謎の「黒服」たちの集会と、無関心な世界の導き手
シスター・アリアの拠点。
そこは、教会の地下深くに隠されたハイテクな司令室だった。
回収されたメモ、その『もはや終焉』の四文字が、巨大なディスプレイに映し出されている。
数人の黒服の部下たちが、その文字の筆跡やインクの滲みまで真剣に分析していた。
「見ろ、この『も』のハネ! 明らかに既存の秩序を『ひっくり返す』という強い意志の表れだ!」
「いや、注目すべきは『終』の線の角度だ! 誤差0.01ミリ! これは完全なる『終焉』への寸分の迷いもないという…!」
「筆圧に迷いがない。あの方は『終焉』を確信されている」
「憶測は不要だ」
アリアの冷たい声が響く。
「すべては『導き手』の御心のままに。……私が直接、次の『神託』を拝受する」
アリアは立ち上がり、『導き手』こと真木悠斗が待つ(と彼女が信じている)コンビニへと向かった。
◇
一方、そのコンビニ。
外は雨が降っており、客足はまばらだ。
悠斗はレジカウンターで頬杖をつき、虚空を見つめていた。
(客が来ない。楽だが暇だ……)
カラン、とドアベルが鳴る。
悠斗は無気力に「いらっしゃいませー」とだけ言う。
入ってきたのは、シスター服の上にコートを羽織ったアリアだった。
(うわ、また来たよ、あのシスター……)
悠斗は内心うんざりしていた。
最近、彼女は毎日同じ時間に同じ商品(ミネラルウォーター1本)だけを買っていく、少し不気味な常連客だった。
アリアは、悠斗の一挙手一投足を観察していた。
(あれほど無防備……いや、あれこそが『無』の境地。一切の隙がない)
彼女は内心で極度の緊張を強いられていた。
アリアが商品を持ってレジを離れ、店内の隅で監視を続けているタイミング。
悠斗は、窓の外を流れる雨を眺めながら、レジ前で深いため息をついた。
(あーあ……)
彼は、本心からボソリと呟いた。
「今日は雨で客が来ない。(いっそ店ごと)もう滅びればいい……」
この独り言を、アリア(と、彼女が仕込んだ高性能集音マイク)が聞き逃さなかった。
◇
アリアの司令室。
彼女が即座に持ち帰った「音声」が、解析され、テキスト化される。
『今日は雨で客が来ない。もう滅びればいい』
部下たちがその真意を巡って混乱する。
「『滅びればいい』…? やはり『終焉』は近いのか!?」
「『雨で客が来ない』とは、何の暗喩だ…?」
アリアは目を閉じ、瞑想する。そして、厳かに目を開いた。
「……解読できた」
「『天の涙(=雨)』。これは『滅びの前兆』だ」
黒服の部下たちが一斉に顔を上げる。
司令室のディスプレイに、悠斗の言葉が「第二の神託」として、以下のように再定義・記録された。
【第二神託】:『天の涙は、滅びの前兆』
その頃、コンビニのバックヤードで。
(客来ないし、バックヤードでスマホでも見るか…)
悠斗は、また一つ大きな欠伸をしていた。




