消失
ゴツ男に連れられ屋上に来た。
なるほど、これは不良が溜まりたくなるのも分かる。
菓子の袋や雑誌がところどころに落ちていて、足場は全体に薄汚れている。
「おい、お前あそこで何してた?」
面倒なことになった。
ともかく喋れない人だと分かってもらうしかない。
人差し指で×をつくって口元に持っていく。
「・・・死ねや」
言うが早いか腹にパンチを入れられた。
思わず、膝を着いてくの字になって悶える。
流行るアーティストは略せるというが、腹パンはインフルエンザと同じくらい流行ってはいけないな。
「なめてんのか?あ゛??
ちょーし乗ってっと殺すぞコラ」
そう言ってウンコ座りになった。
顔が近い。こいつも不良特有の遠視を患ってやがる。
こいつが、、正美を、、。
そう思うと、痛みも感じなくなる。
怒りが痛みを超えたんだ。
もう4回死んで、言葉すら失った。
閻魔大王にも会った。人間など恐るるに足らない。
やり返してやる。
そう思って立ち上がり、ゴツ男の顔面に向けて足を振りかぶったその時だった。
ドゴンッ
鈍い音が立つ。
ゴツ男が、傍に突っ伏して転がった。
「はぁ。。はぁ。。。
うっ、ぐすんっ。。はあぁあ。
はぁ。。はぁ。。」
顔が液体まみれの、もやしみたいなやつがそこにいた。
右手には野球でボールを打つために使うべきモノが握られていた。
「ちがう。。ぼくは。。。ぐすっ。
ぼくはただ。。ただ!。。はぁ。。
うっ。。ううっ。。う゛あぁあ゛あああ!!!」
もやしは俺が登ってきた階段を猛烈なスピードで駆け下りていった。
あいつも、正美とおなじ被害者。だったのか。。?
ゴツ男は相当恨まれていたようだ。
同情の余地はない。
とりあえず上着から調べるか。
ブレザーの内ポケットに早速スマホがあった。
。。ん?2台?
念には念を入れて他のポケットも調べてみると、ズボンのポケットからも1つ出てきた。
どれかはゴツ男自身のものだとして、、残り2つは?
そう考えていた時だった。。
階段を駆け上がる音が聞こえるぞ。
まずい。この状況を見られれば俺がやったと思われる。。とにかく隠れないと。
咄嗟に目に入った、給水タンクの裏に移動する。
ちょうどそのタイミングで、だれかが上がってきた。
足跡が、ゆっくりと近づいてくる。
「×#◇$÷○?」
ヒゲモジャだ!
でもなぜか、足音は登ってきた階段の方へゆっくりと遠ざかり、ついには扉を閉める音を最後に聞こえなくなった。
応援を呼びに行ったにしては、足跡がゆったりし過ぎだろ。
給水タンクから顔をのぞかせて、
俺は急に息が吸えなくなった。
横たわっていたはずの場所にゴツ男姿はなく、
ジャラジャラだけが落ちていた。
次筆に続く