コンビニの棚は、世界秩序の縮図である
悠斗は、特定の棚の前で面倒くさそうに立っていた。
マイナーな缶コーヒーや栄養ドリンクの棚。在庫が切れている。
バックヤードには在庫があるが、その棚は店の隅で補充が面倒くさい。
(あー、あの棚、補充するの面倒だな…。どうせあまり売れないし、次のシフトの奴がやればいいか)
彼は補充作業をサボり、結果としてその棚だけが綺麗に空になった。
◇
その頃、ウロボロスのアジトでは。
テロ失敗(というよりドン引きによる敗走)を受け、別働隊が新たな計画を立てていた。
「派手に動きすぎた。今度は『静か』に『確実』に、あの聖域を汚染する」
彼らの計画は、悠斗のコンビニで流通している、特定の「マイナーな缶コーヒー」(=悠斗が補充をサボった商品)に、遅効性の異能毒を混入させる、というものだった。
◇
コンビニ店内。
監視中のアリアが、例の「空の棚」に気づく。
(…! あの棚だけが、まるで最初から『存在しなかった』かのように空になっている。これは…?)
彼女が部下に緊急調査を命じると、ウロボロスが「その缶コーヒー」を使った毒物混入計画を進めている情報と一致する。
(まさか。導き手は、ウロボロスの計画を予見し、我々に警告するため、自らあの商品の『流通を止めた』というのか…!)
アリアは、これを悠斗からの警告と受け取った。
彼女は部隊に命じ、ウロボロスの計画を妨害すると同時に、安全な正規ルートから、その缶コーヒーを(裏で)大量に再発発注(=流通を再開)するよう手配した。
◇
一方、バックヤード。
悠斗は、在庫管理端末を見ながら首を傾げていた。
データ上、バックヤードに在庫が山積み(補充してないから)なのに、全く売れていない(棚に出してないから)ことになっている。
(なんでこの缶コーヒー、こんなに売れないんだろう。不良在庫じゃん…)
彼は、その在庫管理票の隅に、殴り書きでメモを残す。
『あの棚、なんでこんなに売れないんだろう』
彼はその管理票を(どうでもいい書類として)ゴミ箱に捨てた。
その夜。
ウロボロスのスパイが、最終調査としてコンビニのゴミを漁っていた。
彼は、悠斗が捨てた在庫管理票を発見する。
『あの棚、なんでこんなに売れないんだろう』
(『売れない』…? まさか、我々の計画が『実行する価値すらない(売れない)』と…?)
スパイは、このメモを「導き手が、自分たちの矮小な計画を把握し、あざ笑っている」という、絶対強者からの『嘲笑』だと誤解した。
(我々は…監視されている…!?)
スパイは恐怖に顔を引きつらせた。




