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プロローグ

 「はい、話は以上です。みなさん、また新学期にお会いしましょう」

 高校一年最後のホームルームが終わった。周囲ではこれから遊びに行こうとはしゃぐ女子、急ぐようにして部活動へ向かう男子、教室中が春休みのムードに包まれている。

 それを尻目に俺は静かに教室を後にする。別にいじめられているわけではない。むしろ俺をいじめようとするやつはあの教室にいるはずがない。

 相川 雪(あいかわ ゆき)は不良。そんな噂があるからだ。ガラの悪い大学生三人と喧嘩して勝っただとか、教師を殴り飛ばしたとか、そんな話まで出回っている。

 

 

 そんなことはしていないと言いたいところだが前者の噂だけは事実だった。ある女子がナンパに絡まれ無理やり連れていかれそうになっていたため助けにいったのだ。しかし相手が意外にも好戦的で、結果そこそこのギャラリーの前で大学生三人をまとめて倒してしまった。

 

 

 俺は幼馴染の家にある道場に通っていたので多少古武術が使えた。だから勝てたのだ。しかし周囲は喧嘩慣れしているから勝てたのだと勘違いをし、結果このような事態となった。

 誰も近寄らないから知らないんだろうけど、俺が今読んでる本、ラノベなんだぜ......。



 教室を出た後も廊下ですれ違うたびに目線が送られる。やや早歩き状態になりながら玄関にたどり着くと、唐突に後ろから肩を叩かれた。

 「うぉあ!?って星波か。びっくりしたー......」

 「普通は肩叩かれたくらいでそんな驚かないわよ。まだ誤解されたままなの?」

 「まだっていうか、全く進展がないです......」

 


 星波 日向(ほしなみ ひなた)。数少ない俺が学校で話せる人の一人。てか今のところ話せる人は二人しかいない。長いポニーテールに整った顔立ち、大和撫子に相応しいと俺の武道の先生もとい星波のじいさんが絶賛していた。中学まで剣道をやっていたためかその体つきは健康的に引き締まっている。

 何を隠そう大学生にナンパされていたのはこの星波なのだ。近くのコンビニに行ったら嫌そうな顔をして手を掴まれていたため助けに入った。まさかこんなことになるとは思ってなかったけど。



 帰る方向が同じなので俺と星波は並んで帰る。玄関で鉢合わせるときはいつもこうだ。

 「明日から春休みだけど、なにか予定とかあるの?」

 「いやお前、この俺に友達と遊びに行くっていう選択肢ないの知ってるだろ?まあ家でゆっくりゲームするのがオチだと思う」

 「そ、そうなんだ......ふーん......///」

 そう言うと顔の横の触覚みたいな髪を指でクルクルし始める。

 その仕草、癖なのかも知れないけど結構可愛いですよ。

 


 「あ、そういえばおじいちゃんがゆきが稽古をサボってばっかだってぼやいてたわよ?」

 「サボるっていうか正式に門下生になった覚えもないけどな。まあでも無償で俺を鍛えてくれた恩もあるし、今度顔出しに行くよ」

 「そうしてあげて。きっとおじいちゃん喜ぶと思うから」

 そう言って星波がこちらに微笑んでくる。

 だからいちいち可愛いんだって。

 そんな感じで俺たちは他愛のない話をする。ほんとは学校でもこんなふうに誰かと話せれば楽しいんだろうな。



~~~ 

 

  「ふー。やっと学校終わりか・・・・・・」

 別れ道で星波と別れ、家に着く。一年間の疲労がドッとでてきた。

 しかし二年生からはクラスが変わるのだ!ちょっとはマシになるだろ!なんて自分に言い聞かせてみるがむなしくなるだけだった。制服を着替えて横になる。

 なんでこうなったんだろう。

 俺はただ人を助けようと思っただけなのに。

 助けなきゃよかったと思わないのは今も声をかけてくれる星波のおかげか。

 色々考えているうちに眠くなってきた。心地良い感覚に身を任せて俺は意識を手放した





 「......ぁ......もう夜か」

 目を覚ますと既に外は暗く、時計を見ると七時前、夕食にはちょうどいい時間になっていた。

 親はいない。母親は幼いころに他界し、父親は海外に単身赴任だ。

 しかし料理をする時間も技術も持ち合わせていないため、いつも通りコンビニ弁当を買いにいくことにする。



 お金とスマホを持って家を出る。最寄りのコンビニは徒歩で五分。そして例のナンパがあったところだ。流石にトラウマで入れないということはないがやはり思うところはある。

 でも俺にとってあのコンビニは大事なところだ。毎日のようにお世話になっている。そして今晩も俺に飯を提供してくれる!と過去のトラウマを克服?したところで足早にコンビニへと向かう。



 


しかし俺がコンビニにたどり着くことは無かった。

 歩き始めてすぐに自分の異変に気付いた。最初は一瞬視界が明るくなっただけだった。しかし時間が経つにつれてその一瞬の頻度が増えていく。

 そしてカッとひと際明るい光が視界に押し寄せ、思わず手で目を覆ってしまう。



 数瞬の後、目に覆っていた手をどかす。

 そこにあったのは今までの景色ではなく、多くの人が行き交う一本の通りだった。

 だが明らかに行き交う人たちの着ている服が日本のものではない。見渡して見える建物はヨーロッパにありそうなかんじの建物だ。

 そして何より、すれ違う人の中に剣や槍などを持っている人がいるのだ。



 「だから俺、なんかしたっけ?」

 たどり着いたのはコンビニではなく、異世界だった。



 突然すぎるかもしれませんが、突然だったんです。許してください

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