
そいつの手に・・・バット?
〜2度目の人生終了後・地獄〜
閻魔大王代行「オマエ、また来たのか!
なになに・・・生前履歴書見ると・・・ストーカーしてたのか!でも、いなくなることで好きな人笑顔にしたな!
ところで、オマエ未練」
「ある!!」
閻魔大王「更正の余地アリ!
転生許可!もう絶対くんな!」
ーそれが、最期で最初の言葉だったー
俺は、2度目の人生で好きな人を幸せに出来なかった。
その十字架を背負わされて生きている。
3度目の人生では、
形容詞と、動詞と、固有名詞と、
副詞を、奪われた。