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不笑  作者: 桧瀬
4/11

3


横山美香。

屈託のない笑顔を見せながらぼくの周りをうろうろする、見知らぬ少女。

彼女はぼくと同じ中学校の制服を着ている。いや、同じ制服はいいんだ。季節は夏というのに彼女はいまだに冬用の制服を着ている。

…暑くは、ないのだろうか。見るからに暑そうなのだが。

 

「…行ってきます、母さん」

ぼくはリュックを背負い、学校指定の靴を履いて、玄関から出て行った。

家から出て行っても、まだ美香はぼくの周りをうろうろしている。

「何か、目新しいものでもあるの?」「いいえ、秀秋さん。私、学校に行くのは…その、数週間ぶりで、友達が私の事を忘れていないかって、少し、不安で」

「…はぁ」ぼくは呆れ気味に溜め息を吐いた。

…然し、本当に、彼女―――美香はぼくにとってどんな存在なのだろうか。

頭をどう揺らしても美香という存在はぼくの頭の中にはない。会ったことがあるのか、と思う事も少しだけはある。だが、美香はぼくの存在を、ぼくの名前を知っている。

ぼくは知っていないのに、美香だけは知っている。

…何だろう、この違和感は。

何かが、突っ掛っている、喉の奥底に。

吐き出せそうで、吐き出せない、ぐるり、と、全てが湾曲して、曲る。

とても、気持ちが悪い。


――――――、思い出せない、どうして。

 

「…秀秋さん?」

気が付くと、美香はぼくの顔色を窺うようにして、此方を見ている。

「………あ、う、うん。ごめん」ぼくはその顔を見て反射的に謝っていた。

「そうです、秀秋さん」

美香は何かを思いついたらしく、パチンと手を鳴らした。

「…?」

「学校、今日はお休みしましょう」

「…は?」

「お休みをして、一緒に遊びましょう?」

美香はぼくの手を握り、ニコニコと笑みを振り撒く。

美香の手は、手が、冷たい。

まるで、氷を握っているようだ。

「…そしたら、一緒に遊びましょう?」

ぼくは美香に導かれるまま、足を進めて行った。



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