裏世界の検索窓、シスター・アリアの深読み
『導き手の『無の力』、恐るべし』
ウロボロス撃退後、アリアの拠点はその話題で持ちきりだった。
「シスター、あの方はなぜ、あれほどの力を持ちながらコンビニ店員などを…?」
部下の問いに、アリアはレジを打つ悠斗の(監視)映像を見つめながら答えた。
「それは、あの方があの場所を『聖域』と定めたから。そして……」
彼女は、悠斗の「欠伸」や「ため息」の映像をアップにする。
「この『無気力』。これは単なる無気力ではない。『諦観』です」
「ていかん……?」
「そう。起こりうる全ての未来、全ての災厄を見透した上で、ただ『その時』を待っておられる。我々がウロボロス程度で騒いでいたことすら、あの方にとっては取るに足らないこと……」
アリアの中で、悠斗の「無気力」は「全知ゆえの諦観」へと昇華された。
◇
一方、その悠斗。
彼は今、バイトで最も面倒な作業の一つ「廃棄チェック」に取り掛かろうとしていた。
賞味期限切れの弁当やおにぎりが詰められたカゴを前に、深いため息をつく。
(あー、めんどくさい。なんでこんなに廃棄が出るんだ…。スキャンして、一個ずつゴミ袋に突っ込むの、マジで手が汚れるし…)
彼は、死んだ魚のような目で、無心でバーコードスキャンを開始する。
その様子が、アリアの監視カメラに映し出されていた。
彼女の目には、悠斗が廃棄弁当を一つ一つ手に取り、厳しく吟味しているように映る。
(悠斗は「この弁当、タレがこぼれそうだな…」とか「このおにぎり、米がカピカピだな…」としか思っていない)
悠斗が廃棄品をスキャンし、専用のゴミ袋に「捨てる」姿。
アリアの脳裏に、『終焉』の神託が蘇る。
(まさか……!)
アリアは戦慄した。
(『終焉』とは、世界的な食糧難の到来…?)
悠斗が面倒くさそうに廃棄品を眺める姿が、アリアには「終末の食糧難に備え、人々が口にすべき『神の食べ物』と、汚染されて『捨てるべき食べ物』を、あの方が自ら選別されている」姿に見えていた。
「報告」
拠点に戻ったアリアが、部下たちに厳かに告げる。
「導き手は、来るべき『終焉』…すなわち世界規模の食糧難に備え、『神の食べ物』の選別を開始された」
「なっ…! では、あのコンビニは『終末のノアの方舟』だと…!?」
「その通りです。我々は、導き手があの聖域で選別される『神の食べ物』の行方を、全力で監視せねばなりません」
アリアの悠斗への崇拝度は、さらに深まっていった。




