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征服girls  作者: 少名毘古那
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その4

戦闘後、サチちゃんと別れた。

もちろん真実は言えないので、上手く言いくるめて別れた。

彼女に不用意な情報を与えて混乱させたくない。

第一、僕たちですら真実を知らないのにうまく説明できるわけがない。

できたとしても理解してくれるかどうか…。

ここまで来た以上、もう後には退けない。

教えてくれないだろうと思いつつも、ズバっとカモ君に正体を尋ねた。

そしたら、あっさりと教えてくれた。

陰陽師って…。



「神社の子ではあるが、陰陽師の子でもある。

もっとも、そんな有名な家柄…5代家とかじゃないが」



「5代家ー?」


「…安倍晴明の子孫の系統のことだ。だが、私は全く違う家柄の子なのだ」



なるほど。

だから、よくわからないけど…パワー的なのが使えて、出現とか気配とか判ったのね。




「これで私は何者なのかという質問には答えた。他に質問は?」



「陰陽師ってー?」



「暦を図り、星を見、陰と陽の交わる大地から力を受けるもののことだ。

一時期、安倍晴明や陰陽師が流行った事もあったな。映画とかで見たことがあるだろう」



「まあ、確かに。でも、詳しくはわからないです…」



ヒナちゃんが難しい顔をして首を傾げる。

確かにそういうブームがあったのは知っているけど…。

残念ながら僕もそういう知識は少ない。




「ふむ、では簡単に説明しよう。つまり、五代家は天文学と地学を一般人より研究してきたのだ。

無駄に崇められてきたから霊力を有すようになり、さらに信仰を受けてきたいわゆるスターの家だ」



かなりぶっちゃけた話をし始めた。

でもこれなら咀嚼すれば飲み込める内容だ。


信仰心=霊力


天文学と地学を専門に研究した彼らは一般人からすごいすごいと崇められ、信仰につながり、霊力を持つようになった。

神に等しい存在になった彼らは、さらに人間の信仰心を集め、不動の地位となった一一こんなところか。

でも、元は普通の人間なんだろう。

人間はどこか神だと奉り、すがりつこうとする風習がある。

これは日本人特有なのか、それとも人間特有なのか…。




「次の質問は?」




「はーい!さっきの槍の作り方ー!」




「あれは簡単だ。槍を神にしただけのこと」




すんなりと言うカモ君。

え、神?




「…まあ私は神のようなものだが。

その神のようなものが祈り、崇めれば、それは神となるのだ」



「わー!変な宗教みたーい!」



「な、何を言う!見ただろう、意志を持った神としたことで、こちらの命令通り、それに沿う行動をしただろう?

その結果、大きくなったのだ」



わかりやすくすれば、ただの物に祈ることで魂を宿したのか。

それに祈ることでその物は自ら姿を変え、協力してくれた。



「ちなみにその服もそうだ。お守りに名前を言えば起動する仕組みになるようにお願いしてある」



ようはプログラミングである。

というと、何だか有り難みもないような…。



「札もそうだ。神聖な儀式を行い、祈ることで、紙というものに神を閉じ込めることが出来る。

中にはロープの神のようなものが入ってるぞ」



だから捉えることが出来るのか。

まだ使ったことないけど。




「さあ次の質問はなんだ?」




「…じゃあ、どうすればあれをやっつけられるんだ?」



一番の問題を突きつける。

あれの倒し方。



「霧を倒すなんて不可能だ。

実体化したところを狙うと言ったって、刀しか実体化しない。

倒すなんてどうすれば…」




「その刀を倒せば良い」




さも当たり前だろうと言うように。

カモ君は強く言い切った。



「もともとあの辻斬りは、刀への思いが強すぎて成ったものだ。

本体は刀でしかない。刀を倒せば滅びるだろう」




「刀って倒せるのー?」




「折る事だ」




「折るって…」



確かに折れば倒せたと言えるかもしれないが。





「えー、ヒナそんな馬鹿力ないですよ…」





「僕もだ。自慢じゃないが体育は2だ」





「…刀というのは、力で倒すのではない。

刀には折れるツボがある」




「壺?」




「…カレンなら言うと思ってた」




だが、そんなやり取りはカモ君はスルー。



「…弱点というべきか。とにかく、力任せではダメだ」



でもたしかに、鉄が折れるなんて滅多に出来ることではない。

そのツボ‥つまり弱点がわかれば対策できるかもしれないが。



「そのツボってどこ?」




「それは戦いながら、自分で探してくれ」



え、嘘だろ?

自分で何とかしろなんて、スパルタすぎる。

カレンもヒナちゃんも呆然としていた。





「あ、カモくん。

もう17時だ、おうちの人が心配するんじゃないのか?」




もう日は暮れ始めている。

夕焼けが最後の悪あがきのように空を紅く染めている。

あともう少しすればコバルトブルーの夜空が広がるだろう。

小学生があまり遅くなってはいけない。

カモくんのご両親が心配してしまう。



「…そうか、もうそんな時間か。

そうだな、そろそろ帰ろるとしよう」




「おうちどこですか?送りますよ!」




ヒナちゃんが優しく提案してきたが、カモ君は首を横に振る。



「…いや。いい。年の離れたお友達は、さすがに怪しまれる」




まあ、それもそうだ。

でも、大丈夫だろうか…。

大人ぶった言葉使いをしているけど、相手は小学生。

このまま一人で帰してもいいのだろうか。

まあ、陰陽師なら変な奴が来ても大丈夫だとは思うが。




「今日は本当に助かった。礼を言う。

倒せなかったとはいえ、一人の命が救えたのだ。無力とは思わないでくれ」




深々と頭を下げて、真摯に言う。

そうだ、倒せなかったとはいえ救えたのだ。

僕達は無力じゃない。

被害者が出ない内に奴を倒さないと…。





「明日も校門の前で待ってる。

だからぜひ、来てほしい」




必死な目で僕達を見つめるカモ君。

その瞳は本当に真剣で僕はどこか、その瞳に吸い込まれそうな気がした




「…よろしく頼む」




バイバイと子供らしい挨拶をすることなく、灰色の髪を夕日に照らし、去っていった。

僕たちはその背中が雑踏に消えても、その場を離れなかった。

ただ、ずっとずっと、その影を見つめていた…。



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