世界の終焉は、今日も来なかった
ウロボロス幹部が(臭さに)気絶した後。アリアの部隊が、残党の拘束・撤収作業を進めている。
アリアは、戦闘の痕跡(というより悪臭)が残る駐車場と、何一つ変わらないコンビニの灯り(聖域)を交互に見ていた。
(ウロボロスは退けた。だが、導き手のお力(=換気扇)がなければ我々は敗北していた…)
彼女は決意を新たにする。
(私は『盾』。導き手ご自身は絶対でも、あの方の『日常(平和)』を脅かす『災厄』は次々と現れる。私が、この身の全てを賭して、あの方の『平和』を護り抜く…!)
アリアの中で、悠斗への崇拝と「バディ(盾)」としての関係性が決定的なものとなった。
◇
一方、悠斗。
ようやく、地獄のように「騒がしかった」(と彼が思っている)シフトが終わった。
(今日は最悪だった…。暴走族の騒音、変な悪臭、挙げ句の果てに裏口でコスプレイヤー(=幹部)が倒れてるし…。もう二度とごめんだ)
彼にとっての「平和な日常」とは、「面倒ごとがなく、定時で帰れること」である。
彼はその『平和』を取り戻し、アパートへ向かった。
◇
悠斗がアパートにたどり着く。
そこには(律儀に護衛している)アリアが、戦闘の気配を消して待ち構えていた。
(うわ、まだいた…)
「俺、もうバイト終わったんで。護衛も終わりでいいですよ」
悠斗が家に入ろうとするのを、アリアが制止した。
「我が主よ」
アリアは、かつてない真剣な目で言った。
「本日の『災厄』の襲撃を受け、現行の護衛体制では不十分であると結論しました」
(は? 何言ってんだ…)
「よって、これより私は、24時間、あなた様の『盾』として機能するため…」
「あなた様の自宅に住み込みます」
悠斗は「住み込み」という単語にドン引きした。「(警察呼ぶぞ、本気で…!)」
だが、悠斗の脳裏に、ある考えがよぎる。
彼は自分の部屋(ドアの向こう)を想像した。(※ゴミが溜まっている、洗い物がシンクに山積み、洗濯物も放置)
(待てよ…? 住み込み…? こいつ、あの膨大な品出しを完璧にこなしてたな…。ということは…)
悠斗はアリアに向き直った。
「…それ、本気で言ってるんですか?」
「(覚悟を決め)はい。いかなる雑務(=護衛)もこなします」
悠斗はため息をついた。
(ヤバい奴だけど…利用できるか…)
「…面倒だけど、まあ、いいか。家事、全部やってくれるなら」
(…! 導き手は、私の『盾』としての忠誠を、内側(自宅)に入れることでお認めになった…!)
アリアは『家事』=聖域の維持管理と誤解した。
「はい、謹んで!」
悠斗がアリアを「家政婦(便利屋)」として、アリアが悠斗を「絶対的な主」として、奇妙な『契約』が成立した。




