ブラックホーネット
ほぼテガミ◯チです。
ノックの音がした。時刻は午後九時過ぎ。八時を過ぎれば外出する人間は極端に減少する。それほど外は危険だった。黄泉の国の住人が徘徊する時間帯だったからだ。
一応城塞化した都市内であってもクリーチャーが現れることがあるのだ。
家の住人である老婆は恐る恐るドアを開けてみた。
そこには黒い制服を着た少年が立っていた。制服の襟には金色の蜂のバッチを付けている。
「町の外を徘徊していた影の蜥蜴を倒すのに手間取って遅れました。が、現時刻より任務を遂行します」
「伝言配達人…」
国家公務の伝言配達職員の別名である。伝言を紙状に固形化して運ぶ配達人であった。
国民の文盲率が三割以上のこの国では、文章の手紙よりも言葉を紙片化して再生する伝言紙を配達する比率が高かった。ただし変換料金が高価なため三十語以内にまとめるのが庶民のやり方であった。ただの一言に思いのすべてを込める伝言を昼夜を問わず配達するのが「僻地担当伝言配達人」である。他にも伝言配達人は存在する。それは地域で分かれていた。
王都近郊の伝言配達人との違いは防御武装の充実度である。王都担当のホワイト・ホーネットは拳銃程度。地方都市担当はレッド・ホーネットで乗り物の使用を可とする。そして僻地担当のブラック・ホーネットは配達するためにいかなる乗り物の使用を許可し、都市破壊を可能にする武器よりも弱いものであるならば使用は許可される。それほどまでに僻地は危険な場所だった。でありながら、階級は最下位だった。ブラック・ホーネットは僻地出身者が多く、人は出生地でも差別されることが多かったのだ。
黒い制服の少年はカードを差し出した。これが伝言が封印された紙片である。
「あなたの息子さんカイル・ダビッドから配達依頼をされた言葉を伝えに来ました。このカードに収められています」
「息子の、カイルから?」
「はい。と言っても、僕が直接受け取ったわけではないので100パーセント確実ではありませんが」
少年は全くと言っていいほど無表情で、冷徹な光を放つ銀色の瞳が老婆を直視していた。
「そのカードの円陣の中央に触れば再生されます。よろしければ今確認していただいても結構ですが」
「そうだね。本当に息子かどうか確かめさせてもらうよ」
老婆は魔法語で円陣の中央に触れた。
「かあちゃん。悪い。今は戻れない。いつか戻る」
取り留めのない言葉が収められていた。家族以外には分からないのものなのだろう。家族なら、本当に分かるものなのか?銀の瞳の少年は時々不思議に思う。彼には家族がいなかった。だから、分からないのだ。
「カイル。本当にカイルだよ」
老婆は口を押さえて泣きはじめた。
「よかった。本当によかった…」
「確認はとれたようですね、では僕は失礼します」
少年は扉を閉じた。
彼にとってはただの任務である。届け人がどう感じようと知った事ではない。
だが、気にはなるのだ。どうしてあれだけの言葉で人は感動できるのか。
それが分かる日が来るのだろうか。
「何時かは、その感情を思い出す日が来る。この仕事を続けていれば。人の感情に触れ続けていれば、何時かは、必ず」
後見人でもある局長は優しく笑いながら言うのだ。
そうかも知れない。そうでないかもしれない。今は任務をこなすだけだ。
銀色の瞳の少年は老婆の家から立ち去った。
連続小説の方が行き詰っています。書いてはいるのですが、進みません。その内には発表したいです。
今回はテガ◯バチを見ていて自分風に変換した物です。パロディではないのでこちらで発表させてもらいます。あの話で気になったのは子供の教育レベルで、文盲率高くねと思い、言葉を記録して運ぶほうがいいんじゃね、と考えた話です。再生された言葉はモノラルでカセットテープのノイズ入り再生音を思い浮かべていただけるといいと思うます。




