表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不笑  作者: 桧瀬
7/11

6


 「…思い出すって、なにを」

「全てです」

美香はぼくに一歩近付く。

美香からは汗のような酸っぱい香りもせず、言ってしまえば無臭だった。

ぼくからも少し汗の臭いはするというのに。

美香は、生きているのだろうか。

「秀秋さんは、何も、覚えていないのでしょう?」

ぼくを映す美香の瞳が、ぐるりと湾曲を描く。

気持ち悪い。

「私が、思い出させて、あげます」

美香の手がぼくの頬に触れる。

体温が伝わらない、冷たくもない。

唇と唇が近付く。

「え、ちょ、なに……!!!」

触れ、柔らかい感触が伝わってくる。

体温のない唇が、とてもとても気持ち悪く。

二人の涎が口内で混ざり合い、ぼくの熱が美香の方へと奪われていき。

とても、気持ち悪いほど、ぼくは溺れそうで。


ごぽり。


美香は口端から流れていく涎を手で拭ってから、ぼくをまた見つめる。

「おぼれてしまうでしょう」

きもちわるい。

「おぼれてしまうでしょう」

きもちわるい。

「××××し×××し×う」

きもちわるい。

「×××××××××××」

きもちわるい、きもちわるい、きもちわるい、きもちわるい、きもちわるい。

「―――――う、ぐ、ぐる、ぃう、ぎ」

白く折れそうな指先は、体温を失くした美香の首へと。

きもちわるい。

押し潰すかのように。

きもちわるい。

美香の首は折れそうで。

きもちわるい。

体温がない。

きもちわるい。

「ぁ、あ、あ、あ」

―――――どうして、笑っているの。

ねぇ。

どうして、笑っているの、どうしてどうしてどうしてどうしてどうして。


ごぽ、

ごぽり、ごぽぽ、ご、ぽ。


お、おぼ、おべ、おぼ、おぼれ、べ、べべべ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ