其の九・民間人を救出せよ!
山中。何の音でしょう?」
「ヘリだ。誰かが連絡したらしい」
見上げると、もう視界に入っていた。
「自衛隊だ!凄い数だ!」
「なぜ?自衛隊がこんなに早く?」
「何か積んでいるぞ」
ヘリの自衛隊員が目視で博士たちを確認した。
「見ろ!山中に人が居る!」
「何をして居る?作戦が遂行出来ない。作戦一時中止!先に民間人と警察官を救出する!」
すると、ヘリが降りて来た。
「乗りなさい!」
ヘリは地上からやや浮いてホバリング状態で手を差し伸べた。後ろには機関銃を構えた隊員がいる。
「助かった!」
すると菌糸の化け物が其処を襲って来た。
バリバリバリ!隊員が機関銃を打つと粉々に吹き飛んだ。
「早く!乗って!そう保たない!」
バリバリバリ!
全員、無事、ヘリに乗り、空へと舞い上がった。
「なぜ?此処に居たのですか?!」
「我々は地元警察と学者です。キノコの根源を調査して居た」
「危険です。安全な所に避難しましょう」
「あの横のヘリが積んでいるものは何ですか?」
「今は云えません」
「何かを散布するようだ。薬品だな?毒薬だな。山に噴霧する気か?!」
「機密です…」
「山が死ぬ!源泉が毒にまみれる!やめなさい!」
「博士!農薬ですか?!」十一坊が聞いた。
「木の根っこまで殺す薬品だと思う。其れで菌根菌を殲滅出来ると思っているのか?」
「あなたは何かの学者のようだが、これ以上口を出すと職務妨害と見なして拘束しますよ」
「私は植物学者だ。隊長に会わせなさい」
ヘリは山から離れていった。
「見なさい…」飯田橋が下を見やるようにした。その下には菌糸に覆われた湯畑の惨状が見えた。
「百目野くん、あれは?刑事と警官?何かに襲われている」
「防人さんだ!乱射している!あれじゃ無理だ!」白田と鑑識が叫んだ。
「化け物だ!」自衛隊員たちが機関銃を乱射した。
バリバリバリ!
「あれは観光客です!」飯田橋が止めた。
「な、何だと!」
しかし、百目野たちは化け物と化した観光客に襲われている。百目野たちを助けねばならない。
「撃て!あのキノコの化け物を粉砕しろ!」
バリバリバリ!バリバリバリ!
飯田橋は思った。「客は山菜料理を食べたんだ…」
「すぐに火炎放射器を持ったトラック部隊の応援が来る。それまで彼らを守れ!」
バリバリバリ!バリバリバリ!
「キノコは見えないか?」
「何ですって?博士?」十一坊が聞いた。
「キノコだ。キノコは見えるか?」
「あちこちに育ってますね」
「先生!」白田と相馬が指を指した。
「キノコがどうしたんですか?」十一坊は更に聞いた。
「恐ろしいことが起こる」
「恐ろしいこと?」自衛隊員が聞いて居た。
「胞子をばら撒くぞ」
「胞子?」
「花粉のようなものだよ。煙上になって吐き出し、空気中にばら撒く」
「た、大変だ!全員、ガスマスクをするよう、連絡を入れろ!」
「あんたら、ガスマスクなんか用意してるんだ?農薬散布用だろ?」十一坊は気づいた。
「うるさい!君達も付けろ!」
そうこうするうちにトラックが着いた。即座に隊員たちが飛び降りて火炎放射に取り掛かった。
其処に病院の看護師たちが松明を持ってやって来た。
「じ、自衛隊?火炎放射器?」
「あなた方は下がって!」看護師たちは機関銃を持った隊員たちに守られた。
ゴアあああああああああ!
火炎放射器が火を吹いて、禁止を焼き払い、湯畑への道を作った。隊員たちが火炎放射器と機関銃を構えながら
「皆さん!こっちへ!」皆を誘導した。
百目野は後ろを振り返った。キノコに侵された人が丸焦げにされている。見るに耐えない光景だった。
「無理だ…」飯田橋がつぶやいた。
「今度は何です?先生?」隊員が耳を傾けた。
「人体の穴と云う穴、隙間から体内に入るぞ。払って済むようなものじゃない。水です。雨ですよ。雨が降れば善い」
「博士!雨など降らないですよ!」
ぱふっ、ぱふっ
「始まった…」
キノコの傘から煙上の胞子が放たれた。其れは山からも始まった。
「ヘリだ!ヘリのプロペラ風で拡散させるな!」
「シャワーの如く、薬品を撒けば、浮遊する胞子は地面に落ちますよ」と1人の自衛艦が云った。
「馬鹿野郎!民間人が巻き添えを食うぞ!」
「しかし、一帯は火の海。これでは胞子を巻き上げてしまう。何処までも浮遊して拡散する!」
「ぐわああああ」
下にいた自衛隊員たちがのたうち回った。
そして目から口から菌糸が繁殖し出した。
「胞子を吸ったな!」
「幾ら何でも早すぎる」
飯田橋が云った。「体内に入って水分と同化すると、すぐさま発芽するようだ」
「助けなければ」
「もう遅い。一度吸ったら助からない」
「な、なんてやつだ」