再開
短編を分割してかけば、もう少し早いペースで投稿できるかと思い悪戦苦闘中。
ニコ生でも毎日23:00から配信しています。
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よかったら。
街の空気は汚れていると言われているけど、そうでもないと思っている。
オレは車が行き交う大通りを眺めながらそう思った。確かに、車の量は多いけれど、それと同じくらい緑がたくさんある。道路には並木があったり、店の前では花が笑っていたり。どこのビルの屋上にも庭園がある。この街の政策らしい。
6年前、僕が中学生の頃のゴミだらけの風景とは大きくことなっていた。
オレはそっと目を閉じてイヤホンを耳に付けて、音楽をかけた。
歌はあまり好きじゃない。歌詞があると、その歌詞の世界観に没頭してしまい、音楽を楽しめなくなってしまう。
だから、オレが好きなのはBGM。演奏だけの音楽だった。
今日の音楽はアコースティックギターの演奏。
オレはゆっくりと目を開けて目の前に広がる景色を見つめる。雲一つない晴天と緑が広がる街の景色にとても似合っている。
気分の乗ったオレはそのまま街を歩きだした。そとのとき、
「あの、すいません」
ふいに声をかけられた。振り向くと、ショートカットの女性が立っていた。ボーイッシュな容姿に相反するような落ちついた声。
でも、音楽を聞いてるオレがわかるくらい、大きな声で呼んだらしい。彼女はオレの顔をみて、満足そうな笑みを浮かべた。
「やっぱり、空くんだ!」
「え、えっと……」
「私、椎名日向っていうの、覚えてる?」
「え、あ! 日向ちゃん!?」
その名前をきいて、心臓がトクンと高鳴った。
椎名日向、その名前を聞くのは6年前になる。ゴミだらけだった街の中で、唯一綺麗に輝いていた女の子。
「思いだしてくれた?」
「思いだすも何も、雰囲気が変わったから気付かなかったんだよ! 久しぶり!」
オレはイヤホンを取り、ポケットにしまう。
「空くんは今、何をしてるの?」
「ん、BGM探しにちょっと出歩いてたんだ。日向ちゃんは?」
「私は、この街に来たのが久しぶりだからちょっとこの辺をみていこうかなぁ思って。なんだけど、6年前とはすごい変わっちゃってわからないの」
オレの心臓が音を立てる。改めて日向ちゃんをみてみると急に恥ずかしい気持ちになる。6年前とは言え、オレは日向ちゃんのことが好きだったから。
「じゃぁさ、久しぶりだし、CDショップ行かない? ついでにさ、行きたいところあったら案内するからさ」
「本当? そうしてもらえるとすごい助かるかも!」
日向ちゃんは嬉しそうにはしゃぎながらオレに抱きついた。雰囲気に似合わない大人っぽい容姿が近い。オレの心臓はさらに鼓動を速めて行く。
「ちょ、ちょっと、まて、周りに人がいるから」
ドキドキしていることを、知られたくなかったオレは日向ちゃんを軽く押しのけた。彼女は少し不満をそうにしてたけど、数秒もすれば元の笑顔に戻る。
「じゃぁ、私をエスコートしてね!」
「OK、まかせろ!」
そんな雰囲気でオレは日向と6年越しのデートをすることになったのである。