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其の四・夜、光る山

挿絵(By みてみん)


夕方、博士たち一行が帰って来た。

「東京の狩野探偵事務所の橋田、彼は百目野と申します」

「?」

「飯田橋博士、私が頼んだ探偵さんです」

「女将、探偵を雇ったんですか?」飯田橋は不機嫌だった。

「警察が信用出来ませんか?」と嫌味を云いつつ、助手の相馬と機材を片して居た。

「お邪魔ですか?」橋田は恐る恐る聞いた。「別に…何をしに此処へ?」つっけんどんだ。

「今日の調査結果を掻い摘んで…教えていただければ」

「私も教えて欲しいよ。女将、腹が減った。橋田さんと云うたか?中で話をしても善いですよ。相馬くん、レポートにして写真と一緒に防人さきもり刑事にメールしてくれ」

「はい、先生」


「何が聞きたいんですかな?」

「何が起こっているのか?です」

「あなた方、警察に寄りました?遺体を見たんでしょう?其れが全てです」

「謎が深まっただけでした」

「……そうでしょうな」


「先生」百目野が口を割った。

「君は学生か?専攻は?」

「考古学です」

「考古学?考古学の学生がなぜ?此処にいる?まあ、善い。何だね?」

「あの蕈は人工栽培の新種ですか?自然の突然変異ですか?」

「そうとも云えるし、そうとも云えない」

「?」橋田と百目野は顔を見合わせた。

「蕈は未だ謎が多いんだ。1つ云っておく。例の遺体が見つかった時のことだ。あの蕈は土田さんを覆い尽くし、養分を既に吸い始めて絶命させて居た。蕈の菌糸は既に土中に成長して居たが、其れは拭っていなかった。だから、あの山で活動中だ。しかも驚異の成長の早さで。その内、山が呑まれると思う。早急に焼き払った方が善い。あれは何だ?と問われたら私はこう答える」


あれは人喰い蕈だ。山で繁殖して居た。


「橋田さん、行きましょう」

「え?」

「山ですよ」

「こ、これから?やめたほうが善いって」

止めるのも聞かず、百目野は山に向かった。橋田は渋々付いて行った。

「百目野くん、もうすぐ日がくれる。危険だよ」歩き始めて20分ぐらいだろうか?日が落ちて辺りも薄暗くなって来た。


「橋田さん、見て!」

「な、何だ?山全体が光っている」

「道端にある蕈ですよ」

「此れはヒラタケだな」

「ヒラタケが光る?」

「百目野くん、ヒラタケだけじゃないぞ。殆どの蕈が光っている。綺麗だ…」

「温泉街の人々は夜の此れを知っているんだろうか?」

「こんだけ、ド派手に光れば、下からだって見えるさ。俺は前回、日帰りだったからな。知らなかったし、聞いても居ない」


挿絵(By みてみん)


「橋田さん、怪訝おかしいと思いませんか?何も音がしない」

「うむ。鳥の声も蟲も…」

2人はそのまま、山中を進んで現場に向かった。途中、山下を見遣ると…

「あそこ、やけに光り輝いている場所があります」

「行ってみよう」

崖を下りて茂みまで降りて行った。


「あ!」2人は声を上げた。

其処はあらゆる山の動物がキノコの餌食になっていた。まるで墓場だ。木乃伊ミイラ化した鹿、既に骨だけになった動物。死にかけてピクピクとしか身動き出来ない狸、鳥、リス。其の数、数十体。蕈が不気味な光を放って居た。あらゆる蕈が混在して居たのだ。

「毒物から食用まで揃っている。此れを食べたのか?」

橋田の足に菌糸が絡みついてきた。


ザザザザざあ…


「な、何だ?!」其れを払い、2人はその場から逃げた。

「菌糸が、生き物見たいに絡みついて来た!」「逃げましょう!」

山道まで上がると山を降りて行った。しかし、地面から、崖側から菌糸が襲って来る。


ザザザザざあ。


「同化させる気だ!」

橋田は咄嗟とっさに近くの枝を折り、服を脱いだ。「橋田さん、何をする気ですか?!」ポケットからライターを取り出し、枝に服を巻いて火を付けた。其れで菌糸を払いのけ、焼いた。「百目野くん、逃げろ!逃げろーーー!」


ザザザザざあ。


菌糸がどんどん密度を増し、逃げ場を抑えようとしている。

池面から一片の菌糸がモコっと出て来た。そいつはナイフを持って居た。「ナイフ?」そう気づいた瞬間、ナイフを放った!

ドス!「ぐう!」橋田の腹をえぐった。

「橋田さん!」橋田が倒れ伏した。「橋田さん!しっかり!」

「う、うう。な、何でナイフなんか?…」百目野はナイフを抜くと、自分の服を破って刺された箇所をぐるぐる巻きにした。そして、橋田を担いで山麓を目指した。


ザザザザざあ。


百目野は橋田を担ぎながら片手で菌糸に火を焼べた。

「くそ!くそ!」

麓まで出ると追って来ない。此処までか。百目野は安堵した。


温泉街から其の姿が見えたらしい。

「血まみれの人が居る!何かあったらしい」人々が駆け上って来た。

「手当てをしろ!診療所の先生を急いで呼べ!」


百目野は其の場にへたり込んだ。

「あれが生き物のように襲って来た。飯田橋博士は何処まで知って居るんだ?知っていて我々が行くのを傍観したのか?」


「百目野くん、大丈夫か?!」飯田橋博士と助手の相馬が、すっ飛んで来た。

「博士!橋田さんが襲われました!」

「襲われた?ば、馬鹿な!」飯田橋博士は知らないらしい。

「博士…」相馬が口を割った。

「思ったより進化が早いですね」

「人が襲われた。警察を呼ぼう。防人さきもり刑事に連絡を入れてくれ」


まさかの事態が実際に起きた。防人は慌てた。「探偵が襲われた?!佐伯!一緒に来い!制服警官も連れて行く。全員、銃を携帯しろ!」

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