死んだので、仕方なく生き延びることにした
白い天井。点滴の音が静かに響く病室。
「……また夢か……」
頭を押さえる。昨日まで、僕は病院のベッドに横たわり、薬と点滴に囲まれていた。病気は重く、医者の顔色も暗かった。まさか、このまま命を落としてしまうなんて思ってもいなかった。
次に目を開けたとき、そこは現実とは違う淡い光に包まれた空間だった。宙に浮かぶ光の輪がゆっくりと回り、静かに輝いている。
「……ここは……?」
その瞬間、一本の光の槍がふわりと降りてきて、僕の心臓にそっと触れた。
その瞬間、全身に暖かさと震えるような力が走る。
血が通る感覚と同時に、言葉では説明できない感覚――意思で形作れる力――が、体に宿ったのを感じた。
どこからともなく、穏やかで深みのある声が聞こえた。
「あなたは選ばれし者……過去の命は終わり、新たな力を手にした。これから先、使い方はあなた次第。世界を変えるも守るも、すべてはあなたの意思に委ねられている」
光の輪と槍が消え、意識がゆっくり遠のく。
次に目を開けたとき、僕は街の石畳の上に倒れていた。
「……うっ……」
頭を押さえながら上を見ると、小柄な美少女が慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫!?しっかりして!」
彼女は偶然、倒れている僕を見つけただけだった。手を差し伸べ、僕を支えてくれる。
「……君は……?」
僕はまだ状況も理解できず、頭を抱えながら彼女を見返す。
手の中には、かすかに光の残り香が残っている――あの光の槍が心臓に触れて授けた力が、確かに自分に宿っていることだけは、直感でわかった。
美少女は不思議そうに首をかしげるだけで、力や事情を知る由もない。
僕はまだ、病院で死んだ自分と、街で目覚めた自分の違いを整理できずにいた。
「……ここって、いったい……何が起こったんだ……」
遠くに見える森や城。空気の匂い、街の雑踏の音――すべてが現実であることを知らせる。
けれど頭の中は混乱し、体の奥に宿った力が、自分の意思に応える感覚だけが確かだった。
どうにかして、この世界で生き延びなければ――そう思った僕は、今日も生き延びることにした。