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【連載版】「第十一話」『別れさせ屋』の僕の計算式は、迷子の『復縁屋』に粉砕される。〜宮崎のポンコツ美少女は、僕の恋心だけを正確にハッキングしてくる〜

宮崎空港、最終便が飛び立った後の静まり返ったロビー。

律は妹の追跡を完全に断つため、空港のネットワークに潜入し、監視カメラの映像を「30秒前のループ」に書き換えた。

律:「……よし。これでここ一帯は、僕たちだけの『空白地帯』だ。母さんも妹も、物理的にここに踏み込まない限り、僕たちを見つけられない」

律は展望デッキへと続く階段に腰を下ろした。

走り続けたせいで、包帯の巻かれた脇腹が鈍く痛む。だが、それ以上に胸の奥が騒がしかった。

あすか:「……ねぇ、律くん。もういいよ」

あすかが、律の隣に静かに座る。

月明かりに照らされた滑走路が、銀色の帯のように伸びていた。

あすか:「家族から逃げるためにここまでプロの技術を使うなんて、世界中で律くんくらいだよ。……でも、そこまでして隠したかった『本音』って、何?」

律は答えなかった。ただ、カタカタと震える指を隠すように、強く膝を握りしめた。

律:「……僕は、怖かったんだ。……論理ロジックで説明できないものに、自分の人生を預けるのが。……復縁なんて、壊れたものを繋ぎ直すなんて、……そんな不確かなことを信じて、また裏切られるのが……」

初めて、工作員の仮面が完全に剥がれ落ちた。

律:「……あすか。君との一ヶ月の勝負……。僕は、最初から負けていたのかもしれない。……君が九条に立ち向かう姿を見て、……僕の冷徹な計算式は、……とっくに壊れていたんだ」

律はゆっくりと顔を上げ、あすかの瞳を真っ直ぐに見つめた。

律:「……一ヶ月の勝負、……僕の負けだ。……だから、……」

律は、あと一歩でこぼれ落ちそうだった「決定的な言葉」を、強引に飲み込んだ。

そして、ふいっと顔を背け、眼鏡の位置をこれ以上ないほど精密に直す。

律:「……いや、今の言葉は撤回する。論理的に再構築した結果、今回の事態は『外部からの物理的介入(家族)』によるノーゲームと判断するのが妥当だ」

あすか:「えぇーっ!? 今、完全に負けを認めようとしてたでしょ!?」

律は立ち上がり、滑走路の向こうにある夜明けの兆しを見つめた。

律:「認めていない。……あすか、今回の勝負は『引き分け』だ。……だが、これで終わりじゃない。……この一ヶ月で判明した君の『更生ロジック』の不備、そして僕の『切断工作』の甘さ。これらを修正した上で……次の依頼で、決着をつける」

律は、まだ少し震えている手をポケットに突っ込み、あすかの方を振り返らずに言った。

律:「……次の勝負で、僕が勝ったら。……その時は、……今日言えなかったことの続きを、……僕の全演算リソースを使って、君に証明してやる」

あすかは一瞬、驚いたように目を見開いた。

だが、すぐにいつもの、律を翻弄するような悪戯っぽい笑顔に戻る。

あすか:「……ふーん。それって、実質的な『これからもずっと一緒にいてね』ってプロポーズじゃない? 律くん」

律:「(激しく動揺)……ち、違う! 継続的な競合状態の維持と言え!!」

あすか:「あはは! いいよ、受けて立とうじゃない。……でも次は負けないからね? 『復縁屋』の意地、たっぷり見せてあげるんだから!」

朝の空港に、二人の笑い声が響く。

結局、どちらが勝ったのかは誰にもわからない。

ただ、宮崎の街に朝日が昇る頃、そこには以前よりも少しだけ距離の縮まった、二人の「共犯者」の影が伸びていた。

数日後。宮崎高校のいつもの屋上。

騒動は一段落し、律は相変わらず一人でパンダのぬいぐるみ(居眠りパンダ)を膝に乗せてタブレットを叩いている。

そこへ、当然のようにあすかが「3Dハート弁当」を持って現れる。

あすか:「律くん! お母さんから預かってきたよ。今日は『リハビリ応援・立体宮崎牛ハンバーグ』だってw」

律:「(溜息をつきながら)……母さんの学習能力はどうなっているんだ。……だが、効率を考えれば、ここで摂取しておくのが妥当か」

律は慣れた手つきで、あすかの隣にスペースを作る。

二人は並んで座り、空港での「引き分け」については一言も触れない。だが、律のタブレットには、あすかの復縁工作をサポートするための新しいアルゴリズムが立ち上がっていた。

律:「……あすか。次のターゲットの資料を共有した。今度は手ごわいぞ。……僕の『別れさせ工作』を潜り抜けようとする不届き者だ」

あすか:「いいよ。私がその人の本心、全部『復縁』させて救ってみせるから。……ねえ、律くん。勝負の続き、楽しみにしてるね」

あすかが律の肩に、ほんの少しだけ体重を預ける。

律は一瞬硬直したが、今度は逃げなかった。

律:「……ふん。論理的な最適解を出すのは、常に僕だ。……行くぞ、パートナー」

二人は立ち上がり、オレンジ色に染まる宮崎の街へと歩き出す。

誰も知らない、けれど最強の「別れさせ屋」と「復縁屋」。

彼らの一ヶ月戦争は終わったが、二人の「共犯関係」は、まだ始まったばかりだ。〜完〜

5分後に番外編出すのでよかったらそっちもみてください。

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