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1000文字小説

クリスマスイブの夜に [千文字小説]

作者: 尖角

 いつかの誕生日プレゼントでお前から貰った懐中時計。


 今は電池も入ってなくて、時間も思い出も止まったままで。


 懐かしく感じるよ。 お前と過ごした毎日が。


 逢えないけれど、 俺は決して忘れてなどいない。


 楽しかったもんな、 俺等が過ごした毎日は。











―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――











 「あのさ、俺と付き合ってくれない?」


 その話のきっかけは、俺のダチが開いた合コン。


 俺は君の見た目に惹かれ、君のする仕草に恋をした。


 それは大体お互いに言えたことらしく、お前は二つ返事で俺の言葉に応えてくれた。


 大好きだった。愛していた。  それは確かな、俺の心で。


 別れを惜しむ暇などないけれど、俺にはそれしかできなくて。






 お前は俺と付き合い初めてから少しして、重い病気になった。


 だけど、きっと二人なら乗り越えられるって信じていたさ。


 けれど、現実はそんなに甘くはなかったんだね。




 ――小さな壁は壊すことができる。


 ――大きい壁は登る努力をすればいい。


 ――じゃあ、大きすぎる壁はどうすればいい?




 所詮、人間なんてちっぽけな存在なんだよ。


 俺はお前に何もしてやれなかった。


 愛する人を護れずに、俺は一体何をすれば?


 お前の太陽のように穏やかな笑顔が好きだった。


 まるで、俺の(なか)の雪を溶かしているようだったから。


 だけど、お前は何も言わずに死んでいった。


 「痛い」の一言ぐらいあれば、悲しみを分かち合うこともできたかもしれないのに。


 お前は強がりだったし、負けず嫌いだったもんな。


 だけど、最後の最期くらいは弱音吐いてもいいと思うよ?



 俺は、お前のそこが嫌いなんだ。


 「大好き」は言ってくれても、「辛い」は言ってくれない。


 助けてくれはするけれど、俺なんて必要としていないみたいで。



 大好きなんだし、両想いのはずなのに、 お前は俺を頼らない。


 そんなに、俺は頼りないのか?


 頼むから、強がらないでくれ、 逝かないでくれ。


 俺はお前を忘れられないから―――――。











―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――











 お前は死んでしまって、俺の生きている意味はなくなった。


 二人で紡いだ糸も、今は“プツリ”と切れてしまって。


 お前はそっちで楽しくやっていますか?


 お前の好きだった花が一面に広がっていますか?


 求めても戻らないのなら、俺はお前の幸せを願うよ。


























 思い出のクリスマスに、人が混み合う街の中、


 俺はこの懐中時計を今も大切に身に着けている―――。












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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の2行と、「時間も思い出も止まったままで」というところに、惹かれました! クリスマスにはぴったりでした。 ありがとうございます。
2011/12/24 22:29 退会済み
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