僕を……
十月のある日僕は彼女とホームセンターで文化祭で必要になる道具を一緒に買い出しに行くことになった。
***
中学の頃から好きな女の子。
一緒の高校に入りたくて彼女の友人に頼み込んで志望校を教えてもらい、その高校に入れるよう努力した。
同じ高校に入れたのはいいが一年目はクラスが別々で散々だった。
特に親しかった訳でもない。
彼女が僕のことを知っているかどうかも分からず。
時たま彼女の友人に情報を貰っていた。
そして、二年目。
彼女と同じクラス。
飛び跳ねるほど嬉しかった。
まずは友達になろうと彼女と同じ委員会に入った。
委員会の仕事以外の会話もするようになった。
彼女の友人からは「必死だねぇ」と笑われたが、「好きな子のためだから」と答えたら微妙な顔をしながら頷いてくれた。
そして文化祭の買い出し。
彼女の友人が唐突に言い出したことには驚いたがとても嬉しかった。
彼女が真っ赤になって彼女の友人にいじられてるのはとても可愛かった。
その前日はなかなか寝付けなくて。
少し寝坊をしてしまったが、家からホームセンターまでは電車で二十分ほど。
時計の針がさしているのは十三時十五分。ギリギリだ。
急がきゃ。
***
運命は時に残酷だ。
***
意識が戻った時、身体中が痛かった。
事故にあった、と思い出すまで時間がかかった。
約束はどうなったの?
彼女は?
言葉を上手く紡げない。
力が入らない。
全ての言葉がモゴモゴという力のない言葉になってしまう。
約束があるんだ。
彼女はきっと待ってる。
体が動かない。
なんとなく、わかった。
自分はここで死ぬのだろうと。
でも、
彼女に、
1度だけ伝えたい言葉があったんだ。
そう思った時、彼女が真っ青になりながら病室に駆け込んできた。
心配してくれたんだろうなぁ。
ねぇ、
自惚れてもいいのかな。
あの時教室で顔を赤くしながら彼女の友人に何かを言っていたのは、
今、真っ青になって僕を心配しているのは、
僕が好きだから?
なんて。
そんなわけないのに。
ありえないことを考えて、笑みを溢す。
違ってもいいんだ。
でも、
これだけ言わせてもらえる?
「白井 勿さん、」
「僕は君のことが」
「とても好きだよ」
その言葉全てが理解できないもごもごと言う音に変わるのがわかる。
「運命って残酷だね」
あぁ、
瞼が落ちていく。
いやだなぁ。
そう思う反面。
これで彼女に忘れられない
そう思って喜ぶ自分がいる。
サイテーだよね。
でも、本心だから。
だから、さ
「ぼくのことをわすれないで」
あぁ、
どうか、
どうか、この言葉が、
彼女に呪いとなって刻みつけられますように──……。
なんか、怖い……(書いた本人)