導き手は「味方」なのか?
男は悠斗に本題を切り出した。
「単刀直入に言おう、『導き手』。我々の『組織』に来い。お前ほどの『無の力』があれば、この腐った世界秩序など、容易く…」
(アリアの拠点では「まずい! あの組織(裏世界でも特に危険視される過激派)が導き手に接触を…!」と緊迫している)
悠斗の視点。目の前の男が、中二病全開の単語(ファミリー、世界秩序)を並べ立てている。
(あー、これ、ねずみ講かマルチ商法の勧誘だ。間違いない。『一緒に世界を変えよう』みたいなヤツ。一番面倒くさい…)
彼の関心は「早くシフトを終えて帰りたい」ことだけ。
リーダー:「どうだ? 我々と共に…」
悠斗は話を遮り、無気力に言った。
「あー、すみません。そういうの、間に合ってるんで。…なんか、面倒なんで、いいです」
その言葉は、リーダーと、アリアの拠点の両方に響き渡った。
(なっ…!『面倒』だと…? この俺の、世界の未来を左右する誘いを…『面倒』の一言で…!)
リーダーは、悠斗の底知れない器の大きさと、絶対的な拒絶を悟り、屈辱に顔を歪ませながら店を去った。
アリアの拠点では、一瞬の静寂の後、歓喜の声が上がった。
「や、やりましたね、シスター! 導き手は、あの『災厄』の誘いを蹴った!」
アリアは、感動に打ち震えていた。
(あの組織の誘いを『面倒』と切り捨てる、その絶対的な基準…。そして何より…)
「あの方は、選ばれたのです。我々『人類』の側に立つことを…!」
アリアの中で、「導き手は人類の味方である」という決定的な誤解が確立した。
◇
バイトが終わり、悠斗が「(今日は変な客ばっかで疲れた…)」と欠伸をしながら夜道を歩いている。
アパートの手前。暗がりから、アリアが(待ち伏せして)姿を現した。
(げ。またあのシスター…何してんだこんなとこで…)
悠斗が警戒して足を止めると、アリアは彼の前に進み出て、突然、その場(アスファルトの上)に深く跪いた。
「え、ちょっ…何やってんすか!?」
「拝見いたしました、我が導き手よ!」
アリアは顔を上げ、かつてないほどの感動と決意を込めて言った。
「あなたが、人類の側に立たれるという『決断』を…!」
(決断…? 何の…?)
「これより、このアリアが、あなた様の『盾』となります。いかなる災厄からも、あなた様の『平和(=日常)』を護り抜いてみせます!」
(盾…? この人、大丈夫か…?)
悠斗は、真顔でドン引きしていた。




