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3話 ダンジョン探索

ダンジョンに進入した僕が最初に思ったことは

やっぱり入るための掛け声と動作はなんかちょっと恥ずかしいことと。

後もう一つこれは僕ら3人が全員とも同じことを思ったと思う。


「ここは……」


「ここがダンジョンなのか……」


「ふむ……」


僕らが最初に降り立ったのはとある庭付きの館の門と扉の間のスペースで門の外、敷地の外には

暗闇が広がっていて、そこから出ようとすると透明な壁に阻まれて出れなかった。

つまりここの館がダンジョンになるのは間違いないらしい。


その館は3階立てになっており、部屋の数も多そうで、ちょっとした学校くらいの大きさはありそうだ。

屋根は特徴として真っ赤な色をしており、ここの空間の薄暗さとあいまって不気味さを演出している。


しかし僕らが抱いた感想は恐らくその不気味さというよりも、もっと別のものなのである。

そう僕らにはここの館に見覚えがあった。いや僕らに限らずここの街の冒険者なら少なからず見覚え

があるだろう。


「ここってあそこだよね、イストンの街のお金持ちの人たちが住んでるところの……」


「ああ、あそこだよな、でかい家が並んでるところで、さらに一際でかいところだ」


「そうだね、しかし確かあそこはずっと空き家だった気がするのだが」


クラウド君もおでんさんもどうやら僕と同じく見覚えがあったみたいだ。

なにせ庭付きの大きな館だ、それにおでんさんのいうとおり空き家だったのは僕も覚えてる。


前その家の前を通ったとき、こんな家を買えるのはどんなやつなんだろうな、とんでもない廃人だろうな。とクラウド君と話していた記憶がある。


「でもなにかおかしいなあ、ここの屋根ってこんなに赤かったっけ?」


「確かに……言われてみると、タカシ君のいうとおり私たちが見たのはもう少し赤茶けて、ところどころ

ぼろぼろだったと、いやそれだけじゃない、全体的に家の外装などすべてにおいて綺麗だ」


何かがおかしいとおでんさんは顎に手を当て立ち止まって考えている。


「ダンジョンだしそれように調整されてるんじゃないか、そもそも俺たちが見たのってただの

空き家だったわけだし、見るからにぼろぼろじゃ入る気だってなくすだろ」


「そういうものなのかなあ……」


「それに考えたって意味ないと思うぜ、どのみち行くんだろ?」


クラウド君の言葉に僕は無言でうなづき、家の扉の前まで無言で進んでいく。

館の扉も意匠がほどこされていて、よく分からない紋様なども刻まれており。立派な建物なのだと

うかがわせる。


「扉の前まで来たのはいいけど、どうしよう。人とかいるのかな……」


「誰もいないし、モンスターもいないんじゃダンジョンとして成り立たないからな、

何かしらいるんじゃないか?」


「それもそうか……ごめんくださーい!」


ドアをどんどんと叩き、反応を待ってみるけど反応がない。誰もいないのかなあ。

何回か繰り返してみるけどやはり反応がない。


「カギは開いてない……みたいだね」


おでんさんがガチャガチャと扉をいじって確認している。うーん困ったな。

またどんどんと扉を叩く作業に戻ろうかと思ったところ。


「タカシ、そんなか細い声じゃ開くものも開かないぜ、見てな、っとおっさんそのメイス借りるぜ」


クラウド君がおでんさんからどうぞという声を聞く前に、メイスをおでんさんからさっと取り

そしてそのメイスをドアに打ちつけた!ドゴンという音と同時に扉が大きく振動する。

ええー!なにやってんの!


「おらっ、居るのは分かってんだ!早くあけないとひでー目に会うぞ!!!……よーし、これから

10数える!それまでに開けろよ!!!」


と館中に聞こえるような大声で呼びかけ、いや脅し……ている。


「ひとーつ、ふたーつ……」


クラウド君はカウントと同時にメイスを扉におもいきり打ち付けている。

これ扉壊れちゃわないかなー、頑丈そうだけど……


「ななーつ、やーっつ……おっ?」


8をカウントしたあたりで、かちりという音がした。


「開いたか、タカシ見たか?時には強引にすることも大切なんだ」


「ウンソウダネ」


クラウド君の言葉を聞き流して、扉を開ける。


「すみません、お邪魔しまーす、あれ、誰もいない……?」


カギを開けてくれたのだから誰かいると思ったけど、誰もいないな。


「……!タカシあぶねえ!!」


と、館に入ったのもつかの間、僕はつきとばされて床に転がる。


「な、なにするのさ!」


いきなり突き飛ばされた僕はクラウド君に文句を言おうと転がった体制のままクラウド君に顔を向ける。


「文句を言うのはあれをみてからにしな」


しかしクラウド君が指差した先、僕がいたところには、矢が突き刺さっていた。

クラウド君に助けられなかったらまともにやられていただろう。


「うえっ!ごめんクラウド君ありがと!」


「お礼を言うのはアイツを片付けてからだな」


僕らがいた場所は館の入り口付近、そこは大きな広間になっていて、目の前には大きな階段

そこから2階へとつながっているみたいだ。


そして僕を狙ったヤツがその階段の一番上から見下ろしていた。

そいつは人間で兵士風の格好をしており、この館で警備をしている兵士といったところだろうか。

壮年の男の人で、所作の一つ一つに兵士としてのベテランの動きを感じる。


そいつは僕をしとめられなかったことを悟り、すぐに次の矢を番えているところだ。


「俺が一気に前に出る!お前らはサポートを頼む」


「わかった!」


「気をつけてね」


クラウド君がそういうやいなや、両手剣、トゥハンドソードを抜き取り、素早いステップで階段を駆け上りどりゃあ!という掛け声とともに剣を斜めに振り下ろす。


しかしその兵士は軽々と後ろに飛んでその攻撃をかわす。そしてもっていた弓を投げ捨て

腰にさしていた短剣を抜き放ち構える。どうやら接近戦をしようとしているようだ。


「なかなかすばしっこいやつだな、おい、お前!なんでいきなり攻撃してきた!普通にお宅訪問

しようとしただけだろうが!」


「いや、それはどうかと……」


どう考えてもヤクザのお宅訪問のそれだったような。


そういってるうちにも兵士は短剣を小刻みに振り回し、するどい突きや、小さく振りかぶった

斬撃をおりまぜテクニカルに攻めてきている。

クラウド君は大剣を軸に身をかわしつつ防戦一方の状況だ。強いなああの人。


僕はいつでも援護に入れるようこの状況で最適な魔法を頭の中で計算して

いつでもはいれるように観察している。


「クラウド君、何か様子がおかしいぞ……それはもう人ではないかもしれない」


たまにクラウド君が攻撃を受けたときに回復魔法をつかって援護していたおでんさんが

なにやら気付いたらしい。


確かに、その兵士を見ると、目はうつろで、口からはよだれをたれながして、なにやら分からない

言葉をぶつぶつつぶやいている。ひょっとするとこの人は……。


「……まさかとは思ったが、コイツは狂人か」


狂人というのは、精神に作用するアイテムや、魔法を受け続けるとなる状態で

精神が破壊された状態でそれが最悪レベルに進行するとなる状態で、僕は見るのは初めてである。


プレイヤーにも恐怖や錯乱といった状態異常はあり、僕もかかったことがあるけど

狂人という状態はプレイヤーでは見たことがなく、NPCはたまになることがあるらしい。


この状態まで精神が破壊されたらもう……。


「おでんさん、治せないの?」


一抹の望みをかけておでんさんに僕は恐る恐る問いかけてみる。

プリーストと呼ばれる職業は回復のスペシャリストである。おでんさんはその職業についていて

受けた傷を癒したり、精神をリラックスする魔法も使えたりする。他にも軽度の精神錯乱状態までも治療することができる。


「残念だけど、ここまで進行していると私にはどうしようも出来ない、それになお悪いことに

その人は操られているようだ。狂人というのはほぼ間違いなく廃人のようになっていて

死人のような状態だからね、どのみち操られている人を倒してもその人はもう……」


「しゃあねえな、ハァ……やるか、タカシ!」


「……うん」


僕はショートソードを抜くと兵士に向かってダッシュする。

すると兵士はこちらに目を配らせ、流石に2体1では分が悪いと感じたのか、とっさに退こうとする。

その隙を狙う!


「スタンマジック!」


僕はスタンマジックと呼ばれる1秒ほどしか効果はないが、瞬間的に相手を行動不能にする

魔法を使う。


兵士は退こうと後ろを向いた瞬間にスタンマジックを使われ、ビクンと一瞬行動の自由を奪われた。

その隙を突いてクラウド君が大剣を横にないで、勝負は決した。

すると倒れた彼の体は光る霧状のものになり消えてしまった。


このゲームはプレイヤーが死んでしまった場合、最後にさわったトラベラーストーンの前に

戻される。ゲームだしね、キャラがロストつまり消滅したりするわけではない。

ペナルティはもちろんあるけど。本当に死んでしまったりすることはない。


しかしNPCの場合はそうではなく、死んでしまったらほとんどの場合そこで終わりである。

ほとんどというのは、ここの世界には魔法というものがあり、ほぼ死亡しているように見える状態

でも高位の聖職者がいればなんとか復活したりすることができる。


しかしこれは光の霧状に霧散する前に行わなければならず、霧となって消滅してしまうともう完全に

復活の望みは絶たれてしまう。


この消滅までの時間は人によって異なり、生きるという望みが高いものほど長くそこに体が

残るらしい。長い人だと数時間、何日という単位で残る。


しかしこの人ほとんど一瞬で消えてなくなってしまった。

つまりほぼ完全に死を受け入れていたということになる。やりきれないなあ。



「クソッ……こういうのが相手になるのか、めんどくさいダンジョンだな」


「気が重くなるね……」


「そうだね……治せるなら治したいけど、あまり期待できなさそうだ」


僕のダンジョンに入る前のわくわくとドキドキはどこかに消えて、今はどこかもやもやとした

ものが胸中を覆っていた……。僕らは重い足取りで2階の別の部屋へと向かっていった。


このゲームはオンラインゲームにありがちな職業システムを採用している。

ジョブだとかいわれるあれだ。魔法使いや、ナイト、シーフなど様々な職業があり、そこには

各職業ごとに特色がそんざいしており、各々の好みや目的などによって選んでいる。


ゲーム開始時に選択することができ、ある手順を踏めば他の職業になることもできる。


クラウド君の職業はナイト。味方や自分を守ることに強い職業である。

普段は片手の剣と大型の盾をもち、防御の要として活躍する職業である。


ちなみに攻撃性能も悪くはなく、ほとんど3人で行動する僕たちのパーティーの火力不足を補うために

彼は両手剣を持ちもっぱら攻撃よりのナイトとして活躍している。


いや、本人が両手剣好きでそれしか持ちたがらないからだっけ……。

とにかく両手剣を持って攻撃寄りに立ち回っている。本人もそれを気に入っているのでいいんじゃないかな。それになんだかんだ頼りになるクラウド君にこのナイトという職業はぴったりだと思う。


僕、タカシの職業は魔法剣士。初級程度の攻撃魔法や、初級程度の回復魔法

それにさきほどつかった行動阻害魔法などの妨害系魔法を扱え、なおかつ剣と盾もそこそこつかえる。


万能職業!といえば聞こえはいいけど、実際は何をしても中途半端で

物理攻撃にも決め手を持たないし、魔法は専門職から見て2歩3歩も劣る。


唯一得意な妨害系魔法は地味だけどそこそこ優秀。

大人数だといらない子だけど少人数パーティーだと様々なことに対応できるためそこそこ有用。

そんなジョブである。


まあ僕はただ魔法と剣使えるなんてかっこいいじゃん!みたいに思ったからえらんだだけなんだけどね。


おでんさんの職業はプリースト。いわゆる聖職者であり、回復などをメインに行うエキスパート職で

魔法剣士の数段上の治癒魔法、またそのほかにも解毒や精神錯乱状態の治癒など

様々なことをすることができ、専門職にはおとるが、メイスや杖などを用いた打撃も使うことができる。


女の人に使用する人が多い職業で、ときたまクラウド君がなんで俺らの回復役はおっさんなんだろうなー

とかぼやいたりしている。でも僕はこの職業はおでんさんにぴったりだと思う。

何故かって?なんでだろうね。



















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