監視者の増員と、平和を邪魔する「影」
ウロボロスを二度も退けた。アリアは、悠斗が「災厄」を引き寄せ始めていると分析した。
「導き手ご自身は絶対的な存在。だが、我々は『聖域』が汚されるのを座視してはならない」
彼女は、これまでの「監視」体制から、本格的な「護衛」体制への移行を決定した。
「『聖域の監視者』を増員。コンビニ周辺2ブロックを24時間体制で護衛せよ」
◇
ここ数日、悠斗は「(なんか最近、常連増えたな…)」と感じていた。
商品を買うでもなく、雑誌コーナーで立ち読みしたり、コーヒー片手にイートインコーナーに居座ったりする、同じ顔ぶれの客。(=私服の『監視者』たち)
(万引きGメンか? それにしては人数多くない? レジから見張るの面倒くさいんだけど…)
悠斗は彼らを「サボってる警備員」か「面倒な常連」程度にしか思っていなかった。
◇
コンビニ周辺に停められた監視車両。
『監視者』の一人が、異能索敵用の特殊なレーダー(タブレット端末)を操作していた。
レーダーは、人間のオーラや異能の微弱な反応を可視化する。
「Bポイント、クリア。Cポイント、クリア。聖域内部、クリア…」
彼は一般客の反応(緑色に表示)を確認していく。
「…! シスター! やはり異常事態です!」
アリア(通信越し):「何が?」
「聖域内部、および全監視対象(一般客)の反応は正常。しかし…『導き手』ご本人の反応が、レーダーから完全に『消失』しています!」
レーダー上では、悠斗がいるはずのレジカウンターの中だけが、ぽっかりと『無』になっていた。
端末には
「$$ ERROR: 測定不能 $$」 (やる気ゼロ)
「$$ WARNING: 観測圏外 $$」(無気力すぎ)
というエラー表示が点滅している。
アリアはその報告を受け、戦慄した。
悠斗が持つ、絶望的なまでの「存在感の薄さ」(オーラの欠如、無気力、無関心)が、組織の高性能レーダーの測定限界を遥かに下回っているとは、彼女は夢にも思わない。
彼女は、『無の力』を思い出す。
(『消失』…? そうか、これこそが導き手の『常時発動型』の防御…)
アリアは結論づけた。
(ご自身の存在そのものを『無』と定義し、あらゆる観測・干渉を拒絶する『絶対的な結界』…!)
(我々が護衛するなど、おこがましいにも程があったのだ…!)
アリアは、悠斗への崇拝度をさらに深めていった。




