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【連載版】「第八話」『別れさせ屋』の僕の計算式は、迷子の『復縁屋』に粉砕される。〜宮崎のポンコツ美少女は、僕の恋心だけを正確にハッキングしてくる〜

消毒液の匂いが充満する、深夜の病室。

脇腹と背中を何重にも包帯で固定された律が、薄く目を開けた。そこには、一晩中彼の傍らで、罪悪感に押しつぶされそうな顔をしていたあすかがいた。

「……律くん! 目が覚めたのね。ごめん、私のせいで……」

「……喋るな、あすか」

律の声は掠れていたが、その瞳にはかつてないほどの冷徹な、そして鋭い光が宿っていた。

彼は震える手で、枕元にあった自作の小型デバイスをあすかに差し出す。

「……九条は、まだ終わっていない。警察に捕まっても、あの男の権力ならすぐに保釈されるだろう。……そうなれば、次は君が、本当の死を見る」

「でも、律くんはこんな体で……!」

「だからだ。……工作を、続けろ。……僕の指が動かないなら、君が僕の『手』になれ。僕が病室からバックアップする。……奴を、法的にではなく……僕たちのやり方で、……社会の底まで葬り去るんだ」

律は、あすかの震える手を、血の気の引いた冷たい手で強く握りしめた。

「……あすか。君が信じる『更生』も『愛』も、……奴のような存在の前では無力だ。……僕が『壊し方』を教える。……君は、その手で……僕たちの勝負を、完遂させろ……」

あすかは、律の瞳に宿る覚悟を悟った。

涙を拭い、彼女の手から「甘さ」が消える。

「……わかった。……あなたの論理、私に全部預けて。……九条を、二度と日の当たる場所へ戻さない」

一ヶ月の勝負は、いつしか**「二人の共同復讐劇」**へと変貌した。

病院の一室。月明かりに照らされた二人は、もはやただの高校生ではなく、運命を共にする「共犯者」となった。

数日後。保釈金によって悠々と警察署を出てきた九条。

「結局、金と権力があれば何でも揉み消せる」と勝ち誇った笑みを浮かべる彼の元に、一通の招待状が届く。それは、彼がオーナーを務める高級クラブでの「極秘パーティ」の案内だった。

だが、会場の扉を開けた瞬間、九条の顔から血の気が引いた。

豪華なフロアに座っていたのは、彼が今まで「ボロ雑巾」のように捨ててきた12人の女性たち。そしてその中心には、ドレスに身を包んだあすかが、冷たい炎を宿した瞳で立っていた。

「……な、なんだこれは。何の真似だ!」

その時、会場の全モニターが起動し、入院中の律の顔が映し出される。

律:「……九条。お前の保釈、そしてこの会場への誘導。全て僕の計算通りだ。……今、この会場の音声と映像は、お前の父親の全取引先、そして政財界のネットワークにリアルタイムで配信されている」

九条:「貴様……! こんなことしてタダで済むと——」

あすか:「済まないのは、あなたの方だよ。……ねえ、みんな。彼に教えてあげて。彼が『愛』だと言って弄んだものが、どれだけ重い代償になるのかを」

あすかの合図で、女性たちが一人ずつ、九条が隠してきた「闇の証拠(脱税、暴力、薬物、そして彼女たちへの非人道的な仕打ち)」をカメラに向かって語り始める。

律が病室からハッキングで収集した「確定的な証拠」が、彼女たちの「肉声」という一番強い武器となって、九条の社会的な息の根を止めていく。

律:「九条。お前はもう、ただのクズですらなくなる。……ただの、無価値な『データ』として、社会から消去デリートされるんだ」

九条が膝をつき、絶叫する。

復縁屋の「情」と、別れさせ屋の「理」。その二つが重なった時、逃げ場はどこにも残されていなかった。

律の退院当日。病院の玄関先で、彼はあすかの差し出す「支えの腕」を全力で拒否していた。

律:「……触るな。自力での歩行は、リハビリテーションの論理的工程に含まれている。……それに、勘違いするなよ。九条の件は、あくまで『イレギュラーな妨害への共同排除』に過ぎない」

脇腹を庇いながら、それでも背筋を伸ばそうとする律。あすかはその頑固な姿に呆れつつ、クスクスと笑った。

あすか:「えー? あんなに『僕の手になれ』なんて熱い指示出しといて? 私がいなきゃ、九条にトドメ刺せなかったくせにーw」

律:「(顔面、宮崎の完熟マンゴー並みに赤くなる)……それは、……物理的制約による資源の最適化を図っただけで……! とにかく、一ヶ月の勝負はまだ終わっていない。残りは、あと二週間だ」

あすか:「いいよ。望むところ。……でも律くん、忘れてない? 私の『復縁工作』は、あの九条に捨てられそうだった女の子たちを『自分自身との自信の復縁』っていう形で成功させたんだからね?」

律:「……屁理屈だ。そんなものは広義の解釈に過ぎない。……次のターゲットは、もっと冷徹に、……もっと徹底的に、……」

律がそう言いかけた時。

病院の向こうから、聞き慣れた(恐ろしい)エンジン音が響いてきた。

あすか:「あ、お母さんの車だ! 律くん、お母さんから連絡あってね。『退院祝いに、今日は家であすかちゃんと一緒に”超立体キャラ弁”パーティーよ!』って張り切ってたよw」

律:「(絶望)……ッ!? なぜ母さんと繋がっている……! プロトコルを強化したはずなのに、なぜバックドア(連絡先)が筒抜けなんだ……!!」

あすか:「さあね? ほら、勝負の続きは……お母さんの『特製・紅白ハート型エビフライ』を食べてからにしよ?w」

律は悟った。

九条という悪意を倒すことはできても、「あすか」と「お母さん」という最強の同盟軍を倒すロジックは、この世のどこにも存在しないのだと。

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