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ストーリーコレクター、本業(シナリオリーダー)を再開す


グフッ、書き上がった





「小夜子先生、暇なのでゲームやってもいいですか?」


 あの馬鹿(二宮)が帰ったので入れ違いにやって来た僕の主治医、小夜子(さよこ)先生にゲームを

プレイしていいか許可を取ることにした。オンラインのネトゲをやるのだから

流石に許可なしはマズイだろうなぁ……と思ったからである。


「うん、麻酔切れたと思ったら何でそんな物持ってるの?」


 そりゃ、びっくりするよね 最近話題の高価格ゲーム機があったら……。


「貰いました」


 事実である。


「相も変わらずぶっ飛んでるね結くん いや、ついさっきから結ちゃんか」


「まだ慣れないですね、その呼び方」


「慣れないって、誰か来たの……あ、もしかしてそれ持って来た人?」


 毎度の事ながら察しが良いですね先生。まあ、状況証拠でそれ以外の推理は

難しいと思うし……。


「That's right. 全く以ってその通りです」


「やたら綺麗な発音で言うけど得意なの 英語?」


「日常会話位なら出来ますよ、お陰でテストは赤知らずです」


 英語は父さんに教えられたものだ。営業で各地回っていた頃に家に外国企業の

営業さんがやって来るというので最低限の単語だけ教えられたのである。

幼少期からの英語教育は英語以外の教科を駄目にするって言われてるけど、僕の

場合は他教科のとんでもない先生がいたので、そうはならなかった。


 余談だが父さんが家に招いて何をしたかと言うと、契約の好条件を賭けての

博打に勤しんでいた………うん、お金は賭けてないし、談合でもないし違法?

じゃないと思うけど………昔の事は忘れよう、決してポーカーとか麻雀の

数合わせの為に覚えさせられたとかじゃないし………。


「ハイスペック……」


「それ程でもないですよ」


 僕以上の人間はそこら辺に山ほどいますから。主にうちのクラスメイト……。

何をどうやったら10ヶ国語も話せるようになるんだろうね〜。


 閑話休題


「それでアクブレで遊んでもいいですか?」


 話し込んですっかり忘れるところだった。

本当は病院でネトゲとかやったらマズイと思うけど僕はこの病院の全サーバーの

アクセス権限と専用のネット回線用意させてもらってるから使わないのも勿体ない

なあ、なんて思ったり。


 実のところ防衛省が万が一に備えて僕用に用意してくれたんだけど

クラスメイトに何かあっても最近じゃ僕のアシストなんて要らない位には

成長してくれたからオペレーション用のネット回線も無用の長物と

成り果てた訳だ。僕の入院期間が終われば、引き払われるか病院側に

移譲される事になるだろう。


「別にいいよ、でも院内サーバーの全アクセス権限 持ってるのに態々(わざわざ)聞くの?」


「いや、あなた僕の主治医でしょ!?」


 そんな投げやりでいいの!?


「医院長先生から何もしなくても勝手に怪我治すから意識失わない限り放置で

 いいってお墨付き貰ってるでしょ結ちゃん?」


 確かに人工呼吸も心肺蘇生法も熟知してるし、脱臼、骨折 etc……

自分で治せますけど無免許ですからね!?


「確かにそうですけど……聞いとかないと後々問題があったら困りますから」


 所詮は素人だし、実践したのもほんの四、五回だけだし……。

やっぱりプロに健康面とか診てもらいたいし。


「それもそうだね あっ、だけどやり過ぎはなしね」


「心得ておりま〜す」


「ならよろしい」


 自信満々な顔してるけどあんたさっきまで患者放置しようとしてたよね!?


「あと、ホルモン剤使うから何かあったら直ぐに呼んでね」


 昔よりは医療が発達したとはいえ、短期的にホルモン剤(エストロゲン等)を

投与する事となるので副作用を先生は心配しているんだろう。更に言えばごく

最近、認可された新薬も使うらしいからそこら辺も含めての事だろう。


「分かりました、ところで先生そろそろ外来行かなくていいんですか?」


 確かこの人は救急救命部の方にも時折お助けで入ってたと思うけど……。


「いや、今日は半勤だから結ちゃんの手術が終わったからあとは他のセンセに

 お任せして帰らせてもらうよ、最近睡眠不足で眠いんだよね」


 いや、ちょっと待って……。


「そんな状態で僕の手術を……」


 恐ろしい、この人の腕は信用してるけどそれでも怖いよぉ〜。


「そんなジト目で見ないで、執刀は鎌取(かまとり)先生だったでしょう」


 そういえば そうだった。執刀医は泌尿器科の先生にお願いしたんだった。

小夜子先生はどちらかというと内科メインのお助け救急救命要員だからね。

なかなかに優秀なんだけど若手だから経験不足を補うために助手として入って

たんだった。僕が練習台ってのはなんか不思議な気分だな〜。


「ゆっくり養生してくださいね」


 医者の不養生以上に恐ろしいものは無いからね。ミスされたら嫌な以前に

健康と命に関わるよ。


「それ患者が言うセリフじゃないよ…でも確かにしっかり休ませてもらうよ

 何かあってからじゃ遅いからね、お医者さんは大変さ〜 それじゃあお休み」


「お大事に〜」


 若手のお医者さんは自主練とかで殆ど寝てないらしいから、

情報源(ソース)は過疎化した村の若手のお医者さん(鳥取の辺りとだけ言っておく)

毎日お爺さんとかお婆さんを診るだけだからそんなに忙しくなくていいよ〜

……なんて言ってたし。


「さてと、アクブレのセッティングから始めよっか」


 なんだかんだ あったけど、早速ゲーム始めますか。




























「うぎょ、何じゃこりゃ」


 AB2のセッティングを終えてお味噌を開いてみたらアカン量の情報……。

MMORPG特有のキャラメイクでプロローグ前に作れるのは良かったのだが、

思わず声に出る程の選択肢の広さ、自由度すごいなぁ〜。


「………さてと」


 さっさとキャラメイク終わらすか。ちなみに僕はリアルの姿をまんまゲームで

使うタイプだ。俗に言うリアルモジュールと言うやつかな。物語に全力で没入する

ためにはある程度は必要なんだよな〜、ルーティーンみたいな感じでこう グッ と

くるんだよ。でも、性別変わったしここは女でやっとかないとネカマプレイ………

いやネナベかな?とにかくポリシーだから先に性別選択で 女っと………。


 そんでもって、VR備え付けのスキャン機能を使って早速………。


「…………………」


 誰これ………確かに性別は女にしたけど、うん 何を反映したんだ。

めっちゃプリクラ感が酷い、絵にならんことはないけど、好みじゃないな。

あ、下に説明欄が……『本サービスではトラブル等を避ける為、スキャン時に

補正が入りますので予めご了承ください』………フムフム、VR関連で一時期

訴訟問題が起こったからその対策か、リアルモジュールでいけると思ったのだが

少しばかり残念だ。


「はぁ、髪の長さとか目の色とか変えとけばOKか」


 今は短髪だけどその内髪伸ばす予定だし、手入れの必要のないゲームなら

思いっきり伸ばしていいかもな。あっ、手を加えると補正解除されるんだ。

念のために髪の色も変えとくか、その内 伸びて変に補正かけられても面倒だし。

髪は白で、目は紅紫色(こうしいろ)でいいや、花海鮮の主人公風にアレンジしてみたけど

我ながら完成度いいな。紅紫色というものは平安時代に特別な色であった

「紅」と「紫」を兼ね備えた特別な色である………というのが花海鮮の設定資料に

載ってたんだよな〜。まだ男の部分が残ってるけど元が幼顔だから……。

ベビーフェイスとか言われてるけど気にしない!認めたらそこで試合終了だ!

………何の試合なんだろうなあ(どこか遠くを見つめながら)


 さてと出来上がったキャラ見てみると中々の美少女が……誰だこれ(二度目)

いずれ似たような顔になるんだ思うと感じ入るものがあるけど、どっち道こうなる

んだし、あんまり気にしても仕方ないか。今回は暫く姿が違うから思いっきり

羽目外してみようかな……今のリアルとはちょっと違うけどその内こうなるから

僕のルール上でオッケーかな………。


「よし、次は職業を…」


 あっ、先にモンスターか人間を決めるのか………成る程、成る程。

人間だとクエストが受けやすくて、モンスターだと高レベルの敵とのエンカ率が

上昇するらしい。分かり易くすると、人間がクエストリワード型でモンスターが

ボスドロップ型みたいな感じか。


 よし、即決でモンスタールートだな。

基本的にソロでやる事が多いし、ボスドロップ狙いも悪くない。

クエスト分のストーリーは希匠に任せておいて後で結末を聞けばばいいし、あいつ

のプレイスタイルを考えて人間なのは間違いないだろう。しかも聞くところに

よるとこのゲームのクエストはシナリオとの関連性が薄いらしい。少しネットで

漁ってみたらこのゲームの最大の売りは パーソナルシナリオという個人専用の

物語が展開される点だ。一体どんな処理機構を使ってるのか疑問は尽きないけど

ゲームは面白ければそれでいい、細かい事を気にして楽しみが減るのは嫌いだ。


 だが、モンスタールートを選ぶとキャラメイクが無駄になるのでは?

と思ったが、上位進化すると人型になるのでその時に参照されるらしい。

一応、髪の色とか目の色は、あれば毛皮やそのまま目に反映されるのか……。

なので、ざっと選べるモンスターの一覧をスクロールしてみる……狼、熊、馬、

変わり種だとカバとかか、蜥蜴だったらドラゴンになれそう……ん?


「兎………たまにはファンシーにしてもいいか」


 最近は随分と殺伐としてたからキャラにぐらい癒しを求めてもいいかも。

花海鮮だとその設定上、異形系のmobが多かったからな〜。よし、ウサギで決定!

ウサギだとAGIに補正が掛かるみたいだし、場所を選ぶけどウサギだったら

ジャンプすれば解決でしょ。目標は高く 二段ジャンプ!……シャレた事言っても

締まらないな。


「初期装備は……これがいいな」


 キャラメイクの種族決定後の初期装備選択で選べるアイテムに興味深い代物が

あった。モンスタールートは序盤は牙とか爪とかで装備欄が強制固定されるので

代わりにアクセサリを取得できる。その中の「片眼鏡」というアクセサリだが

なかなかどうして小洒落(こじゃれ)てる。これでシルクハットとタキシードに杖と

時計があれば完璧な不思議の国のアリスだが、お生憎様それらの品々はリストの

中には存在しなかったのである。……無念。


「ん〜、ネタ装備にはギリギリなってないからセーフかな?」


 縛りプレイの一環で僕はネタ装備はいくら高性能でもつけないことにしている。

最もその縛りは攻略中の雰囲気を演出のためだから、何も無い時は普通に装備する

事にしている。この後のプロローグを控えた身の上としてはキャラクリでネタ装備

状態になるのは僕の禁則事項である。


 最後にキャラメイクの最重要事項、プレイヤーネームの決定……。

ロールプレイに適してて、尚且つ語呂のいい感じのネームを、う〜ん

おっ、インスピレーションが!


「リード、っと」


 希匠によくストーリーコレクターと呼ばれるけど別口の仲間からは

シナリオ読み込み機と呼ばれる身の上である。本を読むかの如き気楽さで悠々と

攻略する様からついたアダ名らしいけど、僕は常に全力なだけ。

少し話が逸れたけど “読む”みたいだからreadでそれをカタカナで リード、

これなら響きも及第点ってとこか、あんまり悩むのはゲームとして面白くない。


「ふぅ、Let's reading the story………なんてね」


 さてとキャラメイクも終わったし、長らく休業してた本業(シナリオ・リーダー)を再開しますか。

一人用ならストーリーコレクター、複数人ならシナリオリーダー、本業はシナリオ

狩りのほうだから久々に荒させて頂きましょう。クックックーーー


 かくして片眼鏡のウサギ(シナリオ・リーダー)はツイスティング・ミソロジーを読み込む。

己が全力のロールプレイと卓越した非日常の技能を以って……………。








師走になりましたので週末に切り替えます。

忙しくなるので執筆が……他の作品も同様ですので、ご容赦。


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